68、最終戦 中編 【真実】
ガビは、遠方数km先まで目視出来なくなった。
テレビは川島を称賛した。
一般人が、奇跡を起こした。
あの光は、あの拳は?
川島は、力尽き、倒れ込んだ。
スタッフが倒れ込んだ川島をテントまで運んだ。
ーーー
数分経ち、人々が感動に浸っている頃だった。
アスファルトに描かれた円の中心部分から、赤髪の少年ーーーガビが現れた。
円の中心で、ガビは倒れ込んだ。
しかし、彼を救助する者はいなかった。
「あーれ?俺を助ける人いないんだ。まあいいや。お前、こっちに来い。俺を助けろ!」
そう言うが、誰も返さなかった。
寧ろ、沈黙が訪れた。
「まあいいや。あいたたたた、とりあえずユウさん、行きましょうか。俺とバトルしよう?ね?ね?」
ガビはニヤニヤしながら疲れ果てていたユウに話しかけた。
「ガビ、何で死ななかった?」
ユウはガビを呪うようにして睨んだ。
「ああ、並の人間なら死んでただろう。だが、今の俺は完全体。瞬時に身体が蘇る。不老不死と言った所かな?」
「川島、アイツは何者だ?」
ユウは聞くが、ガビは何故だろう?と答えるのみだった。
「まあ、強いて言うなら、川島はナチュラルらしいから………、うーん。おそらく彼の能力解放のトリガーは「皆んなの応援」だろうね?アホらしいな。因みに俺は………では、行きますか!」
「………!?何をする気だ!?」
「何って?俺も能力解放しようと思ってね。因みに、俺の能力解放は意識するだけで解放できる、じゃ、始めますか!」
次の瞬間、ガビ・ゾディアックの周囲の木材は燃え尽き、鉄は溶け、人々は数秒で死に至った。
「やめろ!何をした!!!!!」
ユウが叫ぶ。
「あれ?なんでだ。ユウ、そんな能力ないよね?バリア能力とかさ」
ガビは首を傾げる。
「チッ、まさか………」
ガビは眉間に皺を寄せた。
「その[まさか]だよ。俺タケシ。ユウの周囲だけバリア貼った」
周囲が燃え、アスファルトが溶ける中、タケシは金属バットを持って立っていた。
「ウソでしょ!?警備隊も軍隊も即死してる。金属も全部、溶けてる!」
ユウは顔を真っ青にして、口を開けていた。
「あーあ、残念ながら、ユウと俺、タケシだけになったらしいね。因みに今回は半径2キロ以内が能力範囲です。風で飛ばすとかは無理だし、ユウの能力を使うと、重力が逆に強まるので無意味です笑!さあ、どうします?」
「これは、いわゆる………」
タケシが言った。
それにユウは続ける。
「いわゆる『詰み』だ…」
「今打てる手は、俺が念力でガビを飛ばす事。俺ガビ同様、意識的に覚醒できる。しかし、それで彼は殺せない」
「フフッ。警察も呼んだ。人々の声援も、川島も、テレビも、そして博士も」
「違う」
ユウは返す。
「だけど、どれも役に立たなかった。全て無駄だったんだ」
「違う」
「圧倒的な力の下では無意味。ザコはザコだ。フハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!!!!」
「俺の勝ちだ!!俺の勝ちだ!!!!!!!お前なんか要らない!!!!!!ザコめ!!!!!!!!!!」
ガビは地面を蹴った。
ガビは上空数メートルに上がり、止まった。
「俺は何者も従える、最も強い者。俺が「ルール」なんだ!!!」
空中に浮き、その場に留まるその姿はまさに神のように思えた。
「なるほどね、『何者だコイツ』そう思ったんだね」
ガビは数メートル先にいたが、見透かしたような視線をハッキリと感じた。
「いいよ。どうせ殺す次いでに教えてやる。俺がNo.ゼロ、能力は『ルール』。全ての物理法則を操作する能力さ。今、アスファルトの融点、金属の融点、有機物の酸化速度を操作してお前の仲間を殺した。お前には重力を強めた。そして、今俺が宙に浮いているもは空気抵抗を上げたからだ。いやー、あの時の宝島寿限無の考察は当たってたとはな。さすが高知能といった所かな。酸素ラジカルはバレるとは思わなかった。あれは完全犯罪だと思ったんだけどな。分子間力を局所的に操作したんだ。どう?俺の能力のネタバレは」
勝ち誇ったように微笑む。
「しかし、No.ゼロは、私が殺したアイツだろ!?」
「ああ、アイツ?要は影武者だよ。お前がNo.シリーズを殺すかどうかのマウス。ただのナチュラル。それでもなかなか強いけど」
「さあ、戦おうか?………はッ!?」
