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王太子は長年の夢を一つ叶える

「うん、実に綺麗だ、とっても似合ってる。こんな綺麗な君を今から他の男に見せなきゃいけないかと思うと嫉妬で気が狂いそうになるくらい綺麗だよ、イヴ」


 デビュタントの当日、イヴを迎えに行った僕は僕の色のドレスを身に纏った彼女に出迎えられた。

 いつもとても綺麗だが、デビュタントという特別な日なので、クラン家の侍女ーー彼女には王宮の侍女と言ってあるーーが、是非に姫様の着付けをさせて欲しいと言ってきたので、任せたがここまで綺麗にしてくれるとは!


 こんな綺麗なイヴをエスコートできるのは嬉しい。こんな美しい彼女を僕のものと他の人間に見せつけることにも優越感を感じる。

 しかしその反面、数多の男にイヴの美しさを見せるのは気に食わない。本当に悩ましいところである。さっさと結婚して身も心も僕のものにしてしまえば、こんな身を焦がす様な気持ちもなくなるのかもしれないが、それはもう少し先のことになりそうだ。とは言っても半年以内には絶対に結婚したい!


 そのためにはまず、今日サトゥナーとイリアの愚かな兄妹を捕まえる必要がある。あの愚かな兄妹は令嬢を襲うことに味を占めたのか、大きな夜会では必ずと言っていいほど、愚かな真似をしていると報告が上がったので、恐らく今日も動くに違いないだろう。


 今日はサラの一族の人間である、トゥーリー子爵令嬢がイリアに喧嘩を売ってくれて部屋に連れ込まれる手筈になっている。正直か弱い令嬢を囮にするのは気がひけるが、サラが言うには『私には及ばないけど、その辺の騎士くらいなら10人は素手でノせる子だから大丈夫』らしい。


 しかもトゥーリー子爵令嬢は騎士を目指しているし、あの程度の輩に遅れを取るつもりはないので、奴らが襲ってきたことを公表して欲しいと言っている。反対に叩きのめしたことを実績として騎士団に所属したいらしい。とても頼もしくて良いことだと思う。


 正直待ちに待ったイヴのデビュタントの日にこんな綺麗なイヴを放って奴らの始末をしないといけないかと思うと死ぬほど悔しいが、仕方があるまい。サラと約束した件もある。


 イヴはドレスの色に不安があるらしく、「通常は白が慣例と思うのですが…」と言っている。昨日もドレスが間違ってないかと手紙が来たが、間違ってないと返しておいてよかった。


 こんなに綺麗なイヴに慣例通り白いドレスを着せたまま目を離さなければならないとしたら、今日は出席させられない。いや、出席しないとデビューしたことにならないから、ファーストダンスだけ踊って僕の部屋に閉じ込めたかもしれない。けれどきちんと婚約発表をして、僕の色のドレスを身に纏っていれば、よほどの馬鹿ではない限り余計なちょっかいはかけないだろう。とは言え、完璧に野放しにはできない。今日は僕もアスランも忙しい予定だから、リザム子爵にしっかり預けておこう。


 こんな時にもう少し信頼できる側近がいたら、と思うのだが育ててなかったものは仕方あるまい。ちなみに僕の中ではグラムハルトは信頼のおける側近ではないので、ルーク家が没落次第、手を離すつもりでいる。

 この件が済んだら信用できるものを側に置いていかなくてはならないだろう。


 これから少し面倒なことがあるものの、僕の幼い頃からの夢のひとつである『イヴのデビュタントのエスコート』が叶う。正直言って嬉しくてたまらない。ファーストダンスとラストダンスは絶対にイヴとしか踊らないとずっと思っていたのだ。可愛い、可愛いイヴ。僕の宝物。


「できればこのまま部屋に連れ込みたい」と言う僕の言葉を彼女は一刀両断で切り捨てた。

 約束があるから、手出しはしないけど、少しは恥じらってくれてもバチはあたらないのではないだろうか。


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