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それから、数分耳鳴りが続いた。
人々の耳鳴りが治まるころ、ユウの目の前。
即ち円の中心に男が現れた。
「ガビ・ゾディアック」
ユウは目の前のガビ・ゾディアックを睨みつけた。
彼はガビ・ゾディアック。
赤髪にフード、咥えるは燻ったタバコ。
肩をくすめ、やれやれと半笑いをした。
「あー、もう何ですか?こんな大々的に報じられて。意味不明ですよ。俺ってそんなに魅力的なのー?」
呆れるようにフフッと笑う。
人々はガビ・ゾディアックを認識し、ヘリからではカメラが、宗教団体では霊力が、警備隊からは銃口が、野次馬からは注目がガビへ向けられている。
「あれ、皆さん攻撃しないんですか?」
ガビがふざけるように言った。
「殺す!!」
ユウはガビの方へ腕を向けた。
ユウが咆哮し、腕を突き出す。
風が爆ぜる。轟音と共に、空気が圧縮されて突風となり、ガビを吹き飛ばした。
数メートル先に倒れたガビが、土埃の中から顔を上げて笑う。
「あー、なるほどね。念力じゃなくて風。物理か」
「テレパシーで読み取るに、お前以外にあと2人居るな」
「バレた?行けレイコ!!」
黄色いパーカーの少女が何も無い空間から現れる。
レイコがユウを指さすとユウは倒れた。
「クソ!!何をした!?」
「遠隔で電流を流した。コイツがいればお前は簡単に死ぬ。お前は雑魚なんだよ」
ユウが立ち上がりながら言う。
「人類を支配するみたいな事を考えているんだろう?無理だ!!お前は所詮能力者。殺戮能力を持った人型の何かだ!!」
「おいおい、言ってくれるねぇ?エイ……だっけ?あいつも馬鹿だよなー」
ガビが言う途中、周囲に竜巻が発生した。
カメラが飛んだ。人々が風に飲み込まれ、竜巻となって上空まで巻き上げられる。
「殺す!!!!!!!」
ユウは腕をガビの方向へ向けた。
物が風に飲み込まれる中、ガビとユウは地面に立っていた。
「宇宙人のナチュラルか。宇宙人にしては珍しいな。能力のトリガーは『怒り』かな?」
[ナチュラルとは、生まれ持った超能力者。能力を使う事ができる。『覚醒』する事ができ、感情や気温や明るさなどの環境条件等と能力ごとにトリガーが違う。このトリガーを満たすと『覚醒』状態に入り、一時的時能力が強化されたり、一時的に新しい別の能力が使用できるようになったりする。尚、ナチュラル以外の能力者にトリガーや覚醒という概念は無い]
(今のユウの場合、トリガーは『怒り』で、覚醒効果は竜巻であると考えられる)
「逃げるんじゃない!」
ユウはさらに風を送る。
「あちゃー、こりゃ難しいな。テレビも壊れちゃってるじゃん。ま、とりあえず帰るわ。」
ガビが姿を消すと、竜巻は収まった。
上空から人や物が落下していく。
しかし、肉体は落下し出血し、機材は破裂し悲鳴が鳴り響く。
とはならなかった。
全てが嵩張らず、地面の上で宙に浮いていたのだ。
ユウの後ろに人影が現れた。
彼女の肩に手を添えると、ユウの力は抜け地面に倒れ込んだ。
「撮れ高、最悪でしょこれ」
半袖短パン、右手に金属バットを構え、宙に浮いた機材を粉々に砕く。
その粉々になった部品すらも宙に浮いていた。




