42、②
「X、いいか?」
誰かの声が、救急車の中に響いた。
瀕死のガビ・ゾディアックを囲むように、5人の仲間が緊張で唾を飲み込む。
サンも、その中の1人だった。
「了解」
そのXの声は、まるで地獄から聞こえて来るような、或いは悪魔のような嗄れ声だった。
ガタン
地面の底が抜けるように、体のバランスが崩れる。
轟音を立て、前に行く感覚。
衝撃は無かった。
救急車の窓から見えるのは、常識では捉えられない景色だった。そこに青色、黄色、赤、色彩が波を打つように変化していく。
車は前進したかと思えば、急ブレーキをした。
瀕死のガビ・ゾディアックを乗せた担架が車の端へぶつかった。
「着いたぞ」
Xが言うと、皆は口を閉ざした。
命令では無い。だが、それ以上の支配感があった。
サンは、混乱していた。
つい一週間前、ガビについて聞いていて、それから直ぐにガビに関わるとは、思いもしなかった。
「ガビは幼少期、事故で死にかけた。そしてその時損傷部を手術で回復させたと同時に、生命力ーーー怪我をしてもすぐ回復するし、死なないようになっている」と言う事だった。
今、研究所に着いた。
建物内部から警告音と赤い光が繰り返し漏れている。
計画は着々と進んでいる。
ガビを治せる医者は研究所内にいて、ガビを瀕死状態から救うためにその医者を脅す。
一斉に混乱を引き起こして、その隙に侵入。
医者を脅し、ガビを治療させて、すぐに撤収する――
それが「簡単な手筈」だった。口で言うほど、簡単なわけがない。
サンは、安堵すると同時に、冷や汗を拭う。
正直言うと、ガビを復活させるこの計画は無謀に思えた。
――もし、失敗すれば。
その言葉が、誰の声でもないのに、サンの頭に突き刺さる。 責めるような、呪うような、そんな抑揚の声だった。




