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【12月1日 2巻発売】婚約破棄した傷物令嬢は治癒術師に弟子入りします!  作者: 三角 あきせ
一部

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傷物令嬢は絡まれる

 壁際に下がってちびりちびりとワインを舐める様に飲んでいるとーーワインを手に持っていると、疲れたのサインなので、ダンスの申し込みをされないで済むのだーー、ぱしゃりと音がした。


 顔を上げるとそこにはイリアが嫌らしい顔でにたにたしており、目の前で空のグラスをこちらに向けている。

 こう言うと意味がわからないだろうが、簡単に言うと、ワインをかけられたのだ。よりによって赤ワインを、青いドレスに!


「あぁら、ごめんなさい。手が滑った様だわ。身の程知らずの子爵令嬢さま」


 イリアの周りには3人ほどの少女がおり、イリアと同じ様な表情でこちらを笑っている。


「なーにが『ダンスを続けて踊ってはなりません、愛称で呼んではなりません』よ。それなら、自分だってデビュタントに白以外着てくるべきじゃないし、入場の順番だって守るべきじゃないのかしら。

 どちらも殿下がお許しになってることなんだから」


「そうですわね、ご意見ごもっともですわ。今後は控えさせていただきます。ご指摘ありがとうございました」


 そう言ってカーテシーをしてさっさとその場を後にする。あの子たちの言う通り正直お前が言うなってとこは確かにある。

 一応言っておかなきゃいけないと思ったから言っておいたけど、もう2度と言うつもりはない。馬耳東風、馬の耳に念仏、言っても響かない相手に何を言っても無駄であるし、こちらのメンタルが削れるだけである。

 むしろ婚約解消してくれないだろうか。あれで婚約者とか言われても、何これ罰ゲーム?としか思えようがない。


 夜会に出るたびに、あのサラのお遊戯会の様な話と周りからの嘲笑、イリアの嫌がらせに付き合わないといけないなどごめんである。


 青いドレスに赤いワインはとても目立つ。見苦しく思われないうちにさっさと帰るべきであろう。入口近くの給仕に、『ワインを溢したので帰る』旨、殿下と義父母に伝言を依頼して会場を後にする。

 

 本来であれば馬車乗り場まで誰かにエスコートしてもらうべきなのだろうが、私に知り合いは少なく、義父母を探す間ぼんやりと待っているのも見苦しい。

 馬車乗り場まで、騎士たちが廊下を見回っているので、まあ大丈夫だろうと歩を進めた。

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