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プロローグ1

プロローグ【終わりの始まり】


カツカツカツカツカツカツ・・・・・

純白の廊下を一人の青年が歩いている。

彼は腰まである漆黒の髪と、夜明けの光の色のような赤い瞳をし、

見るものすべてをひきつけるような美しい貌と

均整の取れた素晴らしい体をしていた。


彼の名は『ルシフェル』そう、いわずも知れた堕天使・・・

魔王ルシファーその人であった。

しかし、現在彼が歩いている純白の廊下は魔界のものではなかった。

そこは天界にあり、神が住むとされている神殿だった。

しかも彼がいる廊下は、最上位の「神」の居室に程近い場所だった。


コンコン


「はいります」


ノックに対する返答はなかったが、神からの呼び出しを受けていた彼は、答えを待たずに入室した。


「神よ、お呼びですか?」

「ルシフェルか?」


張りのある声がそう答えた。

その部屋には一人の人物がいた。

そう、この居室にいることが出来るのは「神」ただ一人である。


「ええ、私です。なにかありましたか?」


天界を追放され、魔界に墜ち魔王となり、天界に仇なす者であるはずの彼を

神が呼び出すというのはどういうことなのであろうか。

人間に恩恵を与えるもの=善・害を与えるもの=悪

人間はそういう概念で彼らを分けているが、

実はそういうものはなく、悪とされている者達は自分の欲望を抑えられない・・・

いや、押さえることをしないから「悪」とされているのである。


「うむ、実はな・・・そろそろ人間を滅ぼそうと思うのだ」

「え?」


それはいきなりの宣言だった。


「なに、驚くこともあるまい。過去にもやったであろう?」

「ノア・・・ですか」


神はノアの箱舟の話を引き合いに出しているようである。


「あの時は一組の夫婦を残してやったな。だが今回は完全に絶滅させようと思う」

「それは・・・どういうことなのですか?」


彼はいきなりの神の宣言に動揺することもなく、至極当然のように聞き返した。


「うむ・・・人間は私が作った世界を破壊するだけであろう?」

「ええ、しかし破壊だけではなく、再生の道を模索してもいます。」

「それでは遅いのだ。あれらはあまりにも汚しすぎた。これ以上見ておっても穢れる一方だろう。

 それならばいっそ今すぐに絶滅させた方がよかろう」

「お待ちください!私は納得できません!」


これまで人間を見守り、そして時には知恵を与え、また時には天恵として諌めたりしていた彼は

どうしても納得できないでいた。


「まあ聞け・・・私はこの世界には人間はもはや不要だと思うのだ」


神はまるで「壊れた玩具は不要だ」とでも言うように人間を処分するつもりでいるようであった。


「人間にも救える者はいます!」


彼は人間を愛していた。

自らの子のように、そして自らの恋人のように・・・

しかし神は考えを変える様子はみせず、


「ルシフェルよ。お前にとって人間がかわいいのはわかる。

 しかしな、そろそろ見切りをつけてはどうだ?」

「・・・どうしてもお考えは変わりませんか?」


彼は、湧き上がる怒りを抑えつつ静かに答えた。


「まあそう熱くなるな。そうだな・・・それではゲームをしようではないか」


ルシフェルを怒らせて魔との戦いになると、

古の神魔戦争の二の舞になると感じた神は、

この争いをゲームとしないかという話をもちかけた。


「ゲーム・・・ですか?」

彼は急にそんな話をされても何のことか分からずただ聞き返すだけだった。

それに対し神は


「そうだ、ゲームだ。私が駒とするものとお前が駒とするものを戦わせて

 その勝敗でどうするかをきめようではないか」

「そのゲームに私が勝てば・・・人間を滅ぼすのはやめるのですね?」

「うむ、しかし私が勝てば宣言通り人間は絶滅させるぞ」


それは人間という種の命運がかかったゲームである。

だがルシフェルはこの勝負を拒むわけにはいかなかった、

拒めば、おそらく神はその場で人間を絶滅させたであろうから。


「ではどういうルールでゲームをするのですか?」

「お前は話が早くて助かるな。ルールは・・・そうだな。

 お互いの部下を駒として人間のサポートにつける。

 そして、サポートのついているもの同士を争わせる」


そこまで言った後で神は、ふと思い立ったように


「それから、私とお前は駒の指し手ということで参加は不可だ」


と付け加えた。


「しかし、それではあまりに多くの犠牲が出るのではないですか?」


そうルシフェルが言うと、


「そうだな、それではお互いの駒の数を限定しようではないか。

 お互いに50人・・・ではどうかな?」


それはけして少なくはないが、多すぎるという数でもなかった。


「・・・分かりました。ところで部下の人選はこちらで決めてもよろしいのですか?」

「かまわん。だがな、お互いの総力を使うとこのゲームが終わらんこともありえるのでな・・・

 もっとも力の強い部下はお互いに4人とする。それ以外は適当に選んでよい」

「そうですか・・・それでは今から部下を選ぶことにします」


そうルシフェルが言い、席を離れようとした。

その時入り口が開き、一人の女性が入ってきた。そして、


「失礼、そのゲーム・・・我々も参加させていただきたい」


部屋に入るなりそう言った彼女に、ルシフェルは一瞬言葉に詰まったが、直ぐに思い直し声をかけた。


「これは風の精霊王殿ではありませんか」

「これはこれは魔界を統べる王殿、お久しぶりですね」

「私にはルシフェルという名がありますが・・・」

「そうですね。でも私にも『シルファリア』という名前があるのですよ?」


いきなりの言葉で機先を制されたルシフェルだったが、

軽く両手をあげ苦笑しつつ、


「そうですね。無礼をお許しいただけますか?シルファリア殿」


と、場の雰囲気を崩さないように謝罪すると

軽く頭を下げお辞儀をして見せた。


「いいですよルシフェル殿、もちろん許しましょう」


そういう風に鷹揚に答えたあと、風の精霊王ことシルファリアは

とても楽しそうに笑顔になっていた。


「ところでシルファリア殿。このゲームに参加されるというのは

 どういうおつもりなのですか?」

「ルシフェル殿、いえ、参加というのは神魔どちらかに加担する・・・

 というわけではなく、あくまで中立という立場で

 参加をさせてもらおうと思うのです」

「それは一体どう言う・・・」


ルシフェルがシルファリアにそこまで言った時、彼女の背後から


「それは私が説明しましょう」


と、蒼い髪をした美しい女性が現れた。


「これはウィルアーナ殿、貴方もこられていたのですか」

「ええルシフェル様、でも私とシルファリア様だけではなくて

 四大精霊王は全員ここに来ていますわ」


そういうと水の精霊王である彼女は後ろにいた者たちに

室内へ入るように促した。

彼女の後ろには炎の精霊王であるサーカルディアと

地の精霊王であるノーグウェスがたたずんでいた。


「これは・・・四大精霊王が揃っておいでとは珍しい」


ルシフェルが言うように精霊王が神の宮殿に来ること自体が

珍しいことであった。それも今回は4人が揃ってのことである、

ルシフェルが驚くのも無理もないことであった。


「神よ、私の口から説明させていただいてもよろしいですか?」

「ウィルアーナか。よい、申してみよ」

「ありがとうございます。これは我々四大精霊王の総意なのですが、

 人間は水を汚し大地を崩します。それを踏まえ、水と地は人間に

 敵対したいと考えました。しかし、火を扱い風を友とする人間も

 います。そこで火と風は人間の味方をしようと考えました。

 つまり4人の意見が2つに分かれたのです。これが3対1なら片方に

 意見を纏めるところなのですが・・・半々に分かれてしまったので

 中間の案をとることにしました。神の側が人間の破滅、ルシフェル様が

 人間の保護・・・ということなので我々精霊側は中立ということにしようと思います」


そこまで一通り言って、彼女はルシフェルと神を交互に見た。


「それは・・・あくまで中立で不干渉ということですか?」

「いいえそれは違いますわ。不干渉なのではなく、

 契約した相手の意思を反映させる・・・ということですわ」

「つまり、契約相手が破滅の側に回れば破滅に。保護の側に回れば保護に・・・ということですか?」


ルシフェルからの質問に頷きつつ


「そういうことです。契約相手によっては仲間となることもあるでしょう。

 そのときはよろしくお願いいたしますわ」


と、そう答えた。


「なるほど、場合によっては敵にもなるのですね。覚えておきます。

 さて、神よ。私は万魔殿パンデモニウムに戻り今回のゲームに参加させる部下を

 選ぶことにします」


ルシフェルは神にそう告げると、素早くその場を離れようとした。


「ルシフェルよ。私は熾天使セラフィムであるミカエル・ガブリエル・ラファエル・

 ウリエルを出すつもりでいる。お前もそのつもりで部下を選ぶがよい。

 それに見合うだけの者がいれば・・・だがな」

「そうですね。まともに戦える部下を選んでみますよ。

 それでは、また後日」

そういうとルシフェルは足早に神の居室を離れたのだった。

初投稿になります。誤字脱字等ありましたら教えていただけると嬉しいです。

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