25、狂気
「こんにちは、僕はガビ・ゾディアック」
宝島が自販機を見ていると、横から青年の声が聞こえる。
見ると赤髪にタバコを咥え、ニヤニヤしている。
黒いパーカー、フードを被り、左手にナイフ。右手には、コインを持っていた。
宝島寿限無はそれが誰だが明確に分かった。
「ガビ・ゾディアック。なぜお前が…!?」
「フフッ、おっさん焦りすぎ。今の所殺す気は無いからさ」
宝島の右肩をポンと叩く。
「何をした!?お前は人が燃える直前、肩や身体に触ると聞いていた。俺に何をしたんだ!?」
「はっはっ!ビビってる。所で何で俺がここに来たかわかる?」
晴天の強い日差しは昼を過ぎて増してきていた。
それとは裏腹に、ガビ・ゾディアックの影は濃くなり、そして不穏な空気を醸し出す。何とも無いような風が宝島を嘲笑うかのように去ってゆく。
「俺は、水を買ったら実験室に戻るつもりだ。何か用か?」
宝島は何事も無いように返事をするが、実際は蛇に睨まれた蛙のように立ち尽くし、額からは冷たい汗が流れていた。
「おっさん、今死にたい?」
「し、死ぬわけないだろ。俺はこの変死事件が解決するまでは少なくとも生きてるつもりだ」
「そ。おっさん、ゲームしよう?」
ガビが右手を前に出す。
手のひらには金属でできた銀色のコインが乗っていた。
「コイン……?それがお前の能力か?」
ガビは直ぐに「違う」と答えた。
「それより、ゲームだよゲーム。早くしよ!ルールは簡単。このコインには表には○、裏には✕マークが書いてある。俺がコインを投げて、「○が出れば宝島寿限無は死ぬ」「✕が出れば宝島寿限無は生き残る」だ。もしオッサンが生きてたら俺はお前の言うことを1つ聞いてやる。どう?楽しそうでしょ?」
ガビ・ゾディアックはコイントスを始める。コインが弾かれ、空中で回転する。そうしてコインが落下し、ガビはそれを腕でキャッチする。
「チッ。マジかよ…」
ガビが手を開く瞬間的、手からコインが落ちた。
コインは縦に落ち、駐車場のアスファルトの上を転がり道路へと向かっていく。
コインを取り戻し、傷が付いてないかを太陽の光に翳して観察する。
そして、ガビは立ち尽くす宝島を見て、肩を叩く。
「じゃ、おっさんが投げてよ。ほら、コイン手に持って。俺下手みたいだからさ…」
「つ、つまり✕が出れば「生き残り」何だな?」
そうだよ、と震える手でコインを握りしめる宝島にガビは言った。
「投げな?10秒以内に投げなかったら失敗にカウントするよ?じゅーう、きゅーう、はーち……いいじゃん」
宝島はコインを空中に投げ、震える手でそれをキャッチする。
「この手を開けば、運命が決まる。生死が……決まる」手のひらには汗を書いていた。今にも手が震えてコインが落ちそうだった。
宝島寿限無は恐る恐る・震える手のひらをゆっくりと開いていく。コインの端が見えた。
目を瞑り、一気に手を開く。
目を開くと、宝島の手のひらには×のコインが見えた。
「うーん、マジか。俺死なねーのか。じゃあコイントスじゃ無いのかな?」
肩を掻き首を傾げる。
「ガ、ガビ・ゾディアック……俺の言うことを聞いてくれるんだな?」
「あー…うん。そうだったね」
宝島寿限無は暫く思案した後言う。
「ガビ・ゾディアック、お前を逮捕する。」




