表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雛霧の書  作者: 雛霧
10/49

ナマエナシ

記念すべき(?)十本目。

これを見て何を感じるか、は、読んでる方にお任せします。


鳥の雛が 三羽(かえ)った

そのうちの一羽は 早くに死んだ

残りの二羽は無事に育ち やがて羽ばたきの練習を始めた


ある時

羽ばたきの練習をしていたら 急に強い風が吹いてきた

一羽の雛が風に煽られ 温かな巣の外へと落下した

落下の時に羽を傷つけ 雛は二度と飛べなくなった


大きな木に囲まれた 地面の深い草の中

雛はそこに倒れていた

飛ぶことはもうできなかったから 後はもう何もできなかった

森に住む他の動物たちに 食べられるのを待つだけだった


『……こんなところで、どうしたの?』


何もかもを諦めて

何も見ていなかった雛の上から そんな声が降ってきた

雛には聞いたことのない声だったから とうとう食べられるんだとしか思わなかった

自分の体が 優しく温かいものでくるまれるまでは


『巣から落ちちゃったんだね……。ああ、羽が傷ついてる。……君を巣に返してあげることはできるけど、この羽だと、死んじゃうかな……』


何が起きているのか分からなかった

どうして自分が食べられないのか その声が何を言っているのか

さっぱり分からなかったけど 何となく心地が良かったから

襲い来る眠気に身を任せ 温もりの中で眠ってしまった


目が覚めたら 柔らかいものに包まれていた

体はすっかり暖かかったし すぐ側には何だか食べられそうなものも置いてあった

ふるふると体を揺すぶって ばさりと翼を広げてみる

翼はやっぱり使えないけど 傷には布が巻いてあった


『あ、目が覚めたんだね』


さっきと同じ声が聞こえて 雛は一瞬身がまえた

目の前に見えた姿は 雛が見たこともない生き物だった


『全く動かなかったから、死んじゃったのかと思ったけど……良かった』


その声がさっきの温かさに似ていたから

雛はふと

この生き物は 自分を食べるつもりがないのかもしれないと思った

自分を生かしたのかもしれないと

そう思った


それはどうやら 本当だったらしい


雛は今も 暖かい場所で暮らしている

翼で飛べはしないから 二本の足でちょこちょこ歩いて

その生き物と 暮らしている



今回タイトルに熟語はないです。

……意味は二通りありますけど。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