2話-3
その様子を不審に思いながらガブリエルに眼を向けると、
いつものように微笑みながら・・・・しかしどこか恥ずかしそうに
本契約の方法についての説明を始めた。
「あのですねぇ~本契約の方法はいくつもあるんですけど~
どんな感じのものがいいですか~?時間はかかるけれど一番簡単なのは~
2人とも全裸で抱き合う~って言う方法ですけど~」
「・・・・は?いや・・・全裸って・・・・意味わかんないし!」
「え~っとですね~マスターの霊子情報と~DNAの情報をわたしたちが
覚えないといけないんです~それで~霊子情報を記憶させるためには~
密着しておくことが一番重要なのですよ~」
そんなことをいいながら、ガブリエルはちょっと恥ずかしそうに苦笑しながら言葉を続けた。
「でもですね~そうやって抱き合う方法だと~
最短でも丸3日は密着していないといけないんですよね~」
「え?いま3日って言ったか?全裸で!?ず~っと!?」
「はい~、ず~っとですよ~3日間全裸でず~っと抱き合ってないといけないんです~」
その言葉を聞き蘇芳は絶句した。お互いに同意しないといけないと言うこと
だったので多少のことは覚悟していたつもりだったのだが、
3日間ずっと・・・しかも全裸でなどとは露にも思っていなかったからだ。
そしてガブリエルが続けた。
「それで~その次の方法が~キスですね~」
「キス・・・か・・・そっちは少しはまともそうだな・・・」
「それがですねぇ~え~っとこっちでいうところの~
・・・あ、こっちっていうのは人間界っていうことなんですけど~
ディープキスとかフレンチキスっていう~
舌を絡ませるようにする大胆なキスなのですよ~」
キスくらいは予想の範囲内だった蘇芳は、驚かずにガブリエルに尋ねた。
しかし彼女の答えは予想の斜め上あたりをいくものだった。
「なあガブリエル・・・さすがにキスならすぐ終わるんだろう?」
「え~っと~・・・・・・24時間以内に~合計して5時間分・・・ってことになってます~」
「ちょっとまて」
「はい~?なんでしょう~?」
そういいながら右手の手のひらで目を隠すように自分のこめかみを押さえつつ蘇芳が言った。
「どこから突っ込んだらいいか迷ってる・・・とりあえず・・・
一体誰がそんなふざけた条件を考えやがったんだ?それから・・・
契約方法ってどれでも何時間もかかるのか?」
「え~っと~契約方法は~2代目の神様がお決めになったそうです~
ちなみに~今の神様は5代目様となってますよ~。それから~時間ですけど~
早めに終わった方がいいですか~?」
そういって軽く首をかしげるガブリエルに、蘇芳は軽い頭痛を覚えながらこう返した。
「そりゃそうだろ・・・っていうかもっと簡単な方法はないのかよ・・・
だいたいなんでそんな方向へ持っていこうとするかなぁ・・・」
「それはですね~昔はそんな規定はなかったそうで~
人間と契約する魔族や天使がすごく多かったそうなのですよ~。
そのせいで~人間界の戦いのバランスが崩れて~一度滅びかけたそうなのです~。
でも実際は~あまりにも戦いばっかりしてる人間に怒った神様が~
ノアって言う人だけ残して大洪水で殺しちゃったそうなんですけどね~」
「・・・・・っていうかそういう重要な秘密っぽいものをそんなサラッと話しちゃっていいのかよ・・・」
「あ・あの・・・マスター・・・それでね、本契約の方法なんだけど・・・」
そういってアスモデウスが話しかけてきた。さすがに蘇芳がずっと
ガブリエルとばかり話しているのが気になったようだ。
「ん?どうしたアスモデウス。もっと簡単な方法があるのか?」
「えっと・・・簡単なのは簡単なんだけど・・・速さっていうか、
かかる時間はマスター次第っていうか・・・」
「あのですね~アーちゃんにお任せしてると~
説明だけで数時間かかりそうなので~はっきり言いますね~。
一番確実で簡単な方法は~性交です~」
聞いた瞬間蘇芳は固まった。心配したアスモデウスが彼の服のすそを軽く引き
「マスター?大丈夫?」と声をかけるまで数秒間はおもいっきり固まっていた。
「・・・・・・はい?」
「ですから~性交です~他の言い方にすると~
えっちとか~セックスとか~交尾とか~メイクラブとか~他にも~」
「もういいって!それ以上いうな!」
「え~っと~それから~わたしたちにとって~すごく重要なものなんですけど~
本契約をするためにエッチをしちゃうと~絶対に解約できなくて~
文字通り身も心も捧げる~って感じになるんです~。
それに~魔王クラスの王族の方や~わたしのような熾天使は~
プライドが高くて気が強い方が多いので~無理やり契約しようとすると~
魔法などで撃退されるのがわかってますから~。
そのために『お互いの同意が必要』っていったわけで~
同意してなかったら人間の方が殺されちゃいますから~」
(アスモデウスが思いっきり言いよどんでた理由が分かるな・・・)
そう思いながら恥ずかしがる様子を見せずに言うガブリエルを見て
蘇芳のほうが恥ずかしくなるのだった。しかし、その後のガブリエルの言葉に
衝撃を受け恥ずかしい気持ちも少し薄らいでいた。
「え・・っと・・・マスター・・・私たちと本契約してもらえるのかな・・・」
すごく恥ずかしそうにアスモデウスが聞いてきた。
それに対し蘇芳は、ちょっと眼をそらしながら
「っていうか何で今なんだよ・・・・まだ出会って1週間だぞ?
俺に決めていいのかよ!やり直しは効かないんだろ?それで本当にいいのかよ!」
「マスターじゃないとやだ!お願いだから私と本契約して・・・」
そう言って少し涙声になって瞳を潤ませているアスモデウスを見た蘇芳は
(契約してもいいかな・・・)
ともおもったが
「もうちょっと考えさせてくれないか?さすがに考える時間が欲しいよ。
俺にとっても重要なことだからさ」
「うんいいよ!この間みたいに私を庇ってマスターが怪我しちゃうのはイヤだから・・・
私だってマスターを守れるってところを見せてあげたいんだもん・・・
ゲーム用の仮契約の状態だと魔法どころか魔力の放出も出来ないから・・・」
そういってうつむくアスモデウスを見ているとちょっと嬉しくなってくる蘇芳だった。
これほど1人の女性から想いを寄せられることなど今までなかったからだ。
そして蘇芳は
「気にするなよアスモデウス。俺が好きでやったことなんだからさ・・・
それにさ、俺だって少しはかっこいいとこ見せないとな!
お前に愛想つかされてもイヤだしな!」
と、そんな照れ隠しをいいながら笑った。
結局この日は本契約をすることはなかったが、そんな風に自分のことを想ってくれる
相手がいるということを実感できた蘇芳だった。
ちょっと短めです。本契約の方法・・・すごい無理矢理な気もしますがこんな感じで進めて行きたいな・・・と思ってます。 感想やご意見などいただけると嬉しいです!