黒影
「君ある現象を知ってるかい」
「なんですか、そのある現象って」
男二人は打ち合わせのためだろうか見終わった書類を傍に置き全く書類とは関係のない会話を始めていた
「黒影さ」
「黒影……?」
「そう、オレも名前忘れちゃったんだけどさ」
「え、肝心なところなのに」
「まぁでも聞いてよ」
「はい、現象の名前知りたかったけど」
「まぁでも黒影なんだよ最初は遠くにそれが見える
例えば駅の流れる景色の奥とか
流れる人混みの中とか
最初はそれがどこにあって誰であるとかも判別出来ないらしい」
「はぁ、でその黒影がなんです?」
「影が電車の景色で見る様なものだったのが駅のホームでみる様になったり、職場で見るようになったり、
乗ろうと思ってたエレベーターで見るようになったり
そして段々と影から人の形に変わっていくらしい鮮明になっていくのさ」
「え、怖いですね、僕にホラー小説でも書けって事ですか?」
「いやそうじゃないんだけどさ、まぁ聞けって」
「その影は自分の部屋で見るようになり
隣を歩くようになり
ずっとこちらをみる様になり仕舞いには」
「しまいにはなんです?」
「目の全体を覆い尽くすのさ
その人影で笑った顔でね」
「怖、なんでそんな話するんですか?」
「いや君にはそれが見えてる様に思ってしまってね」
「何故です?」
「心当たりないの?」
「心当たりか……でも確かにあの奥にいる女性さっきオレが電車で見たかもしれないです、担当者さんには見えますか?」ふと担当者の肌がそりかえり悪寒が全身を覆った
振り返る
担当者の視界にはしっかりとその女性が映し出されていた
「オレにも見えるよ残念だけどその黒影は他の人には見えないんだ、良かったね」
「ふぅ、なんだ」勘違いか
アイスコーヒーは氷が溶けコーヒーと水の層で別れグラデーションを作り出している。
それと相反する形で担当者の空になったグラスは
からになっており担当者は最後の一滴まで残す事なくゴゴゴと音を立てて飲み干すそしてそれらの互いにはある程度の時間の経過を表していた、
「まぁ今日はこれくらいにするか
ありがとうねこれあとで払っといて」
二人分のコーヒー代を机にジャラッと置き担当者は去っていく「あ、ちょっと」まだ話したいことあったのに
お会計の時100円少なかった
帰宅するため出口を出るおそらくドアの上についてあるであろうチャリンと言う音と共にもわっとした外の空気がオレを包み込んだ、
阻むことの出来ない太陽光がオレを刺している
目が慣れるまで目を細めていると、ある目線の奥で違和感を感じると言うより違和感がこちらを見ている、
不信感を胸に目をやると目線の奥で影を見た
その影はニヤリと笑みを浮かべている




