57、殴る
突然の言葉に唖然とした。
「の、能力者なの?君」
編集者は言葉が出てこないようだった。
「そう、なんだ……」
川島は自分自身でも混乱していた。
それもそうだろう。このご時世、能力者は実験台にされてもおかしくないと言う段階まで、人々は盛り上がっている。
「どのような能力?」
編集者はすかさず聞く。
「殴る……能力です」
「殴る?」
宝島は聞く。
こちらは科学的にどうなのかと言う所が気になるのだろう。
「はい、先日工事中で鉄パイプが落ちてきたのですが、とっさに腕を前に出したら曲がったんです……鉄が」
「曲がった?見せてくれる?」
宝島は検証する気満々だった。
宝島の研究室で鉄板を用意して川島が殴ってみる事にした。まだ不安なため、警察には言っていない。
編集者は多忙なため居ないが、後で動画を送れと言われている。宝島は「せーの」と言った。
隣から持ってきた2つの机を寄せ、机と机の間に長方形の鉄板を置く。川島は拳をあげ鉄板に拳を打ち付ける。
「あいたたたた」
「!?」
川島は腕を抱え床に蹲っていた。
「ちょっと……え、川島君。嘘?」
「いやいや、ホントですって!」
手を横に振って否定するが、イマイチ本当だとは思えない。
床に手を付き、起き上がる。
その時氷山助手が部屋に入ってきた。
「宝島博士え、誰ですかその人……うわっ」
氷山が足を滑らせ転ぶ。
紙は川島の方へ向けられて降りかかる。
埃があったのか、川島はくしゃみをしてしまった。
バランスを崩して鉄板に手をついた
「……え、鉄板が溶けた?」
指を置いた部分だけ鉄板がぐにゃりと曲がっている。
「もう一度できる?」
「やってみます」
しかし、何度やっても再現できなかった。
「今日はこれで終わりだな、川島君」
「いえ、僕も試してみたかったので……」
時計は午後5時を回っていた。
宝島は考える。
「何かのきっかけで能力が発動、あるいは増幅するのかもしれない」
「そして悠の能力も何らかのきっかけがあれば増幅する……のか?」
宝島寿限無メモ
現状、川島の能力は「偶然頼みの一発芸」レベルで、実用性も信憑性も低い。今後は科学的検証と心理的アプローチの両面から、発動条件の特定と再現性の向上を目指すべきだろう。




