その男影武者に非ず
ある日、全世界にビッグニュースが飛び込んで来た。
某独裁国の独裁者が死んだと言うニュース。
発信源は独裁者が表敬訪問という名目で胡麻擂りに行っていた、独裁国の後ろ盾になっている大国の新聞社。
独裁者が大国を訪問するのに使用した豪華な独裁者専用電車が大国に到着後故障し、帰国予定日までに直らなかったため大国の用意した電車で帰国する破目になったのが発端だった。
その事や代車を用意した大国側の意向で乗車していた大国の新聞社の単独インタビューに苛つき、帰国途中の電車の中で、インタビューの最中にも関わらずイライラしながら酒を飲んでいた独裁者が突然胸を抑えて倒れる。
直ぐに大国側の乗務員や新聞社の記者と、独裁国側の随行員などその場に居合わせた全員が拘束された。
が、独裁者が倒れた10日後拘束された記者からその事が漏れたのだ。
だがそのニュースは全世界に出回った日から数日で沈静化する。
出回ったその日に独裁国から独裁者は入院中だと発表され、数日後病院から退院する独裁者の姿を映した映像が独裁国のテレビのニュースで流されたからだ。
ただ不思議な事にテレビのニュースて映された独裁者は、死んだ事を報じる前に映されていた姿より1〜2歳若返って見えるのだった。
独裁者が倒れたと言う連絡を受けた独裁者の妹は直ぐに独裁者執務室のある建物の地下深くにある医療施設に駆け込み、医療施設を管理している医師たちに指示を出す。
「直ぐに1体出して教育しろ!」
指示を受けた医師たちは培養液の中で眠る独裁者のクローンを1体、培養液から出し教育を始めた。
独裁者の妹はその作業を見守りながら死んだ独裁者のクローンを罵倒する。
「だからあれほど酒を控えろと言ったのに、私の目が届かないところで飲みやがって、糞が!」
それから手隙の医師に命令した。
「あと2〜3体培養液から出して拘束したまま教育を施せ、何時必要になるか分からんからな」
電車に乗っていた大国側の乗務員や新聞社の記者などは拘束された後、秘密警察で見聞きした事を外部に漏らさないよう徹底的に脅迫される。
結局脅迫は失敗して記者に外部に漏らされたのだが。
独裁国側では独裁者の護衛官に扮していた独裁者の妹の腹心の部下数人を除き、帰国途中の電車から引きずり降ろされた直後、随行員全員が拘束されたまま死人に口無しとばかりに処刑された。