69、最終戦 後編
「はぁ、はぁ……」
ガビは空中に立ったまま、胸を抑えた。
血管が身体中から浮かび上がり、血管が脈動した。
くぁあああ!!!!
ガビは雄叫びをあげた。
「クソッ、父さん、もしかして……」
返答をするように、ガビの声色が変わった。
「お前は、私の洗脳によって身体の痛みを抑えていた。不都合な記憶も消していた。肉体的な痛みも、精神的な痛みも、消してやってたというのに、恩知らずが!」
「うぁあああああああああ!!」
ガビの声色が戻り、悲痛な叫びを上げた。
「……父さん、分かったよ。」
「覚醒!!上限解放!!!!!!」
空中で歯を食いしばり、震える。
空気が、震えた。
地面さえも、震え始めた。
「これはッ!!??」
コウは構えた。
「……強い」
ユウは硬直した。
しかし、それは彼の能力によるものではなく、緊張からのものだった。
「周囲の融点が通常に戻った。ユウへの重力攻撃が無くなった。つまり……」
タケシは額の汗を拭いながら見上げる。
ガビは、痛みに汗を流しながらも少しづつ上昇していた。
「全ての攻撃を解除した。今までのは全体的に能力を使いながらの攻撃だった。しかし、今は遮る人間は居ない。俺は、1点集中でお前らに全ての力を使う」
ガビはケラケラと笑った。
今までの残虐で、それでいて一切の罪悪感も無い口調だった。
雲が渦巻く。
空が曇りパラパラと雨が降り始めた。
ニコリがガビを見上げる。
「ねえ、家族でしょ?……」
「無駄だ」
タケシはそういった。
「なんで?」
「彼は完全に父に洗脳されている。俺らを殺すべきだって。とにかく、お前ら2人は逃げろ!!」
タケシが後方に指を指す。
釈然としないニコリの手を引っ張りコウはガビから逃げると決めた。
「コウ、なんで……」
「行くぞ!!」
地面が揺れ、キーンという耳鳴りがした。
そして、コウ、ニコリ、ユウ、タケシは耳を塞ぎ、地面に倒れた。
「逃がさない。お前ら全員を殺す。理由?納得?正義?悪?くだらない。俺は、父さんの司令を聞く。なぜなら、ルールは力を持つ者の特権だからだ!!!!!!!!!!」
その瞬間、雷が鳴った。
強い風が吹く。
枝葉が4人に絡みつく。
「本格的に死ぬかもしれないな……」
タケシが呟く。
しかし、タケシの声は響かなかった。
声が出ない……いや。
音が出ない。
「俺の能力、ルール。音波は出ない。つまり音が消える。次に、君たちは光が見えない。つまり視界が見えなくなる。」
そう聞こえた時には、4人は目の前が見えず、音も聞こえなかった。
ただ、血の流れる感触と痛みが4人に伝わった。
ユウは、血の流れる感覚を感じた。それは、温かみを帯びていて、一人一人の肉体が転がされているのが分かった。
そして、ユウの番になった。
腹部に激痛が走る。
腹部からのベッタリとした感触と地面に流れた血の感触を感じた。
「どうだ、見てみろ、お前以外全員死んだ!お前の精神が壊れる所が見たい。だから、お前だけは最後に殺す。お前は、俺の玩具だからな!!」
そう聞こえた瞬間、視界が戻り腹部を蹴られる。
執拗に殴られる。ケラケラと笑いながら、転がされる。
ユウの視界には腹部を銃で撃たれ力に塗れた仲間。
睨むが、彼の表情は一層笑顔になっていた。
ユウはエイが目の前で殺された時を思い出した。
ーーー
力を失ったその身体を踏みにじるように、頭部に無音銃を突きつける。引き金を引き、内部が膨らみ、破裂。赤い血が飛び散って、ガビの顔を汚した。
「何だお前!!」
頭に血が上るのを感じた。
目の前の少年に向けて無音銃を向けた。
睨みつけるが、私の感情が取り乱されるのが嬉しいかのように一層笑顔になった気がした。
もしかしたら、頭部だけなら破裂しても復元出来るかもしれない。身体だけ分かれば修復可能だと聞いた事がある。少なくとも、技術的には可能だ。後でそれに詳しい医者に見てもらえばいいだろう。
しかし、その希望を閉ざすように彼は言った。
「怒ってるの?」
彼はエイの腹部を破裂させた。
勢いよく破裂し、パンッと言う音が建物に響き渡った。
彼はエイの身体を地面に捨てた。
不幸中の幸い、まだエイは息をしていた。
もしかしたら、もしかしたら息を吹き返してくれるかもしれない。彼と共に飛ばされたエイの場所まで走る。
オラ、オラ、オラ!!!
彼はケラケラと笑った。
蹴る度に土や草がエイの身体に付く。
「えーい、えーい!!!」
純粋に楽しんでいた。
エイの上で子供が遊具で遊ぶように執拗に飛んだ。
骨がズレる音がした、グッタリとした腕から生気が失われていくのが分かった。
もう、エイは遺体でしか無かった。
無音銃を捨て、私の声が林に響いた。
ーーー
「ガビ、お前を許さない」
ユウは痛みも忘れ立ち上がる。
そこには、怒りと憎しみ以外の感情はなかった。
彼女の感情ーーー「怒り」ーーーはピークに達していた。
「チッ、お前の能力覚醒のトリガーは「怒り」だった。ちょっと離れるか。」
ガビは数歩下がった。
ユウは腕を前に突き出した。
彼女の言葉は単純だった。
「殺す」
「ちょっと待って、俺ら超能力者だろ?」
しかし、彼女の勢いは増すばかりだった。
強い風が現れた。
数秒の内に空は暗くなった。
「なんだこれはッ!!??」
数秒後、また明るく鳴った。
「た、太陽が物凄いスピードで動いている!!!」
「な、止めろ!!止めろ!!!!」
ガビがユウを見るが、彼女の姿は既に黒く焦げていた。
「何が起きている!!??おい、おい!!!!!!」
ガビは重力を増加させる能力を使った。
「グハッ!!!!!!!!!???????」
ガビの体が地面に叩きつけられる!
「なっ!!??、エネルギー、法則変化がすごい速度で増加されているんだッ!!!????」
ガビの体が熱くなる。体に火がつき始めた。
身体に火がついた。それも、人体発火するように表面からだ。
「物凄いスピードで酸化が進んでいる!!酸化速度が過度に増加すれば、体が燃えはず……そうなれば能力者本人の体も燃え……」
ガビの視界には、既に焦げて黒くなったユウの姿があった。
「クソッ、クソッ!!!!!!!!!!!!!!」
「不老不死とはいえ、老化速度に回復が追いつかないと死ぬ!!死ぬんだ!!」
「ぐぁあああああああああ!!!!!!!!!!!!!」
「思考に洗脳が追いつかない!肉体の痛みが洗脳で和らがない!!!!!!痛い、痛いッ!!!!!!!!!!」
ガビは体を縮め、のたうち回る。
体は半分焦げ始めていた。
何度、1日が繰り返されただろうか、体感としたら数時間だったが、100年は繰り返されたように感じた。
「やった、生き残ったぞ!」
ガビの目の前には倒れたユウ達の姿があった。
「しかし、依然として痛い。臓器や脳辺りは集中して老化を回復させたが、それ以外は圧倒的に腐敗し始めている。」
周囲は相変わらず崩壊した都市だった。
「どうやら、ユウと俺の間だけの時間が異常に増加しただけか。まあいい、俺には行かなければならない場所があるん……だ?」
ガビは力尽き、倒れた。




