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王太子は傷物令嬢と結婚したい 11

 このあとイヴとの茶会の約束があったのだが、サラの日頃の素行の悪さも相まり、レイチェル夫人に思いの外長く捕まってしまい、解放されたのは、お茶会の約束から2時間以上経った頃だった。

 急いでサロンに駆けつけたが、当然のことながらイヴはいなかった。怒ってなかったか、メイドに確認したところ、「今日はそもそもお見えになっておりません」と答えると、どう言うことか問う前にさっさと部屋を出て行ってしまった。


 慌てたように侍従が、付け加える。

「本日は体調が悪いらしく、お茶会は失礼させていただきたいと連絡がございました。ですから、ご心配はいりませんよ」


「あぁ、わかった。ありがとう。お前も下がってくれ」


 部屋にアスランと2人きりになってから、問う。


「今のは、イヴに対する反感からの態度だと思う?それとも僕がサラと一緒にいることからの反感と思う?」


「さてな、どっちかはわかんねぇけどよ、あのメイドの態度はないな。どちらにせよ、エヴァがよく来るこのサロンに出入りさせたくはねぇな、部署移動か、解雇しとけ」


 僕も大概だが、アスランも大概のシスコンだと思う。気持ちはよくわかる。


「まぁ、もう少し様子を見よう。もし、彼女が婚約者がいるのに他の異性にうつつを抜かす僕が嫌いで、イヴを可哀想と思ってるなら、いい手駒になる。けれど、そうだね。そろそろ僕たちの周りの大掃除をしておいた方がいいね。

 この際だ、王太子宮でイヴに悪感情を持つものは全て排除することにしよう」


 ルーク家や母に関してはサラの協力もあり、密輸や麻薬の栽培を始めとする数多の犯罪の証拠物件を押さえてある。流石に王妃の部屋に飾ってある絵画や壺などをルーク家に送った、と言う罪に関しては、呆れを通り越して笑えたが、あの家の弱みはほぼ握った。その気になれば家を取り潰すこともできるだろうが、公爵家を潰すと色々と面倒ごとが出てくる。まぁ、あちらが僕に従うのであれば力を大きく削いだ上で使ってやってもいい。


 けれど母はだめだ。あの女はイヴにとって害悪にしかならない。いっそ、一思いに……と思ったが、エヴァが庇っていた人間でもあるーーもちろん、それは僕のためだと思うが。

 なので、ルーク家をうまく抑えられたら、母を北の離宮にでも閉じ込めてやろう。父に至っては簡単だ。母を離宮へ追いやれば間違いなく、王位を捨てて母について行くだろう。


 問題はクラン家だ。ファウストは公爵家の乗っ取りをしているが、他に特に悪事を働いていないのだ。クラン家は今後はアスランに継がせるつもりなので、大きすぎるネタは持ってきたくないが、当主を交代させ、かつ現在後継としているサトゥナーを引き摺り下ろすネタを探さねばならない。


 ファウストは財務大臣をしているから、横領や収賄をしていないか、確認したが呆れるほど真面目に働いていたようで、ここから引っ張れる様なことは何もなかった。帳簿も怪しいところはなく、執務室も綺麗に整理されていた。

 恐らく、ファウストは小役人としては上出来の部類に入るのだろうが、公爵として人の上に立つのには向いていない人間の様だった。恐らく政治がわかってないのだろう。


 公爵家の使用人や影から、サトゥナーやイリアが気に入らない貴族の令嬢を、夜会や茶会などで別室に連れ込み、手籠にしている、と報告があったが、正直これは表に出せない。


 そもそもいくら邪魔になろうと未婚の女性に手を出すのはこの国ではルール違反だ。例えば令嬢同士がキャットファイトするくらいならいいが、人を使って令嬢を傷物にすることは禁じ手とされている。これを破ったら、お互いに収拾のつかないことなるからだ。つまり、生まれてきた子が誰の子かわからないなど、社会的に混乱をきたすことになる。だからこそ、それだけはしない様に暗黙のルールがある。


 それにも関わらず、あの2人が手を出しているのは、そのルールをあえて無視しても、誰も訴えないと過信しているからか、それとも何も考えてないかのどちらかだろうが、恐らく後者と思われる。


 しかし、彼らの行為を罪として問うなら、襲われた令嬢の身元や、何をされたかを公にする必要がある。それをすると被害令嬢たちは、好奇の目に晒されることになるだろう。しかも、被害にあった中には割と大物の令嬢の名前も少なからずある。これを発表すると下手をしたらこちらが恨まれる。


 ファウストは愚かな男だが、まだ犯罪と呼ばれる様なことに手を染めていない。突き崩すならサトゥナー、イリアの兄妹だが、できるだけ他に被害を及ぼさない事案で、牢に繋ぐ必要がある。そのあとは、適当に自殺に見せかけ、牢内で殺せば良いのだが、まずはどうやって捕まえるかを考えねばならない。

 対処が遅れれば遅れるほど新しい被害者が出るのだ。早急な対応が必要だが、どうすべきか…。

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