感傷
「昨日はごめんね迷惑かけて」
ポン。メールを送った直後
緑囲われた吹き出しの横にすぐさま既読の文字がつく
シュパ効果音を放ち君からのメールが届く
「本当だよ!びっくりしたし心配もしたんだよ」
数分考えて文字を打つ
「ごめんごめん。あの時は気が動転してたんだ」
ポン送った直後既読がつく、
シュパ「そっか、何かあったらちゃんと相談してよね」
「うん、ありがとう」ポン俺が送る
なんとなくこの会話の終わりが見えてきた気がする
シュパ「足大丈夫なの?血すごい出てたけど」
君からのはてなが付いていたことでこの会話の収束点が少し遠のいた気がして嬉しくなった。
感情を悟られないように返事を打つ
「当分はギブスをつける事になるかも」
ポン
「もう馬鹿」
君のその文字を受けて可愛いなと思う。
続けて君から2行目が届く
「私来週の日曜日、誕生日。」
「お祝いする。絶対。」
そう送りカチッと音を立ててスマホを閉じた。
病室の大きな窓から外を眺める、
外は曇天模様でビルがたくさん並ぶ街に少し寂しさをもたらしていた、外が肌寒いことを病室の暖房の効いた部屋を挟んでも感じ取ってしまう。雨が窓にポタポタと音を立て始め、5分もしないうちにざーと雨が降り始めた
ピロン、スマホが鳴る
「約束だよ」君からのLINEが届き途端ニヤけてしまう、
きっと外だったら自分の悪癖が出てたことだろう
けど幸運な事に病室には誰もいない、
「うん。約束。」
ポン。俺が送る
このやりとりの収束点に至った。
メールでやり取りした、誕生日当日
その日は快晴で
ここ数日間涼しかった天候も異常気象のせいか夏の暑さを少し感じさせていた、
臓器損傷の恐れがあり検査入院をしていた俺は晴れて数日前に医者からの許可がおりなんとか退院でき今日君をお祝いする機会を設けられていた、
左足はまだ、怪我が治っていないため松葉杖をつきながらのお祝いとなってしまって少しみっともないが会わないよりかはずっといい、君が川に来るのを待っている。
プレゼントも用意していてそれが少しのことでは壊れないのは知っているが壊れてしまわないよう慎重に持っている君が遠くから来る、レースを吉兆にした柄のあるフリフリのワンピースと下ろした髪の毛は遠くから見ても君だとすぐにわかる。そして君が何が好きなのかも手を取るように、そしてキミに「はい、これ」一言かけてキミに渡す
多分想定していたプレゼントではないだろう
だけれどキミにはきっとこれが似合うのだ
「え!?ありがとう!!大切にするね!」嬉しそうなキミを見てこちらまで嬉しくなる、
キミは少し目元がキリッとしていて自分では気づいていないがほりが深く可愛いよりかっこいいと言う言葉が実は似合うことに、そしてそれはキミの発言する柔らかな言葉選びがオブラートに包み込み可愛いと言う言葉が似合う女性に変化させているのだ、だからこそ蝶を催した紫の斑点が特徴の髪留めをキミに渡したのだ、
外側から見た初対面のイメージをそのまま伝えたくて
だけれど不器用な俺は言葉では表現できなくて
何も伝えず、ただこの髪留めを渡したと言う痕跡が功績が欲しかった
「じゃ、行こっか」大袈裟な言い訳を放つ照れ隠しをした松葉杖をつきながら歩く俺にキミは歩幅を合わせてくれる、少しよろめいたりしてダサいところを見られるがそれも笑い飛ばしてくれる、
何故だかこの日、前に会った時には感じなかった気まずさを含んでいた。
君の家につく、君の家を見上げるとほとんど俺の家と造形が変わらなかった親近感はあるがそれ以上に彩り方が高校2年の俺にはおしゃれと表現する他に例え方がない、庭に植えてある花や苗がたくさんあり、ドアの横には蔦が登っていて登った先にはランプが飾られている、ランプの先の光にはNakayama と金属の名札が照らされている。
かべも装飾の工事のためかレンガ調の絵が彩られていね
アンティークさを含めたその家は似ているが完全に自分の家とは違っていることを俺に実感をさせていた。
キミは人一人入れる位のドアを両手で開け俺を先導してくれる。「どうぞ」「ありがとう」
体重めいいっぱいで開けているドアは外れないか怖いくらいキミは傾いていて、それはキミの小ささと体重の軽さゆえにできる様な気がしていて
靴を脱ぐのも大変な俺をキミは後ろで待っていて、二人で脱ぎ終えるときみはヨイショとしゃがみ込み俺の靴とギブス用に買った大きめなサンダル松葉杖を整理して並べる、
「あ、ごめんありがとう」
「いいえ!」ぱっぱっと手を叩き汚れを払う、
俺の靴はそんなに汚かったか?少し失礼な気がする。
君と目が合いキョトンとして不思議そうな顔をする君は俺の心の声をりかいなんてできまい
けれどもそんなキミが少し笑えてきてしまう、
「なに?!もー!」君は足の短いコーギーとかポメラニアンとかそうゆう雰囲気がある。
「奥の部屋リビングだよ!」ピシっと片腕で指を刺す
きっとリビングまで先導してくれてるであろうその言葉の行先に俺は向かう、向かいたいが俺一人では片足を上げないと進めない
