表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

95/262

 第93話  『 No.7 』



 「……やっと静かになったな」


 ……俺は死体の絨毯の上で一息吐いた。


 (……とはいえ、少しばかり騒ぎすぎたな)


 これだけ大騒ぎになれば、軍部からの増援は免れないであろう。

 そして、その中には――……。



 ――ベルゼブブ小隊。



 ……クロエさんを殺し、姫を拐った奴等がいる。


 「……まっ、素直に待ってはやらんがな」


 まだ来ていないのなら、今の内に王宮内を散策した方がいい筈であろう。


 「……」


 俺は正面から堂々と王宮に入る。

 観音開きの扉を開き、俺を迎えたのは――荘厳で広大な広間と大階段であった。


 「……誰も居ない」


 少しは警備の者が残っているものかと思っていたが、無法者を出迎える者は皆無であった。

 明かりも消え、ただただ不気味であった。


 「……」


 俺は周囲を警戒しながら歩を進める。


 (……兵士が戦っている間に皆、裏口から逃げたのか?)


 その時間は十分にあった。


 (その中に姫もいるのか?)


 ならば、この宮殿にいるのは時間の無駄であった。


 「……」


 しかし、確信はない。故にもう少しだけ姫を捜すことにした。


 「……」


 階段を登り、長い廊下を歩く。

 静寂した宮殿に俺の足音だけ響き渡る。


 「……………………来たな」




 ――俺の真上にあった窓が弾け飛び、窓の欠片が雨のように降り注ぐ。




 「……随分と派手な登場だな」

 「……」


 窓を蹴破り、俺の前に立つ全身鎧の兵士に俺は構える。


 「……」


 しかし、鎧の兵士は何も喋らない。

 静かに身の丈程ある大剣を構える。


 「余計な御託はなしで殺ろうってか」

 「……」


 俺も〝九尾‐槍型〟を構える。


 「……」

 「……」


 ……無言で睨み合う俺と鎧の兵士。



 ――消えた。



 ……鎧の兵士が消えた。


 (――高速移動?)


 ――しかし、俺の〝耳〟は空気の流れを読み、迫り来る〝何か〟を捉える。


 (これは高速移動じゃない!)


 俺は背後に〝九尾‐槍型〟を振り抜く。



 ――金属の衝突音と共に巨大な大剣と金槍が交差した。



 「……姿を消す力だろ、それ」

 「……」


 俺と鎧の兵士は鍔迫り合いをしたまま睨み合う。


 「 その程度で受け切れるとでも? 」


 ……初めて鎧の兵士が口を開く。低い男の声であった。


 「――っ」


 ――床に亀裂が走り、窓にひびが走った。


 (――重ッ)


 鎧の兵士が力を込めたのか僅かに押される。


 ――が、


 「……押し切れない?」


 俺も簡単には退かない。力を込めて、交差する大剣を押し返す。


 「……っ」

 「……っ」


 俺達は微動だにしない。しかし、床や窓や天井が耐えきれず崩壊していく。


 「……名を聞こうか、暗殺者アサシンよ」


 「ハッ、てめェが先に名乗りやがれ」


 男の問答に俺は挑発的に返す。


 「いいだろう、俺は――バルド=ベルゼブブ」


 ……人型のベルゼブブ――つまりそれは?



 「 序列は第七位だ 」



 ――〝超越者オーバーロード〟。


 ……ベルゼブブ小隊が誇る最強の七人の戦士。


 「いいぜ、俺も名乗ってやるよ」


 崩れ落ちる天井。

 弾け飛ぶ窓。


 「 伊墨甲平 」


 破片が光りの雨のように降り注ぐ。


 「姫を取り返しに来た……!」



 ……俺の足下には閃光弾が転がっていた。



 「……っ」



 ――閃ッッッッッッッッッ……! 夜の宮殿が目映い光に包まれる。



 一瞬の隙。


 手離される金槍。



        刹



 ――斬ッッッッッッッッッッ……!



        那



 ……一瞬の内に持ち換えた〝鬼紅一文字〟による一閃がバルドに炸裂した。


 (……浅いか?)


 しかし、バルドは半歩退いていたのか直撃を避けていた。


 (流石は〝超越者オーバーロード〟だ。ギャロンのように一撃とは行かねェな)


 俺は血塗れの腕に握られた〝鬼紅一文字〟を鞘に納め、改めてバルドの様子を窺う。


 ――静


 ……バルドはただ静かに突っ立っているだけであった。


 (……無反応、逆に不気味だな)


 俺は〝九尾‐槍型〟を構え直して、警戒心を高める。


 「……久し振りにいい一撃を食らった」


 バルドは静かに血塗れになった自身の身体を見下ろし、静かに呟く。


 「だが、今ので仕留めきれなかったのは良くなかったな」


 バルドが大剣を構える。


 「……っ」


 ……嫌な予感がした。


 「さて、今度はこちらの番だが」


 (――ヤバい)


 「避けた方がいい」


 バルドが大剣を虚空に振るう。

 俺は咄嗟に身を屈ませる。


 「 死ぬぞ 」



     風     刃



 ――俺の真上に何かが通り抜けた。


 (……何が起きた!)


 一瞬の静寂。


 凍りつく時間。



 ――宮殿が傾いた。



 (――違う! これは宮殿が傾いたんじゃない!)


 奴は魔力を斬撃に乗せて飛ばしたのだ。そして――……。



     瓦     解



 ……宮殿が完全に倒壊した。



 「……っ」


 ……たったの一振り。


 ……たったの一振りで広大な宮殿を一刀両断しやがった!


 「いい! 実にいい!」


 瓦礫の上でバルドが初めて大きな声を出した。


 「貴様の刀、実にいいぞ!」


 更地となった宮殿。


 対峙する俺とバルド。



 ……月光に照らされたバルドの大剣が紅く煌めいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