傷物令嬢は前世の推しに会う 攻略対象者4
驚いて彼を見つめる私に彼はくすりと、艶やかに笑ってみせる。神殿に所属している彼は神官で、前世で言うところの聖職者に当たる役どころの彼は、驚くなかれ、所謂お色気キャラなのだ。
シルバーの髪と藍色の瞳を持つ彼は垂れ目気味の目の右下に泣きぼくろすら完備している。年は攻略対象者の最年長でゲーム開始時は24歳。今は22〜23歳くらいだろう。正直前世の私の一推しのキャラクターでもあった。
彼は裕福な商家の生まれだったが、平民には珍しく、高い魔力を有しており、貴族との浮気を疑われた母親共々家から追い出されてしまう。彼とその母親は細々と暮らすが、彼が10歳の頃母が病気にかかり、高い薬が必要になってしまう。今の彼らに高い薬を買う余裕はないが、そんな時にセオドアは思ったのだ。
高い魔力があるなら、それを逆手に取って神殿で働けば良いのではないかと。彼はその足で神殿を訪ね、自分が光属性であれば、この神殿に所属するし、もしその属性がなければ出世払いで返すから、測定して欲しいと願い出るのだ。
ちなみに説明が遅れたが魔力の有無や強弱に関しては生まれて1週間以内にお役人が水晶を持って子供の生まれた家を訪ね、子供に水晶を触らせることによって判明する。
強い光を放てば強い魔力を持っており、少しでも光ると微弱ながら魔力を持っている。全く光らなければ、魔力がないと言うことになる。
これは強い魔力持ちを国外へ出さないためになされている措置であり、平民でもセオドアの様に強い魔力を持つものが時折生まれるため、全国民に対して行っている。しかし、セオドアの様にマイナスに働く場合があるのに、それに関してのフォローがないあたりで、この制度はある意味悪法となっている状況である。
また、神殿に関しては同じ神ーー唯一神であるハーヴェーーーを奉じているが、前述の通り高い金銭を要求するため、神殿同士でも良い人材を確保するための小競り合いの様なものがある。
それをうまく利用してセオドアは神殿に自分を売り込み、まさに希少な才能の持ち主であったため、無事に神殿に所属する約束で母を助けることができたのだ。
ちなみにセオドアは我が国にいる5人の治癒術師の1人であり、神官という高い地位についている。
ゲームでの彼は神殿に所属したことにより、厳しい修行や制約を受けているにも関わらず、その辛い面を誰にも見せない人であった。
そして、チャラそうな見た目に反してきちんと制約を守っていたのに、ある時サラが事故にあったところに偶然居合わせてしまう。
本来、金銭の授受や契約がないと怪我人を癒してはいけないのに、サラに一目惚れしてしまった彼は契約なしに無償でサラを助けてしまう。神殿の制約に反してしまった彼は教会の刻印に悩まされることになるーー神殿は所属者全員に刻印を刻んでおり、制約に反したらそれが熱と痛みを持ち、反則したものに罰を与える仕組みになっていた。
自分が苦しみながらも、セオドアはサラに告白することなく、ジェイドと彼女の仲を応援する。決して叶わぬ夢を見るサラに憧れていた、と作中で彼は語っていた。イリアや他の貴族たちの圧力に負けないで頑張っているサラにかつて神殿に所属したばかりの頃の自分を重ねてしまったらしい。そして、その逆境にも負けず、光る、純真なサラをより愛した。
だんだん疲弊していくセオドアは愛するサラに弱った自分を見せない様にするため側を離れようと、神殿に閉じこもるようになる。遅ればせながら、セオドアの苦しみに気づいたサラが彼を追っていき、自分の持っているもの全てを神殿に支払い、事後契約を結んだことにして、セオドアを助ける。その後、サラは大した魔力もないが身分を捨て、労働力を提供するからと神殿に所属し、セオドアの助手ーー看護師さんの様な仕事であるーーになると言うストーリーである。
神殿所属者は所属者同士でしか結婚できないと言う掟があるため、サラはこのルートでだけ、平民になる。もちろん力を外に出さないための措置である。その掟は、相手が王族でも破られることはない。
神殿職員は前世で言うところの聖職者という立ち位置になるが、婚姻は禁じられていない。むしろ、力のある物同士の婚姻は推奨されている。魔力の高い者同士の婚姻で生まれた子は高確率で強い魔力を持っているからだ。もちろん、生まれた子はすぐに神殿の所属員として登録されることになる。
ちなみにバッドエンドはそれでもお金が足りないサラは、お金と引き換えにジェイドと結婚し、それで得たお金でセオドアを助けると言うものである。ジェイドも良い面の皮である。
セオドアルートの悪役は同じく5人しかいない治癒術師のひとり、バーバラ・ハルトである。彼女はセオドアの姉気取りの元男爵令嬢だが、魔力の少ないサラと結婚した時、次代の子供が生まれないことを心配して反対するのだ。
つまり、ジェイドルートのジェイドより真っ当な判断ができる常識的なお姉さんだ。
私がセオドア推しなのは、女たらしでちゃらちゃらしている様に見えるが、とても一途で、不器用だが、優しい心の持ち主であること、不幸にする女性がいないこと。それに面倒見のいい性格、何より見た目が好みであったのだ。垂れ目で泣きぼくろとか最高である。




