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【12月1日 2巻発売】婚約破棄した傷物令嬢は治癒術師に弟子入りします!  作者: 三角 あきせ
一部

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傷物令嬢、王太子に心理テストをする2

「ジェイ様、とある想定の上での質問なのですが、よろしいですか?」


「もちろん。お互いに遠慮や秘密はなしでいこうね、イヴ」


「例えばなんですけど、バルコニーに出た時にとある犯行現場を見たとします。そしてその犯人と目が合ってしまいました。その後犯人はジェイ様を指差し、一定の動きをしていたとします。

…何をしていたと思いますか?」


 常人の答え:次はお前だ、などの殺害予告。


「そんな行動を取られたということは、君がいる階を数えていた可能性があるね。君はそんな現場を見たのかい?それはいつ頃?君の部屋は何階なの?」


 はい、バッチリサイコパスの回答来ました。しかもサラッと私の部屋の位置特定しようとするという恐ろしさ。


「あくまで想定の話ですわ、殿下。私はその様な場面を見ておりませんので、ご安心くださいませ」


 私の答えにジェイドが黒い笑みを浮かべる。うぅ、答えも相まって本当に怖いよぅ。


「殿下?」


「ジェイ様、です」


「そうだね、次からは間違えるたびにお仕置きをすることにしようか、イヴ」


「ジェイ様に叱られません様、私頑張りますわ」

 ほほほほ、と笑ってその場を和ませようとするが、ジェイドの目は、ほの暗い光を宿している。怖い、まじ怖い。もう本当に早くお役御免にならないものか。



 また次のお茶会でも聞いてみた。

「ジェイ様、例えばなんですけど。

 部屋でそばに騎士がおらず、リラックスした状態で、横になっていたため、手元に武器がない状況で不埒者が侵入してきそうな場合、どこにお隠れになりますか?」


 常人の答え:クローゼットの中など見つかりにくい場所。


「うーん、そうだね。扉の後ろとか先制攻撃が仕掛けられるところかな?」



「では、あの。在室されていられる時に、ノックされて扉をジェイ様自ら開いた時に手にナイフを持っている男がいた場合、どうなさいますか?」


 常人の答え:扉を閉める


「ナイフを奪い取って相手を制圧するよ。大丈夫、こう見えて私は格闘は得意なんだ」


 そう言ってウィンクするジェイド。とてもよく似合うが、ウィンクの似合う男性にはろくな人間がいないと私は思っているーーお義父様は除くーー。


 今のところ全敗である。なんでよりにもよって全て模範的なサイコパスの回答をされるのだろうか。


 そう言えば、最近ジェイドが大捕物をして何某かの犯罪組織を潰した、と言うニュースが流れていた。その際に、彼が犯罪組織を追い詰めるやり方がえげつなく、尋問も今までにない、残酷なもので、周囲がドン引きしているらしいと王宮内で話題になっていた。やはりサイコパスなのだろうか?


 いや、諦めてはならない。私も面白がってこの診断をしたことがあったが、いくつかはサイコパスの回答と一致したことがあった。もう少し、もう少しだけ続けて聞いてみよう。


「ジェイ様、例えばですが、執務室に盗聴魔法が仕掛けられたとします。その場合犯人は誰だと思いますか?」


常人の答え:犯罪者やストーカー。


「もちろん、私の側近達かな?イヴ、君の部屋やプライベートルームに何か仕掛けられたの?」


「いいえ、仮定の話です」


「きちんと盗聴魔法対策をしているかい?一度君の屋敷を訪ねさせてもらいたいな」


 後日、殿下がリザム子爵邸を訪れた後、いい笑顔で帰って行き、後日、防犯対策がばっちりなされた家を下賜された。


 また、別の日に質問してみた。懲りないということなかれ、少しでも安心したいのだ。


「ジェイ様、不敬かもしれませんが、例えばの話です。

 一緒に食事をする相手に毒を盛って殺さなければならないとした場合、ちなみに食事はいつもの様に、前菜からデザートまで順番に運ばれてきます。どのメニューに毒を盛りますか?」


 常人の答え:メニューを特定する。


「すべての料理に少量ずつ盛るかな。それも出来るだけ毎日」


 彼と食事をした後は解毒薬を飲むことにしよう。


「あの、最後の質問です。目の前に殿下ご自身の手で誅しなければならない相手がおり、目の前で崖から落ちそうになっています。相手は棒のような物に捕まっています。崖から落とすためにどうしますか?」


 常人の答え:足で踏む。棒を切る。


「そうだね、いつまで耐えられるか見ているのも楽しいけど、一本ずつ指を離していくのも面白いかもね?」


 前世と暮らしや常識が違うのか、聞いた答えは全て、前世的には、アウトだった。10何問か設問があったが、刺激的だったことしか覚えていないので、正確には分からないが、彼は真正ではないだろうか。


 後いくつかぼんやりと覚えているものもあったが、これ以上聞きたくない。心の平穏どころか、逆にさらに恐ろしくなった。聞くんじゃなかった、心から後悔しているところにジェイドがにっこりと微笑んだ。


「ところでイヴ、お仕置きが必要なようだね?こちらへおいで?」


「ひぃ!ごめんなさい、どうかお許しを」


「ダメ、こっちにきて」


 恐る恐る近づいた私をジェイドは自分の膝の上に横抱きにして乗せる。

 そして、彼の端正な顔が近づいてきて前回と同じ様に、私の唇に彼のそれを重ねた。ぎゅっと口を閉じている私にジェイドは微笑む。


「イヴ、口を開けて。ぎゅっと閉じてはダメだよ」


「ジェ、ジェイ様これ以上は」


「いいから、口を開けて。イヴ?」

 

 恐る恐る口を少し開いたところで再度ジェイドの唇が降ってきて、少し開いた口から彼の舌が私の口内に入ってきた。


 私のファーストキスに続いてセカンドキスまで奪われて、しかも2回目でもうディープなんて、と思ったのも束の間、なんというか、彼がキスがうますぎる。


 ん、とか、あ、とかはしたない声をあげてしまうほど、気持ちがいい。途中から頭がぼーっとしてくる。

 もっとして欲しい、という私の意思に従い、唇が開く。その隙を逃さず、ジェイドの舌は更に深く入ってきて舌を絡めたり、歯列を辿ったりと忙しく動く。

 キスでここまで気持ちよくなるなんてと思うほど、彼のキスはうまく、体の力が抜けて、彼にもたれかかるように体重をかけてしまう。

 不敬だとは思うものの力が入らない。その日のお茶会の後半はジェイドにキスを何度もされ続けることとなり、自宅に帰ったと同時に熱を出して寝込んだことは言うまでもない。

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