君は「足まだ全然平気じゃないね」と一言言う、
君の心配する声に俺は嘘がつけなかった
「うん、ちょっと無理かも。」
ためキミの方を借りる、少しの嬉しさと多大な申し訳なさがあってそんなことはキミはお構いなしに肩を貸して少し額に汗をかきながらリビングまで先導してくれた。ソファがようやく見つけ座る「ありがとう、」少しずつ丁寧にキミは肩の腕を離す、「いいえ」またぱんぱんとやる俺汚いのかな?また目が合う、
俺の心の声が届かない君がキョトンとした目で「ん?」とふじきそうな目で微笑む、俺が照れて目を逸らす。
気まずくなる。外はさっきまで晴れていたのに、気づけば前の曇天模様に戻っていた、前の、、
ふと感じたことを思い出したことを口にしてみる
「なんで今日誘ってくれたの?」
「知らない」可愛いワンピースが君の振り向きを追いかけて靡いた、雨がポタポタと降り始め、「お父さんたち大丈夫かな」と君が心配し出す。するとガシャガシャと玄関の方から音が鳴り途端に男性の声が響く「ただいまー!」
リビングの方に来ると「お!君かー!」と大きな声で歓迎してくる、徐々にさっきまでの気まずさを含んだ青春の色合いが、君のお父さんとすれ違うたびの外の青い匂いや、
少し大きすぎる声の声量で、君のお父さんの空気感に移り変わっていくのを感じた、「私手、洗ってくる」
君が外れ初対面数秒の君のお父さんとの二人きりの時間が生まれた、君のお父さんは冷蔵庫の中にジュースやらお酒やら何やら何まで閉まっていく
そんな後ろ姿が語り出す「君小説書いてるんだってね」
「えぇ、まぁ」
「小説はね正解を生み出すものじゃないよ」
「はぁ」創作してる人間は自分の価値観を押し付けることしかできないのだろうか、きっとまた押し付けられる
人に強制的に価値観を植え付けそれを義務だとでも思っているのだろうか
何も知らないお父さんが語る
「物語はね、間違いだよ、」
意味がわからない
「物語は間違いを作りその間違いに対して
多分正解はこれだと思うって言うのが作品だよ」
「一生考えちゃうのさ作り出した者が人が形が景色が今はどうなってるんだろう、あのラストはこれでよかったんだろうって完成してもね」
「いい意味で囚われるんだ」
いい意味なのだろうか
「いい意味だよ」君のお父さんが振り向き目が合う
君のお父さんの目は少し弱々しい目をしていた、
しまい終えると君が戻ってきて、「なんの話をしてたの?」と二人に聞くがそれをお父さんが「なんでもないよ、ただ監督としての心構えを話していたところさ」と語る。君のお父さんは記念しておきたいからとビデオカメラを用意して君の成長記録を撮っておきたいと準備を始めた、他にもカメラやそこに映る君のための新着のワンピースと豪華すぎる七面鳥の料理やらを準備して「冷蔵庫にはあとでみんなで食べるためのケーキがあるよ」少し豪華すぎる気がする、すると俺の脳裏に良からぬ想像と、同時に全身から稲妻が駆け巡るかのような悪寒が走った。
これは本当に誕生日祝いなだけなのだろうか、これはまるで成長記録と言うよりかは
まるでこれは最後みたいで、これはまるで明日にでも、
そんなことはあるはずがない
準備を終えパーティを楽しむこの家族の空気感やムードについていけなかった、物語を観ているような感覚
暗くした部屋に豪華な食事と君の正面にはホールケーキが置いてある蝋燭の火はホールケーキの縁をなぞるように光っていたそこに君がピースを掲げ
正面に立った君のお父さんがシャッターを切るときだけ
鮮明に部屋全体を照らしたパシャッ パシャッ
パシャッ パシャ
その何も見えなくなって、君が見え
何も見えなくなって君が見え、角度を変えて
君が見え、何も見えなくなって、
それを繰り返すその思い出記録が目の前で披露される度に
俺はどこか虚しくって、俺はその場に居なくって、俺はなにもできなくって、俺はどこかでこれを見てて
俺はここにはいなくって、俺は、おれは、僕はと
その子が楽しめば楽しむほど、お父さんが笑顔になれば笑顔になる程俺の孤独感に拍車とかけていた。
そっから先はよく覚えていない、
それを最後にして、と言うか最後にしてしまったのだろう2ヶ月の時が過ぎていた。
オレはまたこの川で君と会えるのを待っている、
ここなら会える気がして、
ここに立ってメールを送ってみる
「元気?」「今日はね、。」「前の多摩川にいるよ」
電話をかけてみる。応答なしの文字が緑く映し出す
電話をかける。応答なし
「オレ何か良くない事しちゃった?」
電話をかける
「寂しいよ」男ながら情けないことを言ったと思う
そのメールを送った直後緑く囲われた吹き出しの横に既読がついた。返信が来るのではないかと期待したが
それはすぐに裏切られてしまう
目線の奥に見える車道用の大きな橋
そこで君は車椅子に座っていた
見間違えるはずがない、何故なら僕があげたはずの蝶を催した紫の髪留めが君を綺麗に彩っていたからだ
あの悪寒は正しかったのだ




