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8 アレスレイド視点

 

 そして生誕パーティー当日になった。


 私は三日前に王城へと入った。そしてこの三日間マーガレット王女と何度か交流を持って分かったことは、私との婚約が不満だということだ。仮にも王族であるのにもかかわらず、表情を取り繕うことなくいつも不機嫌であった。たとえこの婚約が不満だったとしても相手は大国であるバーミリオン帝国だ。それなのにこの態度とは一体シャウト王家はどんな教育をしてきたのだろう。この場に父がいなくて本当によかった。もしいれば怒り狂っていたはずだ。そうしたら彼女との約束を破ることになってしまう。本来ならここはマーガレット王女とシャウト王家の非礼に対して怒るところなのだろうが、頭の中で考えていたのは彼女との約束を守ることだけだった。あれから答えを先延ばしにしている間も私は彼女のことを思い出してしまっている。



 そして生誕パーティーが始まり、私はマーガレット王女の婚約者として王女の隣に立っていた。次々と王女に挨拶に来る貴族に向けて微笑んでいたが、次に現れた男女を見て心臓が跳ねた。



(っ!…本当に彼女はあの男の『妻』なんだな)



 私の目の前に現れたのはあの女性、シルフィーと夫であるタリストン公爵だった。シルフィーは夫にエスコートされ私たちの目の前にやってきた。エスコートをされるのはパートナーとして当然のことなのに、その姿を目にしただけで胸が痛む。自分ではない男に触れている彼女を見ているのが辛かった。



(…ああ、叔父上の言うとおり私は彼女に恋をしているんだ)



 これはもう認めざるを得なかった。私の隣にいるマーガレット王女とシルフィーの夫であるタリストン公爵が熱く見つめ合っていることなど全く気にならないほど、私の意識は彼女に集中していた。



(私なら彼女に似合うドレスを贈ることができるし、他の女に現を抜かさず彼女だけを大切にするのに…)



 今日彼女が着ているドレスは彼女に似合っていなかった。本人もそれが分かっているようで以前会った時と違い背中を丸めている。

 彼女は女性の中でも長身でスタイルがいい。だから小柄なマーガレット王女が似合いそうなドレスよりも、スタイルのよさが際立つスレンダーなドレスが似合うだろう。それにドレスの色もマーガレット王女が似合いそうなピンクではなく、陽だまりのような暖かさを感じる黄色が似合いそうだ。おそらく彼女の着ているドレスは、あの男がマーガレット王女に贈るドレスのついでに贈ったものなのだろう。


 そうこう考えているうちに挨拶も終わり、パーティーの参加者たちはダンスを踊ったり談笑したり食事を食べたりと思い思いに過ごしている。そしていつの間にかマーガレット王女が私の隣からいなくなっていた。私はマーガレット王女がいなくなったことを確認してから彼女のことを探す。広い会場であってもすぐに彼女を見つけることができた。どうやらあの男もどこかに行ってしまい、彼女は一人で壁の花となっていた。できることなら彼女とダンスを踊りたいが、私はまだマーガレット王女の婚約者で彼女はあの男の妻だ。私はぐっと我慢をし、そばにいるハリスに声をかけた。



「ハリス。騎士を連れてあの二人を探して連れてこい。タイミングは任せる」


「かしこまりました」



 おそらくあの二人はお楽しみ中だろう。最後の夜だからと盛り上がっている可能性が高い。この場にバーミリオン帝国の皇太子である私がいるというのに怖いもの知らずだ。それとも何も考えていないお花畑の思考の持ち主なのか。まぁどちらにしても婚約破棄は決定事項だ。



 そしてしばらくして我が国の騎士に言い逃れができない状況で連れてこられたマーガレット王女とタリストン公爵、そしてシャウト王家を断罪し、生誕パーティーは終わったのだった。


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