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トウロウ
小さな小さなカマキリが
僕の肩に登ってきた
最初はあまりに小さくて
他の虫と間違えた
手のひらに乗っけてやると
すばやくちょこちょこ動き回って
あっという間に落ちそうになる
僕はあわてて手のひらを並べ
新たな陸地を作ってやった
いたずらに
ちょんとそいつをつっつくと
小さな小さな かまを上げ
僕のことを威嚇した
その姿は
大人の大きなかまきりと
まったくおんなじ姿だった
ほんの1,2センチの大きさで
ちゃんと存在を知っている
ちゃんと自分を持っている
その点僕はどうだろう
僕は存在を知っているのか
僕は自分を持っているのか
考えてみて そして気づく
僕は何にも知らないし
そして何にも持っていない
玄関のドアを開けてやり
カマキリをそっと地面に下ろす
その姿をじっと見て
僕は自分に目を向ける
小さな姿に教えられ
自分をようやく探し始める