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HE・IS・EI[平成の殺し屋]  作者: リンゴ
第5章 最終戦線
69/73

67、最終戦 前編

「さーて、はじめましょうか」

ガビ・ゾディアックが言う。


「殺す」

ユウは、腕を前に突き出し、ガビの方へ向けた。



リポーターは1キロ先から野次馬の近くで待機をしている。

スタジオでの実況も、口数は少なくなっていた。



「待ってよ、ちょっと見てて」

ガビの横に、1人の男子と2人の女子が怯えて肩を振るわせていた。


ーーー

「と、突然現れました!あれは!?小学生でしょうか!?あれは…宝島さん、研究者としての見解は……」

「えぇ……」

リポーターは宝島に無理矢理話を振っていた。

ーーー






「ん、殺していいよ?まあ、コイツらガキが死んでいいならね?」

「牽制か?無意味だ。お前を殺せるなら、コイツらの命も、私の命も犠牲にする覚悟はできている。これは、パフォーマンスでも慈善活動でも無い」



「戦争だ!」

ユウは、腕を前に突き出しガビに風を送る。



ガビが数歩分だけ後ろに下がった。

「やるねぇ。このガキに当たらないように俺だけに風を送る。結構練習したんだね」



周囲へ風が向き、ガビの髪が靡く。

1キロ先からは野次馬の声がユウまで響いていた。



「これでどうだ?距離は取った。そして風を送る事で物質を入れ替える能力を低下させた」

ユウはキッと目を細め、押し殺すような声を放つ。



フッとガビは微笑む。

その瞬間、ユウは自身の身体が重たいように感じた。

ユウはかがむようにして、ガビを睨む。

「惜しい。でも、ヒント。僕に逆らわない方がいい」




「ふざけるな!ウッ!?」

ユウが手をガビへ突き出した瞬間、ユウ身体は地面に叩きつけられる。

風は途端に収まり始めた。



「No.ゼロとやらの能力を殺して奪い取った。やっぱり君はそういうヤツか」

「お前ほどではない!!」


再び意識を向けるが、その度にユウの身体は地面に叩きつけられる。

まるで重い物がユウに伸し掛かるように動けないでいた。



「分かってると思うけど、君の能力は風では無い。変化していくエネルギーを強化する能力だ。つまりさ………」

ガビは続ける。

「重力が次第に強くなっているって事だよ。君の場所だけね笑?だから、その重力の前で能力を使っても、重力が強化されていくんだよ?バカだったね」



ガビはお疲れとだけ言い、突き出している腕に力を入れる。

その矢先だった。



「おらあああああ!」

ガビの右頬何者かの拳がめり込む。

身体が傾き、一瞬よろけた。



「おっとこれは川島さんじゃないですか?君は能力者」

ガビは息を切らした川島に微笑んだ。



「ガビ・ゾディアック、もうやめろよ。こんなの、人が死ぬだけだ!」

マイクを持ち、スピーカーから川島の声が1キロ先まで響く。


ーーー

スタジオは、一般人がガビに殴り込んだと騒ぎ出した。

こんなの、前代未聞。聞いてないとも言った。

ーーー






野次馬は圧倒され、騒がしさが収まっている。

「君は面白いな。どう言う訳か君の気配は感じない。ザコ過ぎて見えないのかな?」

ガビは、ニヤニヤと川島を見た。


川島はガビを無視して小学生二人を抱えていた。



「もう、辞めろって!」

「ザコは死んでください!笑」

ガビは能力を使わずに川島を蹴り、倒れた川島の胴体に更に蹴りを入れる。

何度も蹴り、ケラケラと笑う。



「やめて……ください…」

川島は立ち上がり、ガビの方を向いた。

白目を剥いた眼球は、どこを見ているのかは分からなかった。

だが、彼の目からは涙が溢れていた。



「………お前、何で泣いてんだ?」

流石のガビも戸惑っていた。

それも、痛いのではなく、悔し涙に見えた。



「………!」

ゆっくりと歩み寄り、ガビの胸へ拳を向かわせた。

ただ、その力は弱かった。



「意味不明。ザコ。時間の無駄だから」

ガビは、混乱していた勢いを取り戻し、やっとの思いで川島の腹部を足で押す。

川島は膝をつき、倒れた。

だが、また立ち上がった。



「おい、川島!無理だ……」

ユウは、地面から立ち上がれないまま川島に言った。





ーーー

「本当に、大丈夫なのでしょうか?」

「いやぁ、分かりませんね。ですが勝ち目はないでしょう。だって彼、一般人でしょ?」

「放送事故にならないといいですが……」

「宝島さんの見解はどうでしょうか?」

「まあ、でも頑張って欲しいですね」

スタジオでは、コメンテーターが様々な意見を出していた。


ーーー





野次馬にも、飽きて帰る者、興味を示す者、カメラだけを回す者、様々な人間がいた。

しかし、彼らの注目は次第に川島の方へ集中していく。




「マジで、殺して欲しいの?何がしたいんだ、お前は!」

それでも立ち上がる川島に、ガビは半ば呆れ始めた。




「悔しくて……」

膝に手を置きながら立ち上がる。

それでも、真っ直ぐに立ちあがる事はできていなかった。






野次馬や、カメラマン、自称超能力者、怪しい宗教団体達も、川島に注目し始めた。

何度も立ち上がる彼に狂気を感じていた。勝ち目は無いとも思った。

だが、それ以上に……


「頑張れ!」

「誰?でもやっつけろ!」

「ガビを倒せー!」

「弱いけど、大丈夫?でも、頑張れ!」

「アイツをやっつけて!」





ガビは戸惑った。


「お、おい、本当に何やってんのか?お前、自分のことザコだってわかんないのか?なあ……?」


彼は何か、自分よりも底知れぬ何かがあるのではないかと。

彼の意思の強さは人並みではないと。





「俺は………悔しい」

川島は、足を引きずりながら前に進んだ。



「何度も………試した」

息も、薄くなってきていた。



「みんなの役に立とうと思った」




「だけど………俺ザコだから…」

蹴られた左足の方に体が傾いていた。

力の入らない手で、拳を作ろうとする。



「悔し…くて………」

川島は地面に崩れた。





「なんだ。やっぱり普通の人間か。雑魚だわ」





川島は、倒れた。

意識が朦朧としていた。





「………み」






「ん?」

ガビの耳には、川島が何かを言おうとしているのが分かった。

だが、ガビ以外には、誰もその事を知らない。





「川島?って言うのアイツ」

「まだ、頑張れよ!」

「あと少しだ!」

「皆んなの為に頑張れ!」

「頑張れーーーーーーーーーーーーー!」


「頑張れ!」


「頑張って!」

「川島!」




野次馬でも、自称霊能力者でも、宗教団体でも、コメンテーターでも無かった。

彼らは、人々となって川島へ言葉を向けた。




止まっていた手が動き出した。

川島は再び立ち上がった。

膝に手をつきながら、立ち上がった。

少しずつ、前に進む、一歩ずつだった。



彼の足は止まらなかった。



「み………ん、な」

川島は息にも近い声でそう言った。

その声は誰にも聞こえなかった。




声援が、彼へ集まる。





「みんな………の、ために」

川島は拳を握った。

体を構える。




彼の拳が光った。

拳は、ガビの方向へ向かった。




ほんの一瞬だけだった。

眩い光が周囲を照らした。

拳には、迷いはなかった。




「皆んなの、ために!」




彼の拳が、ガビへ打ち付けられる。

ガビの身体が飛び、数km先まで見えなくなった。




人々は歓声を上げた。




誰もが、彼を称えた。






















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