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序章:件の者


「この物語はある人物の経験を元に第三者視点で再構成されたものです。また、実在するいかなる団体・人物との関連性はありません。」



※筆者は小説を初めて書くので文体が不自然な箇所が多くあります。予めご了承ください。



−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


西暦202X年 某県某所



「件の者は、この世界から逸脱したものと考えられる。」


というのも、行方不明になってからの動向を隈なく調べたが、忽然と姿を消したようにしか情報が残っていないことからそう判断した。


件の者の目撃情報が消えたある場所の監視カメラによると、立ち止まり空を見上げて何かを呟いた次の瞬間。カメラにノイズが走り、収まった時に件の者は姿を消していた。


付近のカメラの情報を確認したが、彼の姿は無かった。


ITに精通している警察の友人に情報が改ざんされた形跡が無いか調査を依頼したが、結果は皆無だった。



このことから、私は彼がこの世界から逸脱したのだと確信した。

私はNR関東(エヌアールかんとう)という鉄道会社で運転士をしている下芥遼一(しもあくたりょういち)という者だ。




件の者とは、私の会社での先輩である柏田玲司(かしわだれいじ)のことである。


彼が行方不明になる少し前。彼は会社で重大事故を発生させてしまった。


重大事故ではあったものの、会社側の不正により発生したヒューマンエラーだったので、当事者である彼には責任は無かった。


しかし、会社は当初、彼の業務上の過失を指摘した。


その結果、警察が正確な調査を行う前に精神を病んでしまい。会社を立ち去ることとなってしまった。


彼の最後の出勤日の夜、立ち去る彼に私は声をかけた。




「あなたの責任じゃない。会社が責任から逃れ、己が力を見誤った故の事故です。あなたがここを去る必要はありませんよ。」


すると彼はこう言った。


『私はもう信じられないんだよ!あれだけ人には責任を押し付けておいて、自分たちは最初からそれを背負うことをしない上の連中が!それを良しとして何も学ばないこの業界そのものが!』



暫くの静寂の後、最初に口を開いたのは私だった。



「事故は. . . . .起こるべくして起こります。その先にある未来は. . . 必ずしも皆にとって幸福なものとは限らないでしょう。それでも. . . . それでも私たちが先人たちから受け継ぎ、後世に受け継がせ、紡いできたこの道は!そう簡単に消えやしない!消えさせやしない!!」


「事故は終わりではありません。始まりなんです!こういう表現が不謹慎なのもわかってます!!しかし、今まで私たちが支えてきたこの国の方々そのすべてが、不幸だったわけでは無いでしょう?!」



『皆が君のように未来に希望を持ち、気持ちを切り替えて前を向ける訳じゃないんだよ. . .君は当事者じゃない。所詮傍観者にすぎないのさ。』



「だったら何ですか!?今まで國鉄とNRが、他の鉄道が起こした全ての事故は無駄だったと!?その事故で犠牲になった御霊も、信用の回復に尽力した先人たちの思いも、二度と同じ事故を起こさぬよう努めた者たちの努力。その全てが無意味だったと!!?そう言うんですか貴方は!!!!!!」




辺りにはまた静寂が訪れる。次に口を開いたのは、件の者の方だった。




『さて、どうだろうね. . . . . ただ思うのは、どんなに世のため人のためを思い努力しようと。それは徒労に終わるということかな。それを今回の件で思い知ったよ。』


「そんなことは. . . . . そんなことは無い!!たとえ”終わりの決まったこの世界“でも、出来るところまで抗って生きてこその人間なんだ!ただ迫りくる現実を受け入れるだけなど、家畜と一緒じゃないか!!」



『ああそうさ。それでいいのさ。人々は馬鹿みたいに適当にその日その日を生きてさえいればいい。皆がそうすれば争いすら起こらない。私の理想はそんな世界だ。』


「人類から個の特性を廃することが人類の生きる意味だと、そう言うのですか。」


『そういうことさ。人類はただ私の下に生きてさえいればいい。そうすれば、全ての者はみな平等に争い無く生きていける。』


「薄っぺらく脆く儚い理想論ですね。そんなもので人類を統率できるとでも?」


『できるさ。当然今はまだ無理だが、その力をつけていけばいいだけの話さ。長く困難な道だろうけどね。』


「そうですか、わかりました。私は貴方の考えを否定はしませんよ。ただ肯定もしません。出来るのものなら証明して下さいよ、この俺の目の前で!出来るものならば!俺は全力でそれを阻止するだろうがな!!」


『ああ、是非とも頼むよ。君こそ出来るものならね。さて、問答はこれで終い。またいつか、合うであろう遠いその日までさよならだ。下芥君。』




そう言い残すと、件の者は一人足早に走り去ろうとした。




「待って下さい!!!」


『まだ何か?私は急いでいるんでね。手短に頼むよ。』


「今更急ぐことも無いでしょう!最後にこれだけは訊かせて下さいよ!以前貴方に問いましたね!この”いずれ終わる世界“で貴方は何を望むのか。その先に何を目指すのか!!」


『ああ、それか。答えは変わらないよ。世界の存続する限り、私は人々の幸福を願う。そのためにこの命を捧げる。そこは君も同じだろう?ただ、”いずれ終わる世界“の終わった先に、何を望むのかはまだ分からないけどね。』




「そ う で す か . . . . . . . . . 分かりました。道中御気をつけて。」


私は、立ち去る彼を敬礼し見送った。その姿が見えなくなるまで。


私はこの時の行動を、今でも後悔している。殴ってでも止めるべきだったと。


それでも、そこからしか学べないものもある。結果的には、ここが私の新たな世界への扉が開いた瞬間だったのだから。




これから先、件の者は過ちを繰り返す。遠い世界を渡り歩き、あるときは学び、あるときは絶望し。

そして思い知る。自分の理想が浅かったことに。世界の全てに絶望した件の者は、世界を滅ぼす覚悟を決める。


これは、件の者を止めるため、自分の責任を果たすため、夢幻の世界を渡りゆく、一人の鉄道員の物語。


これは、世界を愛した彼女を愛し、世界に裏切られた彼女の為に、世界への逆襲を決めた男の物語。


2つの物語は交錯する。ダイヤモンドクロスの先へ待っているものは. . . . .



『神の軌跡  序章  件の者  』








いずれ終わる世界・ ・ ・ ・ それは、終わりの決まった物語。敷かれたレールが朽ち果てる、その時までの物語。


己が命尽きるその日まで、いずれ終わる世界を見届けるそう誓ったあの日から、この物語は始まったのだ。











20241105 テスト投稿

20241105 次回更新未定

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