第87話 『 弱肉強食 』
「食ゥゥゥわァァァれェェェるゥゥゥゥゥゥゥーッ!」
……狼の群れに襲われる俺は絶叫しながら森の中を駆け抜けた。
「馬鹿野郎、逃げるな! 戦え! そして、お前が食え!」
「無理だよーーーッ!」
隣を走る師匠が俺に激を入れるも、俺はそれどころではない。
「無理でも戦え! さっき言ったよな、忍術を使えるようになるコツを!」
「……っ!」
――30分前。
「忍術は〝氣〟と呼ばれる力を消費して発動する」
師匠は俺を家に招き、忍術について教えてくれていた。
「更に〝氣〟を丹田に集め練り上げる……ちなみに、この練り上げた〝氣〟を〝練氣〟と言う」
師匠は自分の腹をポンポン叩いてみせた。
「そして、その〝練氣〟を全身に巡らせ、口や手等、術を出したい場所に再度〝練氣〟を集中させ、最後に解放する……これが忍術発動までの道程だ」
「……知ってるよ、そのぐらい」
……それをやって今まで出来ていなかったのだ。
「……知っているか。なら」
師匠は不敵に笑んだ。
「その〝氣〟が何で出来ているかも知っているのか?」
「……」
……知らなかった。忍術道場の先生も教えてくれなかったからだ。
「〝氣〟とは則ち生命力そのもの……それを蓄えるということは?」
「…………食事?」
「その通りだ」
師匠が何処から途もなく干し肉を出し、かぶりつく。
「飯と言っても野菜じゃ駄目だ、肉を食わなきゃ〝氣〟は増えない……お前、肉はよく食うか?」
「……ウチ貧乏だから滅多に食べない」
「だろうな」
師匠が干し肉を呑み込み、説明を続ける。
「お前が忍術を使えなかった原因は肉を食っていなかったからだ。〝氣〟が少なすぎれば幾ら〝氣〟を練り上げようと、全身に張り巡らせることが出来ないから術は発動しない」
「……」
……それだけ、
……たったそれだけのことで、今まで忍術が使えなかったなんて。
「……じゃあ、肉を食えば俺にも忍術が使えるってこと?」
「まあ、スタート地点には立てるな」
「……」
……充分だった。今までずっと底辺で足踏みしていたのだ、ゼロスタートなんて望むところであった。
「俺、肉を食べるよ!」
「いや、無いけど」
「……………………えっ?」
そっかー、無いのかー……って!
「この流れで肉無いの!」
「いや、あるがこれは俺の物だし」
「ケチ! ちょっとくらい分けてよ!」
「ちょっと、何を言っているのかわからない」
どうやら肉はくれないようであった。
「じゃあ、自分で捕れってこと?」
「おっ、理解が早いじゃないか、偉いぞー」
「……」
まあ、弟子入りしている身だし仕方ないのかもしれない。
「狩りも修行の一環だと思ってやれ、以上」
「……へーい」
俺は不満混じりの返事をして、師匠の家を出る。
「あっ、ここから西に行ったら動物が集まる場所があるからそこに行くといいぞ」
「うーす」
師匠から助言を受けた俺は家を出て西へ向かうのであった。
……………………。
…………。
……。
――そして、現在。
「動物って狼の群れじゃないかーーーッ!」
俺は早々に姿を眩ませた師匠に文句を言う。
『グルアァァァァァッ……!』
縄張りに近づいた俺を狼の群れが猛追する。
「……あのアホ師匠、後で泣かすっ」
とはいえ、今は師匠に毒づいている余裕はなかった。
(……修行の内容は滅茶苦茶だけど強くならなきゃ駄目なのも当たってる)
狼は恐い。
こっちは一人で相手は沢山。
――だけど
「…………決めたんだ」
強くなるって、
「忍者になるって決めたんだ……!」
――俺は急停止して、狼と向かい合った。
「……掛かってこいよ、犬っころ」
俺はクナイを構える。
「天下一の忍者候補生! 伊墨甲平が相手だッッッ……!」
『グルアァァァァァッッッ……!』
俺は涙目になりながらも飛び出す。
狼の群れが一斉に飛び掛かる。
……………………。
…………。
……。
「……遅かったな」
……一時間後、師匠の家に帰ってきた俺に投げ掛けた言葉がそれであった。
「……へへへっ」
俺は笑いながら玄関で倒れた。
「……一匹……捕れたぞ」
……俺の後ろには網で捕まり、泡を吹いて気絶している大人の狼が一匹いた。
「うむ、上出来だ」
「へへっ」
満身創痍な身体。
汗だくで泥だらけな服。
……まあ、俺の修行は毎日こんな感じであった。
『 謝罪 』
二日間に及ぶ更新停止、誠に申し訳御座いませんでした。
言い訳になってしまいますが、我が家のWi-Fiが不調となり、復旧するまでガラケーからの投稿が出来なくなっておりました。
これからも度々このような事態が起きるものと思われますが、どうか生暖かい目で見守っていただければ幸いです。
by.三橋明




