3、安心感
「ねー、なんで君はあのバーテン殺せなかったの?」
山の奥の建物、銀色の室内でエイともう1人、女の宇宙人がいた。
彼女の睨みは、今にも釘がとんでくるような恐怖を感じさせた。
「ア、アイツはダメだった。人間じゃねえんだよ」
「はあ?ここに私たち以外の宇宙人がいるわけないでしょう?」
「ユウさん。だいたい依頼者は誰ですか?」
「あー、こいつだ。」
タブレットを操作し写真をエイに見せる。
「コイツ、前回俺が殺してたの指摘したヤツです。宇宙人だと分かってて殺しを依頼したんなら、相当探られてるんでしょうね」
それ聞いてないんですが?と、ユウは机を叩く。
「すみません」
「まあいいわ。銃のエネルギー残量があと3と半分か。ずいぶんと豪快に使ったわね。節約しないといけないわ。次のエネルギー供給までにあと半年以上あるんだから。」
ーーー
彼、エイがバーテンを殺せなかった理由は、バーテンが宇宙人だった事でも、強かった事でもなかった。
あの時、バーテンはエイに対しこう言った。
「お金を払えないという事ですか。それでは困ります。私のエネルギー源はあなた達の宇宙人の種族と違って、人間同様であるからです。」
エイのポケットに入っていたピイちゃんに目が付けられるのは早かった。
「あるじゃないですか。お金は払って頂きますが、今回はこの小鳥で半額にします。ただ、後日支払っていただきます。」
「ダメだ。これは俺の友達なんだ。絶対にそれはいけない」
「ずいぶんとふざけた事を言いますね。貴方は私の体を破壊させたのですからこれで手を打って上げるというだけです。」
バーテンがピイを手に取る寸前、エイはバーテンの腕を痺れさせた。内部破裂を連発したが、アレは射程範囲が狭すぎて全て外してしまった。苦肉の策で射程範囲が中程度の「痺れ」を狙った。
これは通常、動けなくするというより、感覚を鈍化させて痛みを和らげる効果であった。
運良くそれが上手く働き、バーテンの腕は止まった。
ーーー
「ねえ、エイ聞いてる?もしエイに殺し屋集団以外の守るものがあるなら、それを全て捨てるしかないから」
「もちろん知ってるよ。恋人はもちろん、動物もいけないなんて最初の最初に決まってる事だ」
「分かってるなら別いいけど」
その時、彼のポケットから「ピイ」と鳴き声がなった。
今の何、とユウは尋ねる。
「ごめん、俺タバコ吸ってくる」
「どうぞー」
危なかった。
俺は死ぬところだと思った。
右ポケットを探ると小鳥がいた。
音声消滅装置の電源切れていた。
スイッチを押しても電源は付かなかった。
多分電池切れだ。
電池、エネルギー供給が来るのは半年後。
となるとピイを飼ってることがバレる。
「捨てるしかないんじゃない?」
バルコニーで同じく吸っていたFが話しかけてきた。パイプを咥えながらニヤニヤしている。
「驚かさないでください」
「大丈夫。俺は口が堅いで有名だ。相談に乗ってやるよ。ほら、見せて見なよ。その小鳥を」
俺は恐る恐るピイを手に乗せた。
その瞬間、エフはサバイバルナイフを垂直に振り落とした。俺は素早く手を引っ込めてピイの負傷を回避した。
俺は「痺れ」を発動し、彼の上半身を鈍化させた。
だが彼の動きは止まらず、カッターナイフが首筋に向かう。
「なるほど。その銃は初心者か?名前はエイだったよな?ランクは最下位。この名ずけられたアルファベットがランダムだとか、AやBなら強いとか言う噂があるらしいが、それは低ランクの噂だ。正しいのは、Zが最高ランクでAが最低ランク。つまりお前は最もザコな殺し屋って事だぜ」
「なぜ鈍化しない。」
俺はサバイバルナイフをポケットから取り出し対応する。舞うようにナイフがぶつかり合う。拳で殴る。エフは手首を掴み制御した。
「お前らのやってる事なんてすぐ分かる。お前が来た瞬間から、俺はエネルギー無効バリアを身に貼り付けていたんだよ」
「もう疲れただろう?今日は俺とお前とはあいこで終わらせてやる。お前は自分で小鳥を処理する事だ」
「分かったよ。」
俺は彼が去ってから、ピイの首を捻った。