20、進歩
「そろそろ気付いてきたかな?2、3日しか経ってないが、早ければ今頃気付いてるだろう。」
そう言ったのは田中弧。
彼は無音銃で人間を殺害したエイを発見した人物。
そして、それ以前に殺し屋集団「平成」を潰す計画を立てていた張本人である。
バーでグラスをカラカラと下品に回しながら片方の口角を上げる。
「これで、殺し屋組織『平成』は終焉を迎える。彼らが居るせいで、殺し屋営業が出来なくなっていた。でも、もうお前らは終わる。無音銃で完全犯罪なんてショーもない事は時代遅れ。」
「これからは人間の時代。人間が超能力を手に入れ、世界を翻弄する。そして、無音銃よりももっと凄い完全犯罪を行う!!ハハハハ」
「あぁ…そうだったX、ユウに伝えてくれ。」
平常心を取り戻した彼は後ろに立つ黒いフードを被った男に黒い手紙を渡す。
黒いフードの男は受け取り、前に組んでいた手を後ろに組み直し、は。とだけ声を出した。
静かにグラスを置き、机に万札を数枚捨てるように置く。
「さて、行こうか……本当のNo.ゼロ。」
田中弧は吐き捨てるように言う。
そして、片方の口角を上げながらバーを後にした。
ーーー
昼休みだった。空は曇り気味で、今にも雨が降りそうだった。
ガビ・ゾディアックは学校の屋上から地面を見下ろしていた。身を擦りながら言う。
「あー…今日から11月か。寒いな」
屋上からは、校庭はもちろん、ビルや鉄塔、工場会社商店まで見えている。
「ここから飛び降りたら俺、死ぬんだよな……」
なーんちゃってと言う時、誰かが彼の背を押した。
「あっ!」
彼は屋上から足を踏み外し、あっけなく地面へと落ちていく。残念な事に、彼の能力ではこれを防ぐ事は出来なかった。
体がいっそう寒くなったな、とガビ・ゾディアックは思った。もう少し有意義な事を考えられたら良かったと思いもした。
ーーー
ユウがワイとシイの遺体を指定の場所で処理する。
彼女に罪悪感はない。何故なら彼女は殺し屋だからだ。殺すのは手馴れているし、この同じ「平成」組織内でも殺す事は黙認されているのだ。
「シイの奴……宇宙警察一々呼ぶなっつーの」
遺体をロープで縛り、焼却へ投げ入れる。
「ここは無法地帯なんだよ。誰が殺したとかカンケーねぇっつうの。エイの奴もどこ行ったんだか。私の確率操作通りなら、研究所の中。」
「エイはおそらく、脱出しようとするハズ。それに連なるようにNo.シリーズを脱出させるという魂胆だ。」
「いつの間にか、No.nullの研究が始まってから危険なNo.シリーズはあの中に収容されてる。そして私たちの組織「ナンバースレイヤー」は入れなくなった。国家のクリーンな研究所になったってな?刃物は振り回して初めて役割を果たすってのにな!!」
「丁度今、研究所からは脱出させてる途中でーす。了解っす田中弧さん。」
そう言いユウはポストに入れてあった田中からの黒い手紙を焼却炉へ捨てた。




