14、現実
「お前さ、殺しの才能すらないだろ?」
「え?」
後ろから男の声が聞こえた。
ここはどこだろう。
俺は周囲を見渡す。
セミの鳴き声が聞こえる。蒸し暑い。
汗が止まらなかった。
「こっち見ろよ?」
「なに?」
後ろを見ても誰も居なかった。
どこから声がしているのだろう。
「エイ、お前はなんで殺し屋になった?」
「それは……」
主のない声は、確かに俺の近くにいるように感じた。
俺が殺し屋になったのは……、
何故だろう。思い出せない。
分からない。と、言った方がいいかもしれない。
毎日ご飯を食べるくらい、夜になったら寝るくらい当たり前に殺し屋になっていた。
気付けばもう今年で30歳だ。
もう若くないから、今更殺し屋を辞める訳には行かないだろう。
そうだった。
俺には殺しの才能は無い。
俺はただ、無音銃の引き金を引いているだけの、ただの作業員と同等だ。
「ランクA、A、エイ」
「なんだ?」
「お前は自分がエイである事を認めている。寧ろ、それがお前のアイデンティティになっている。そのまま、生物として寿命で死んで行きたいとさえ思っているだろう?」
「そうだな。俺も、それは否定できない。今更、BやCになる気もない。第1、俺の本拠地にはBもCも、Uもいる。Fは……死んだけど。今更その名前付けを変える必要はないよ」
「違うよエイ。お前はもうエイじゃないだろ?」
「え?」
「F。お前はエフだよ。」
「お前は俺を乗り越えた。お前はエイからFに生まれ変わったんだ。おめでとう」
頑張れよ。という声が聞こえると共に、真っ白な天井が見えた。
「エイさん、起きた。もうラッキーも起きてるよ。行こう」
No.20ニコリは、寝癖の付いた髪を弄りながら言った。
「あの……」
どうした?と2人が返す。
「俺はもう生まれ変わった。今日からエフと呼んでください」
「オッケーF。よろしくな!」
「エフ!!エフ!!!」
ーーー
ガビ・ゾディアックは図書館で本を探していた。
「あったあった!!!生物学〜!化学は明日やろ」
ガビ・ゾディアックは本をパラパラと開き、ノートに軽くメモをとった。
「これ、使えるかもしれない。」
ガビは、そういって左口角を上げた。
弔中学2年、13才。
ガビ・ゾディアックは2年生になり今日で1週間目の通学となる。
当たり前かもしれないが、毎日登校している。
ここは不良の多い中学。
多くの生徒はあまり勉学に励んで居ないというのが特徴である。
ガビ・ゾディアックは小学校5年で5人殺している。
中学では今までで3人。
しかし、証拠自体は存在しないため、立件されておらず、犯罪者では無い。
ただ、多くの生徒は彼を敬遠した。
彼はこの中学の中では比較的温厚な方で、所構わず殴ったりはしないが、彼に暴力を振るうものなら、突然人が燃えだしたり、ひとりでに物が動いて暴力する者を怪我させたりと異様な噂が飛び交っていた。
彼は帰宅部だった。
彼の不思議な噂を知らない上級生2人がが1人で変えるガビに喧嘩をふっかける。
何もおかしくなかった。
この学校は、多くの不良が自分の腕試しをしようと暴力が盛んに行われている。
その甲斐あってか、ボクシングで賞を取る生徒は数人いた。
腕試しをしようとしている生徒が、まずウォーミングアップで弱そうな人間を殴るのは何もおかしな出来事ではなかった。
「何だその赤髪。ふざけてんのか?」
「お前、帰宅部かよ」
筋骨隆々な男と、メガネの図体のでかい男が彼の前に立ちはだかる。
「やめろ」
ガビは立ち止まり、冷静に返事をした。
「この俺を誰だと思っている?去年チャンピオンを録った山佐だぞ?コラァ!!!この俺にビビらないとは、いい度胸をしているなあ!!」
山佐と言う男は、腕をまくり、筋骨隆々の腕で構えのポーズをとった。
「やめろ。俺は今帰宅しているんだ」
ガビ・ゾディアックは相変わらず冷静だった。
こんな2メートル近くもある山佐と言う大男に対する態度は、とても13才とは思えない落ち着きぶりだった。
山佐は右腕を構える。
何も無いのに、山佐は急に黙った。
「どうした?山佐!!」
図体のでかいメガネが心配の声をかける。
「い、痛い!!!」
山佐は蹲り、殴るどころか、立てなくなっていた。
「お、おい!!!帰宅部のヤロー!」
図体のでかいメガネが見た時には、もうガビは去っていた。




