第94話 『 ブレイド・スティール 』
「……刀の色が変わった?」
……先程まで銀色であった大剣の刀身は赤く染まっていた。
(よくわからないがこの破壊力はやベェな)
俺は横目で瓦礫の山を見渡し、冷や汗を滴らせた。
(……あんなのを遠距離から連発されたらキツいかも
――そこで気づく。
「――って、いねェじゃねェか」
――背後に殺気を感じた。
刃が空を切る。
俺は金槍で刃を受け
――斬ッッッッッッ……。金槍の矛が羊羮のように容易く切断された。
「――なっ!」
俺は反射的に半歩下がる。
が
――斬ッッッッッッ……。かわし切れずに肩を切り裂かれる。
「――っ!」
危なかった。後、一瞬反応が遅れていたら腕一本持っていかれていた。
俺は後ろへ跳び、バルドと距離を置く。
「……今の切れ味。てめェ、やりやがったな」
鋭い眼光でバルドを射抜く。
「それ――俺の〝鬼紅一文字〟じゃねェか」
「……」
〝鬼紅一文字〟は俺の腰に携えてあるが、奴の大剣も間違いなく〝鬼紅一文字〟であった。
「……正解だ、よくわかったな」
「俺が打った刀だからな、嫌でもわかるさ」
バルドの称賛の声に俺は自嘲気味に笑った。
「 〝剣盗士〟 」
「……」
「一度見た武器を全て再現する〝奇跡〟だ」
……武器を無限に模倣する力。バルドはその力で〝鬼紅一文字〟を模倣したのだ。
「貴様の刀は実にいい。俺が見てきた中で最強の一振りだ」
「そりゃあ、どーも」
その最強の一振りを模倣されてしまったのだ、正直笑えない話である。
「感謝するぞ、伊墨甲平。お陰で俺は更なる高みへと登れた」
バルドが大剣を構える。
「もう十分だ。貴様はここで死ね」
風 刃
――見えない刃が俺に放たれる。
「――っ」
俺は脇へ跳び、紙一重で〝風刃〟をかわす。
――斬ッッッッッッッッッ……! 遥か後方にあった巨大な城門が一刀両断された。
「……クソッ」
瓦解。城門が崩れ落ちる。
「いい反応だ! だが、これならどうだ!」
乱 斬 流
――バルドが虚空を滅多斬りして、無数の〝風刃〟が襲い掛かる。
「――やべェ」
……これはかわし切れねェ。
――轟ッッッッッッッッッッッッッッッ……! 全てを切り裂く見えない刃がその先にある物を全て凪ぎ払った。
……………………。
…………。
……。
「……終わったか」
……バルドが静かに呟く。
「貴様との戦い、存外楽しかったぞ」
それだけ言ってバルドが俺に背を向け
「 土遁 」
――瓦礫の山から一本の腕が飛び出した。
「 〝土隠れの術〟 」
――そして、俺は地面から飛び出した。
「……馬鹿なっ、地面に潜ってかわすとはっ」
「紙一重だったよ、マジで」
俺は金槍を片手にバルドに飛び掛かった。
「無駄だ、返り討ちにしてやろう」
バルドが深紅の大剣で迎え撃つ。
「そうだ、忠告忘れてたわ」
俺は構わずバルドに飛び掛かる。
「今度こそ死ぬがいい」
バルドが大剣を振り抜
「 それ、あまり使わねェ方がいいぞ 」
――流血。バルドの全身から鮮血が飛び出した。
「死ぬぜ」
「――なっ」
一瞬の隙。
走る金の軌跡。
――斬ッッッッッッッッッッッッ……! 俺は金槍でバルドの首を一刀両断した。
「……って、もう遅かったか」
「――」
舞い散る鮮血。
弧を描き落ちる鉄兜。
「……〝超越者〟一人目撃破、だな」
……月光が俺と崩れ落ちるバルドを照らした。




