1話―3
お気に入り登録&評価ありがとうございます。頑張って進めていこうと思います!
気力が続く限りですが・・・
「マスター、彼等が来たよ。魔法の準備は出来てる?」
「ああ!いつでもいい!どれくらいでこの路地に入ってくる?」
蘇芳が魔法を創り終わり体勢を整えたとき、彼がいる路地の入り口あたりから
複数の声が聞こえてきた。どうやらもう目の前まで来ているらしい。
彼は創ったばかりの魔法を封じたカードを手に持って構えた。
「アスモデウス、十秒前になったら秒読み開始してくれ。
ガブリエルは敵の範囲と人数を教えてくれ。
それから、2人とも姿を見られないようにちゃんと隠れていろよ?」
「もちろん!じゃあ十秒前になったらカウントするよ」
「わかりました~。え~っとですねぇ、人数は5人で~範囲は約3メートル
ってところですよ~。それじゃ~初めての戦い、頑張ってくださいねぇ~」
そういってガブリエルは姿を消した。アスモデウスは、
「マスター、さっき創った魔法があったら負けないと思うけど・・・死なないでね?」
と言って姿を消した。
「わかってるさ。こんなところで死んでたまるかよ!それにしてもアスモデウス、
お前って話し方そんなだったか?もっと固いっていうか
冷たい感じだった気がしたんだけど?」
「そんなこと気にしなくていいの!ほら来るよ!カウント!十・九・八・・・」
そういって彼女はカウントダウンを開始した。それを聞いた蘇芳はあわてて魔法を準備し始めた。
「さて・・・『我が前に直径5メートルの法円として発動せよ』・・・準備はいいぜ。さあ、来い!」
「一・ゼロ!」
その声と同時に路地の入り口に人が入ってきた。それはさっきまで
蘇芳を追いかけていた奴らだった。彼らは蘇芳を見つけると、
「見つけたぞてめえ!もう逃がさねぇからな!」
そういいながら5人全員でまとまって近づいてきた。
そのとき蘇芳が魔法を発動させた。
「眠れ・・・ヒュプノス・グルーム!」
その瞬間、蘇芳の前の空間を乳白色の霧が覆った。その霧が消えたとき、
彼の前には5人の男が倒れていた。彼らは一様に、深い眠りに着き起きる
ことも無いように見える。その傍らを歩きながら、彼は一体なんでこんな
ことになったんだろう・・・と考えていた。
事の起こりは3日ほど前のことだった。蘇芳が学校の帰りに立ち寄った
本屋の前にある通りに、小学生くらいの女の子がたたずんでいた。
その子供は彼が本屋に入り、そして出てくるまで、おおよそ1時間ほど
その場に佇んだままであった。彼は、迷子かな?と思い声をかけてみることにした。
「君・・・どうしたの?ずっとそこに1人でいるみたいだけど、もしかして迷子?
もしそうなら一緒に探してあげようか?」
「ううん、迷子じゃないよ。でもありがとう。ずっとここにいたけど
声をかけてくれたのはお兄ちゃんが初めてだよ」
その子供は、そういいながら笑顔を見せた。蘇芳は
(周りには結構人もいるのに誰も声かけないなんて、みんな薄情なやつらだな)
などと勝手な事を考えながら、そのまま話をすることにした。
「そっか、でもどうしたの?お母さんでも待ってるのかな?
ここは車の通りが多いから気をつけないとダメだよ?」
「うんわかった。じゃあ向こうに行くね!あ、そうだ!
お兄ちゃん、これあげる。持ってるといいことあるよ」
そういいながら白い布を折りたたんだものを手渡してきた。
蘇芳はそれを受け取り、それが何なのか考えながら
「ありがとう。でもいいの?いいことがあるのなら君が持ってた方がいいんじゃないのかな?」
と言った。しかし、女の子の答えは無かった。女の子は彼が布を見ている間に
どこかに行ったようだった。彼は気づかなかったようだが、
女の子は彼以外の者には見えていなかった。見えていなかったと言うのは
語弊があるかもしれない。正確に言うならば、[認識されていなかった]
そこに存在はしているのに、眼には映っているのにわからないのだ。
そして彼が布を受け取り、女の子が消える時に彼女は、
「お前は資格を得た」
と言っていた。しかし蘇芳は全く気づいていなかった。
それこそがこの全く理解できない日常の始まりだったとも知らずに、
その布をポケットに入れて帰宅したのだった。
今回は導入部なのでちょっと短いです。