ガビが言った時、ガビの声色が変わった。
「辞めなさいガビ。もうコイツらはザコだと分かった。殺せという命令は解除だ」
次に、ガビの声色は戻って言う。
「もう、いいだろ?父さん、殺すよ?」
ガビは自分の頬を叩き、意識を取り戻すように首を左右に振った。
「ユウ、タケシ。お前の仲間の応援は俺を苦戦させたな。でも全ては無駄だった」
ガビは腕を前に突き出した。
「それはどうかな?」
その時、ガビは猫騙しにあったように目を瞑った。
「何だッ!?風?」
ユウの前には、コウとニコリが立っていた。
「お前ら、研究所のガキか!?ニコリの能力では、見た場所しか移動できないハズ………なぜ!?」
「ニコリ、答えてやりなよ」
「うん、兄ちゃん。私の能力は、見た事がある場所にしか行けないの。でも、私は能力者による光を見た事があった。光った瞬時にワープできるかと試してみたら、まさかここに来るとは」
「ザコは黙ってろ!お前には死んでもらう!」
ガビは2人へ意識を向けるが、死ななかった。
「タケシ、余計な事しやがって」
「そろそろ、技変えたらどうですか?」
タケシは言った。
「いけ!レイコッ………あれ?おい!おい!チッ、ザコが」
歯を食いしばるようにして言う。
ガビの視線の先には、倒れた電柱に潰された少女の姿があった。
コウは前に歩むニコリに声をかけたが、ニコリは変わらず数歩前に進んだ。
「お父さんに、殺せって言われたの?」
「お前、そういえば見覚えあるな?」
「ねえ、お兄ちゃん」
「………誰だ。気安く呼ぶな!ザコ!」
「帰ろう」
「俺に帰る場所なんて無いし、俺はお前の兄でも家族でも無い!」
「お兄ちゃんだよ。私たち、超能力者でしょ?研究所の所長が言ってた」
「………、俺に喧嘩を売っているのか?戦え。殺す!」
ガビは見下ろしたまま、手のひらをニコリへ向ける。
ガビの声色が変わった。
「ニコリ、懐かしいな。あの時の事は覚えてい……」
「俺はコイツを知らない!騙されるな!どうせ洗脳者の記憶改竄だ!」
「どうだって良い。今思えばそうかもしれないけど、あの時楽しかった思い出は、あの時洗脳されていなかったという記憶は、確かに脳にあるでしょ」
「お前は騙されている」
「私、出たい。苦しいよ」
「もうやめてくれ!精神が持たない!あれは真実じゃない!」
「真実なんてそうでもいい、あの時の記憶だけで十分だよ」
「コウ、あの時はごめんね…」
「何を言っている!記憶が無い!」
ーーー
ふとガビの脳内に記憶が蘇ってきた。
ふと、ガビの脳内に記憶が蘇る。
聞こえるのは、遠い昔の両親の声だった。
「ガビ、ゾディアック。そう名づけましょう」
鮮やかな記憶。双子の名前。
それから始まるのは、“私”としての記憶だった。
そうだった、俺は双子だった。
俺は、あるゲームをしていた。
いや、あれは「俺」ではなかった。
「私」ーーー女子だった。
数人でコインを投げた、私はそのルールに従いコインを投げた。
簡単なルールだった。
コインを投げて裏が出たら死ぬ、表が出れば生きる。
連続で表が出た人が勝ちというルール。
そして、私一人に表が出た。
私は、生き残って、他は死んだ。
ほんとに死んだんだった。
一緒に遊んでいた数人全員が、裏が出て死んだ。
全員、心臓麻痺だった。
私は意味が分からなかった。
そして、数日後、私は自分を許せなかった。
床にあった器具で私は手首を切った。
気づけば、私は、研究所内の病院のベッドに横たわっていた。
「ガビ?大丈夫」
「みんなは!?」
「気にしなくて良いわ。もう、大丈夫よ」
次第にその記憶も消えていった。
私の体は、男子になっていた。
首に傷が付いていた。縫い目だ。
それが、双子の弟であるゾディアックの身体だと思ったが、次第にそれも忘れていった。
それから、私は能力に気付いた。
私の能力はルールに従う能力。
ルールが、本当になるんだ。何故か。
いつのまにか身体は男子だった。
図書館に行って、資料を見た。No.21、ゾディアック、No.22、ガビ。
とい記されていた。
「No.ゼロ。今日からナンバーゼロ。今日から君の名前は、ガビ・ゾディアックだ」
俺は、その名前に違和感を持っていたが、いつの間にか、違和感も消えていった。
内にある自傷行為や自己嫌悪は、いつのまにか他者への暴力へと昇華されていったのだった。




