第97話 『 怪物狩り 』
ヤ バ い 。
……俺の直感が最大音量で警音を鳴らしていた。
(……コイツは間違いなく強い)
それがリゼッタに対する感想であった。
「レイワンチャン、ゴメンねぇ」
リゼッタの足下が陥没する。
「コイツをコロシタアト二、チャンとアヤマルから」
「――」
――リゼッタが目の前まで迫り、既に拳を振りかぶっていた。
(――まともに受けたら駄目だ!)
俺は身を翻して、リゼッタの拳をかわす。
――轟ッッッッッッッッッッッッッッッ……! リゼッタの拳の先数十メートルが拳圧によって消し飛んだ。
「――っ!」
……避けて良かった。
「イイ勘シテるじゃないのォ!」
リゼッタは狂笑し、更なる拳を繰り出す。
「クソがっ!」
――俺は拳を横から弾き、俺の背後が消し飛ぶ。
「まだマダァ!」
更に降り注ぐ拳の雨。
「――っ!」
弾く。
弾く!
弾き続け
――リゼッタが巨大な顎を開いた。
「 !? 」
破 天 光
――閃ッッッッッッッッッッッッッッッ……! 特大の閃光がリゼッタの巨大な顎から穿たれた。
閃光はその先にあるもの全てを呑み込み、灰に変える。
人も、家も、巨壁も全てが消し飛んだ。
……あっ、
「危ねェー……」
俺は咄嗟に脇へ跳んでいて難を逃れていた。
(……打撃も光線も火力が桁違いだな)
今まで何度も修羅場を潜ってきたし、強敵ともあいまみえてきたが、火力だけなら間違いなく最強であった。
「だが、単調だな」
幾ら火力が桁違いでも、当たらなければどうということはなかった。
「さあ、攻めていこうか」
今度は俺からリゼッタに飛び掛かる。
(俺の打撃が通じないのは先の戦闘で折り込み済みだ。だから――……)
――殺るならそれ以外で殺る。
「火遁――……」
火 龍 熱 焼
――轟ッッッッッッッッッ……! 業火がリゼッタに襲い掛かる。
「その程度ノ炎ナンテ――……」
リゼッタは振り払いも、避けもしない。
「――破ッッッッッッ……!」
――吐き出した空気だけで業火を吹き飛ばした。
「 それ囮 」
縮 地
……からの。
――ゴッッッッッッッ……! 膝蹴りがリゼッタの顔面に叩き込まれた。
「……っ、ダカラ効かないッテ」
「 知ってるよ 」
――刺ッッッッッッ……! 俺は間髪容れずにリゼッタの両目にクナイをぶっ刺した。
「だから、粘膜を突く」
「アアぁぁぁァァぁああぁぁあァァァぁぁァァァッッッ……!!!」
リゼッタは激痛に悲鳴をあげ、俺を振り払う。
「中途半端な無敵で図に乗るなよ、あっさり死んじまうぜ」
「ァァァぁぁァァァッ! イタイィ! イタイよぉッッッ……!」
激痛に悶えるリゼッタに俺は〝鬼紅一文字〟を片手に歩み寄る。
「じゃあな」
俺は地にひれ伏すリゼッタの前で立ち止まり、〝鬼紅一文字〟を振り下ろす。
――斬ッッッッッッ……。リゼッタの強靭な首は容易く斬り落とされた。
怪物の顔は大量の血液と共に地面に落ちる。
紅の刀身は鞘に納められる。
「 油断タイ敵ィ♪ 」
――ドッッッッッッッッ……! 俺の横腹がリゼッタの強靭な手によって抉られた。
「――なっ!」
「あり? 浅カッたァ?」
……リゼッタの生首が喋った。
「……何で、生きてやがるっ」
そう、リゼッタの躯は首から上を失って尚、立ち上がっていた。
「 怪物ダカラぁ 」
「――っ」
人間は頭を失えば死ぬ。
人間はこれだけの血を流せば死ぬ。
しかし、リゼッタは死なない。
普通の価値観に収まらない。
常識の範疇外の生命力。
――故に、怪物。
「アンタにリゼッタチャンは殺セナイ!」
「……」
リゼッタが高らかに勝ち誇る。
「さあ、絶望したカナぁ!」
「……」
俺は何も言い返さない。
「アンタはココで死ぬンダよ!」
「 死なない 」
――俺は静かに笑った。
「姫を助けだすまでは絶対に死ねない」
「――言ってロッッッ! クソカトウシュゾクがぁッッッ……!」
リゼッタが圧倒的な初速で飛び出す。
「……堪えろよ、俺の体」
俺は静かに〝鬼紅一文字〟の柄に手を添える。
(……リゼッタの躯は生命力が異常なだけで再生する訳じゃない)
……治癒の力はペルシャにしか使えなかった。
(だから、生命力の限界まで殺せば……)
――殺せる。
「クタバレェェェェェェェェェェェェェェェェッッッ……!」
「連刀必殺――……」
振り抜かれる拳。
開放される刃。
狂気。
静寂。
……二つの影が交差した。
「……〝紅桜〟」
――斬ッッッッッッッッッッッッッッッ……! リゼッタが粉微塵に斬り刻まれた。
「……桜前線、桜花爛漫」
「……がっ……あっ…………」
鮮血が飛び散る。
「真紅乱舞、嗚呼美しきかな」
それはまるで……真っ赤な桜の花弁が舞い散る様のようであった。
「……死にたく……な……………………」
……残っていたリゼッタの生首も灰となり、風に流されていった。




