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3 別の事件 - 血に染まる闇市場

不気味な霧が石畳を覆い、月光さえ届かぬ闇が街全体を包み込んでいた。


冷たい風が街路樹を揺らし、その枝が壁に映るたび、まるで生き物が蠢いているような影を作り出す。

だが、街の喧騒は途絶えることがなく、薄暗い路地裏では、人々が低い声で密やかな会話を交わしていた。


俺が向かう先は、アルダナ市の裏社会を象徴する場所――「灰色のランタン」と呼ばれる酒場だった。

その名前の通り、入口に吊るされたランタンは薄汚れた光を放ち、その周囲には闇に紛れる影が群れている。

中に足を踏み入れると、酒と煙草の匂いが鼻を刺し、壁に取り付けられた古びた燭台がかろうじて空間を照らしていた。

ここは、異端者や裏切り者、血で染まった手を持つ者たちが集う場所。


カウンターの端に腰掛けた俺は、酒場の主人に低い声で話しかけた。

「変わった魔石について知りたい。最近、妙な噂が流れていないか?」


その一言で、酒場のざわめきが一瞬止んだ。

周囲にいた男たちが一斉にこちらを睨みつけ、闇の中で鋭い目だけが光を放つ。

酒場の主人は顔を上げることもなく、カウンターを拭く手を止めなかった。


「変わった魔石だって?そんな話、ここじゃ誰も知らねえよ」

彼の声は落ち着いていたが、その裏には隠しきれない警戒心が滲んでいた。


俺は無言のまま、小さな袋をカウンターに置いた。

袋の中身――魔石の欠片が、酒場の薄暗い光に反射して鈍く輝く。

主人はちらりと袋を見て、ようやくカウンターを拭く手を止めた。


「どういう魔石の話をしてんだ?」

「ダイヤモンドの魔石だ。それに関する噂でもいい」

その言葉を聞いた瞬間、背後に潜む殺気が一気に強まる。


俺は振り返り、薄汚れたローブを羽織った男が近づいてくるのを確認した。

彼の顔は影に覆われ、その口元には不敵な笑みが浮かんでいる。

「ダイヤモンドの魔石だと?そんな大それた代物を探すなんて、あんた命知らずだな」

その言葉に、俺は微かに笑みを浮かべた。


「命知らず……か。褒め言葉と受け取っておこう」

俺がそう返すと、男の笑みはより深くなり、背後に控えていた他の者たちが不穏な空気を漂わせた。


「その情報が欲しければ、ただじゃ教えられねえな」

彼がそう言い放つ前に、俺は懐からもう一つの袋を取り出した。

中に入っているのは、高価な魔石の欠片――だが、それは命の危険を冒して得る価値のあるものだ。


男は袋を手に取り、その中身を確認すると、満足そうに笑った。

「いいだろう。だが一つ忠告しておいてやる。そいつは危険な代物だ。触れた者すら、血に染まる運命から逃れられない。命を賭ける覚悟があるなら、夜の市場に行くといい」


夜の市場は、街の表通りから遠く離れた場所にひっそりと存在していた。

古びた石畳の広場には、粗末な天幕が張られ、その下で行われる密売の取引が続いている。

魔石や禁じられた魔法書、そして血まみれの剣が、人目を避けて売買されていた。


俺は市場を歩きながら、その空気を冷静に観察していた。

どこかで「黒い手袋」と呼ばれる密売組織が動いているはずだ――それが、ダイヤモンドの魔石を奪った者たちと繋がっている。


やがて、広場の隅で怪しい動きが目に留まった。

黒いローブに身を包んだ数人の男たちが、小さな包みを手渡している。

その包みから漂う微かな魔力の波動――確信した。

「これが、ダイヤモンドの魔石に繋がる糸だ」


だが、俺の存在に気づいた男たちは一斉にこちらを睨んだ。

「おい!」

低い怒声が響き、男たちは一斉に動き出した。


俺は闇の中で素早く動き、追手をかわしながら路地裏へと逃げ込む。

その途中、背後で聞こえる怒声と足音は徐々に遠ざかっていったが、俺の脳裏にはひとつの疑念が渦巻いていた。

この市場で見たのは、まだ序章に過ぎない――背後に潜む闇は、これよりもさらに深い。





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