SF俳句 フロンティア編
宇宙開拓時代、人類は遂に光の速さを超える技術を開発するに至った
二つのゲート同士を異空間で繋ぎ合わせて一瞬で数光年の距離を移動する事ができる
そう、もう一つのゲートが行く先に在ればいう条件付きで
船長である男はゲートの輸送設置を執り行う業者
船長は宇宙船の中で冷凍睡眠により目的地までを数日で移動している感覚だが
地球では十数年が経過している
船長以外、輸送船に乗り込むクルーは全て擬人間と呼ばれる人造人間
目的の恒星系に到着した後、擬人間は監督官でもある船長を目覚めさせて
ゲートを設置し、船長は、自分が浦島太郎になる事を自覚しつつ、ゲートを使い帰還する。
ゲートの管理室に残り、見送る擬人間が一句
「凍て蝶 孤独に耐えし 夜の果て」
ゲートを通じて最初に送り込まれるのは緑化人間と呼ばれる葉緑体を持った人造人間
彼等は自分の体内で酸素を作り出すことができる
人類に代わり人が住めるようになるまで惑星を改造していくことが彼等の使命である。
過酷な環境のなか次々と緑化人間は倒れていくがその体は土にかえり
やがては植物のなえどことなってゆく。
緩慢とではあるが広がってゆく緑の地に緑化人間が一句
「火星の地 満天星の花 満開に」
火星がテラフォーミングにより人類移住可能惑星になった未来
地球に残っていたすべての核弾頭を火星の中心核で爆発させて
火星は活火山を持つ生きた惑星へと生まれ変わった今や火星は一大スパワールドとなっている
火星では即席人間と呼ばれる人造人間が
過酷な環境下での労働力として製造されているが
ips細胞を3Dプリンターで人間の形に出力する即席人間には免疫機能がなく
汎用性の高い移植用臓器が手に入るとして密猟者が後を絶たなかった
地球からTV特派員の巨乳キャスターが取材でくるが
案内するのは温泉惑星となった火星への人の流動を厳しく管理する入浴管理官の男だった
巨乳キャスターは実は弟の移植用臓器を手に入れるため豊胸手術をして胸に冷蔵庫を仕込んでいた
入浴管理官は事件を未然に防ぎ一句
「風花や 火星の陽射し 終融けず」
開拓惑星であった火星は地球からの独立戦争を起こす
地球帰属派の軍隊に対し火星独立派は数が少ない為に
変態人類を製造して兵隊としている
変態人類は特殊環境下での生態をいかようにもデザインして
大量生産できる火星独立軍の大きな戦力だった
結局は地球は遠すぎ火星との軋轢は修復出来ず
また互いに宇宙空間を挟んで本格的な惑星間戦争ができるわけもなく
火星政府の地球帰属派の降伏を持って内乱は終結した
暫くの間は互いの移住希望者のみを二度と帰らない条件で運ぶ連絡宇宙船が
火星と地球をつないでいたがやがて其れもついえた
最後の地球行の船に乗る移住者が一句
「不如帰 嘗ては鳴きし 箱庭に」
荒廃した火星ではあったが全ての人類が死に絶えてはいない。
僅かな人類は労働力として擬人間を量産し、
文明を再建しようとしたが時すでに遅く、人類の絶対数は絶滅を回避できるものでは無かった
せめて、擬人間に繫殖能力を与え、人の代わりに文明の再建を任せることにした。
本当の人類が絶滅して幾百年、擬人間は自分達が人類と信じて疑わなくなるころ。
人類と同じ事を繰り返さないように擬人間には仕掛けがしてあった。
世代を重ねるごとに一部の個体に先人類の科学技術が浮かび上がるようになっていた。
図形の浮かび上がる者はフィギュアと呼ばれるようになる
更にその中にはレアやシークレットと呼ばれる兵器利用できるようなものがあった
膨大な資源と人材と時間をかけずに先人類のオーバーテクノロジーを手にできる為に
コレクターの戦国時代が始まることとなる。
とある領主のフィギア狩りに捕まったシークレットレアのフィギアの少女
彼女の図形はロケットの設計図が描かれている
擬人間にとって地球は聖地、いずれ帰るべき場所という認識
彼女をめぐり熾烈な争奪戦が繰り広げられる事となる、密命を受け彼女を狙う隠密が一句
「地球よ 火星の山背 届かんや」