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HE・IS・EI[平成の殺し屋]  作者: リンゴ
第2章 新人類の夜明け
18/73

18、バカ話

「だからミステリーサークルの一部は本物なんですって」


「ほう、と言うと?」

「本物のミステリーサークルは放射線が出て…」



「お前、、、あり得ない!」

研究室の中で、寝癖のひどい男が腹を抱えて笑う。

その毛量は、もう少しで十分な大きさの燕の巣を越えようとしていた。



彼はこの研究室であらゆる分野に興味を持つ学者、宝島寿限無(たからじま じゅげむ)である。

彼は31歳、この研究室にはかれこれ6年は居る。


「笑わないでください!もう!」

口を窄ませて笑う23の助手、氷山聡子(こおりやま さとこ)は雑誌を握り締める。



「だいたいなんだよその、『週刊グー』って。その嘘雑誌の受け売りじゃないよな?」

半バカにするようにして言うと、彼女は気分を損ね、積み重ねられた書類を避けるようにして廊下へ向かう。



そこに残るのは宝島寿限無ただ一人であった。

バタンとドアが閉まる音が一層静けさを感じさせていた。


「独身も寂しいものだな」

宝島は今出来上がったカップ麺を食べながら言った。


ーーー


ファミレスの昼の日差しは暖かくテーブルを照らしていた。

川島は飲んでいた紅茶を机に置き、分からない!と小さくテーブルを叩いた。

「貸出履歴もあるし、彼ーーーガビ・ゾディアックが殺害した警察官の遺体もあるのに!何も思いつかない!どうやって殺したんだ?」


川島はどうしようかと迷っていた。

どうもこうも、彼の得意分野は頭ではなく身体であるから、どれだけ情報があっても何も閃めく事など無いだろう。が、彼はただ無闇に頭を掻くばかりであった。




彼が机に突っ伏していると、入り口から足音が向かって来る。

スーツ姿の男が現れ、椅子の隣で向かい合うように座った。



「悩んでるみたいですね。どうです?進捗は」

スーツ姿の男は意気揚々と突っ伏した川島に声を掛ける。

川島は突っ伏したままあ、はい。と、適当な返事をした


「検死の結果、どのようにして死んだか分からないってよ。ただ、十数人いる内の1人は凍傷?で、もう1人は燃えて死んだらしい。あとの数名は死因不明。ただし、共通点としては身体のどこかしらが炎症を起こしていたと聞いた。」




川島は顔を上げ、少しだけ元気を無理やり出すように口を開いた。

「あとさ、ここら東京。あー、広く言えば関東に変死事件が数件起きてるらしい。それも関係あるのかもしれんな」


「ああ、分かっていると思いますが、名刺を忘れていました。一昨日から伺ってます週刊グーの者です」

スーツ姿の男は笑顔で名刺を渡す。

川島はまるでぐっすりと眠って居たのを邪魔された子供のように、目を細めながらひったくるようにバッグへ突っ込んだ。


「グーさん、良いですか、編集以外には言ったらダメですからね。僕が情報を漏らしたとバレれば警察人生が終わります」

承知しております、と良いスーツの男が封筒を渡す。

川島は横にあるバッグへそっと封筒を入れ、小さくお辞儀をする。



ーーー

「宝島博士!速報です!関東地方で変死が多発しているそうです。」

氷山は雑誌を握りしめ踊るように室内へ入った。



何だ、まだインチキ霊媒師の予言でも言いに来たのか?と言いながら振り返ると、氷山は週刊グーの一面を宝島の顔面へ押し付ける。

宝島はどうにかそれを掻い潜るように氷山に聞く。



「君がオカルト好きなのは否定しない。それは君の趣味だ。でもお前のやっている事は単なる嫌がらせだ。仏教徒に聖典を無理やり読ませるようなモンだよそれは!そもそも、君は嫌いな物が…」

「あーもう良い!オカルトを検証するのも科学者でしょ!?」

彼女は雑誌を振り回すように話していた。



「あー、ごめんなさい!」

その振り回された雑誌は書類の山に当たり、プリントや新聞などの書類が部屋中に散らばった。



「君と話すと碌な事がない。一旦外に出て……ん?」

散らばって落ちた書類の内、一枚が宝島寿限無の目に止まる。

それは、今日の新聞だった。



新聞に大きく「変死事件。」と書いてある。



彼は思わず立ち上がった。

「変死事件か。今週の研究は一部休みとしよう」


「ほ、本当ですか!?」

彼女、氷山聡子が驚いたのも無理はない。



その日、初めて氷山の馬鹿話に興味を持ったのである。






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