27、研究所の内部分裂
研究所の中心棟。
そこに集まっていたのは研究主任タロウと、倫理委員会代表シド、そして数十名の幹部達。
嘗ては同じ研究所で未来を語り合った同士だった。
ーーー今は立場を異にするタロウとシド。
「我々は既に〝それ〟を既に完成させている。あとは運用するまでだ」
「倫理委員会…いや、1人の人間として言わせてもらう」倫理委員会は立ち上がった。
「タロウ、君は優秀だ。学者としても、研究主任としても。だが…」
倫理委員会シドが机に置いたのは、細長い銀色の銃だった。
「はい。これは一年以上かけて作り上げた最高傑作。使用しても一切の音も匂いも放たない「無音銃」です。あとは運用するだけ。今後の超能力者への牽制にも非常に効果的でしょう」
「タロウ君。我々はその許可をしていない。研究所内でも共有は一度もされていなかったと言うじゃないか。」
「それに君は、君の実験は独断で行われているだろう?私が許可していない実験が多数報告されている。」
倫理委員会のシドはそう言い切り、席についた。
「何故だ?シド。私は研究主任だ。研究所の権力とか、許可とか、そういう物がある中で私の研究計画はどれだけ妨げられたと思っている?私には大切な研究員がいる。我々の存在意義は生命に屈する事なのか?権力に屈する事なのか?」
タロウは我を失い、大声を出す。
そうか…と答えるシド。
「君はこんな物を持ち出して、君は何をしたい?人間の手で人間を殺す事が「技術の進歩」とでも言うのか」
タロウは一言、違うと言う。
「……問題は彼らだ。我々が何十年もかけて研究してきた超能力者、ナンバーシリーズ。彼らを統制するには、既に人間の手では制御不可能なのだ」
シドが目を開く。
「そうか。だから君たちは地下の第3区画を封鎖し、彼らを隔離したのか!」
「我々が研究しているものは、君たちが思うひ弱な人間に毛が生えた物では無い。研究所の更に深層部には1人の人間が隔離されている。彼の名前はナンバーnullまだ目覚めていないが、後に最も強大な能力者となるだろう。能力が発現すれば……世界は変わる」
タロウの言葉に幹部達はざわめく。
会議を覗いていた研究者達も同様にざわめいた。
幾人かは未来に目を輝かせ、また幾人かは未来を悲観した。
「つまり君は……この研究所で能力者を育て上げ、世界を作り直すつもりなのか?」
「違う。私は、この手で神を作り上げ、神を人間の手に落とす。それだけだ。」
その夜、研究所は分裂した。
タロウを中心とする“実験推進派”は、主要なデータサーバーと武器開発施設、さらには“旧宇宙人実験棟”の構造そのものを持ち出して、別組織として独立した。
残された者たちは自らを倫理的な者たちと呼び、研究所で研究を続けた。
そして研究所は2つの派閥。
タロウ派とクリーン派に別れ、お互いは異なる信念の元互いに対立を続ける事になった。




