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雛霧の書  作者: 雛霧
27/49

カタミ

私はなにも残せない

なにもかも

君の所に残したくない


君になにかを残したら

君は私にしばられてしまう


だから私は

すべてを消してきえていく


私を示すすべてのものを

自分できれいに片づけてから


君の前からいなくなる


私が君にあげられたもの

その数はそんなに多くない

だからきっと大丈夫

自分ですべてを消せるはず


だからあとは

あとは私が理解するだけ


なぜ残してはいけないのかを

私がちゃんと納得するだけ



本当は

君にすべてを残したい

君をずっとしばっていたい


私が君に残したいのは

たったひとつでそれで全部


『私のことを――――』



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