6、ランクQ
ある研究所では、プロジェクトが完結しようとしていた。
フェンスに囲まれた、大きな四角い鉄やセメントでできた建築物。
遠くの芝まで、機械の「ジー」と言う音が響いている。
研究所の中では白衣を着た研究員が水槽を眺めていた。
中には真っ黒い球体がポツンと存在している。
「もう直ぐです」
「そうか。プロジェクトが終わり、君達研究員と会わなくなると少し寂しいな」
無精髭の男が頭をかきながら、嬉しいのか、悲しいのか分からない表情で言った。
ーーーー
朝方、早く起きて、机に手を出した。
彼女、ユウを殺せば、俺は「ユウ」つまり「U」ランクの殺し屋になれる。
彼女を見る。
彼女は、人ひとり寝られる大きさのベッドの上で、あくびをした。
空調の風で、ふさふさと毛布が揺れて、少し寒そうに身体をちぢこめている。
俺は、銃を持つ。
今までの彼女との関わりを思い出す。
ーよろしく。ー
ー何があっても、相棒には裏切らないって私は決めたー
ー私とお前でエイとユウ。そう「英雄」。2人なら何でもできるー
「でも、ごめん。Uクラスの武器が有れば、俺は強くなれる」
「俺はさ、念能力についてもっと知りたいんだ。」
独り言を言って、俺は目を閉じる。
引き金を弾く。
ーーーしかし、彼女は爆発も撃たれもしていなかった。何の変化もなかった。
「何だよコレ。エネルギー切れだ。」
仕方ないので俺はバルコニーに行く事にした。
バルコニーでは、エフがタバコを吸っていた。
「よう、朝からどうした?暗い顔して。もしかしてユウに何も言ってないよな?ランクの事」
「もちろん、言ってないよ。自分より高いランクを殺せばそのランクになれるなんて、殺す対象に言う方がおかしい」
「じゃあさ、良い相手教えてやるよ」
ニヤっとして言った。
「その人のランクは?」
「エフ、俺だよ」
「殺せば、エフの地位を持てる。そうすれば、ランクアップした無音銃が配られると言う事」
「そうだよ?」
「な何で?そんな自信たっぷりに、、、」
「どうせお前、殺せねぇじゃん」
俺は脅かそうと思ってポケットから無音銃を出した。
どうせ怖気付いて撃てないでしょ。と言いながら、エフは余裕たっぷりに両手を挙げた。
俺は何の躊躇いもなく引き金を引く。
無音銃はエネルギーが切れていれば、地球の銃同様弾は出ない。
少し引き金引いてビビらせようと思った。
「うっ、、、」
突然エフは床に倒れた。
床に血が流れている。
彼の左胸には、破裂した跡があった。
顔を拭うと、それは血だった。
嘘だろ?
俺が銃を撃ったのか?
銃を見ても、エネルギーが微塵も入って無かった。
朝から、いやバーテンを撃つ時に使い切った筈だし、エネルギーが残っている可能性はゼロ。
そんな筈なのに、、、何で死んだ?
バルコニーへ歩く音が何処からか聞こえた。
俺は階段を降りて玄関へ向かった。
靴を履き、ドアを開けた。
遭難用の探知機を足で踏み付けて、森の奥に走って逃げる。
後ろを見ながら走ったのがいけなかった。
下の川が見えた時には、既に崖から落ちていた。
落ちている途中、音が聞こえた。
[ランクが上がりました(ランクQ)です。]
「え!?」
そう言っているうちにも身体は地面へ向かっていた。
[緊急脱出を行います。移動先を指定してください]
目の前に画面が現れ、世界地図が表示されていた。
「こんなの無理だよ!」
もがいていた指先が適当に地図を触った。
「え?え?それどころ?絶対日本じゃないよね!どう何の!?は?」
その瞬間、目の前が真っ暗になり、意識を失った。