表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/262

  第7話  『 セシルの発情期♡ 』 《♡》



 「……セッ、セシルさんっ」


 ……俺のベッドに下着姿で潜り込むセシルさんに俺は戸惑った。


 「しぃー、誰かに気づかれちゃいますよ」


 セシルさんは口元に人差し指を当てて、俺の声量を下げさせる。


 「……わかりました(小声)。しかし、確認させてください(小声)」

 「んー?」


 小首を傾げるセシルさんがただただ可愛らしい。


 「 何故、俺のベッドに? 」


 ここは俺の部屋で、俺のベッドの上であった。今日は会ったばかりのセシルさんがいるような場所ではなかった。


 「んー、それはですねー。今日の甲平様が格好良かったからですよ」


 セシルさんはとろんとした眼差しを向け、俺の質問に答える。


 「クリス様との戦いやその後の騎士団に啖呵を切る姿、本当に格好良かったですよ」

 「そっ、そうですか」


 セシルさんのような美人さんに褒められると何だか照れ臭かった。


 「格好良くて、本当に素敵で、だから私はそんな甲平様の下へ――……」



 ――さわっ……。セシルさんの白くて綺麗な手が俺の太股に触れた。



 「 夜伽に参りました 」



 「……」


 ……………………………………………………………………………………………………………………。


 「……えっ?」


 ……俺は硬直した。色々なところが。


 「夜伽ってセッ」

 「はい♡」

 「……」


 ……この国の貞操観念はどうなっているんだ。

 俺とセシルさんは今日会ったばかりだぞ。それなのに事に及ぶのは如何なものだろう。

 しかし、セシルさんを抱きたいと思う俺もいて、簡単にセシルさんを突っぱねることはできなかった。


 (……てか、めっちゃいい匂いするんですけど)


 花のような香りが俺の鼻腔を刺激する。


 「……いや……ですか?」


 ――さわさわっ


 「~~~~~~~~っ!」


 嫌な訳がある筈がなかった! 何かもう色々な体裁とか投げ出してセシルさんを抱き締めたかった!


 (……やべえ、何か頭クラクラしてきた)


 これもセシルさんの魔性によるものなのか、俺の思考はぼんやりとしていき、視界はセシルさんしか見ることができなかった。


 「……わたし、魅力ありませんか」

 「――っ!」


 魅力しかないよ!


 「……えーと、あのー」

 「……」


 そして、俺がそうこう悩んでいると……。


 「 えいっ 」


 ――トンッ……。俺はセシルさんに意図も容易く押し倒されてしまった。


 「ふふふー、押し倒しちゃいましたー♡」


 俺の上半身はとても官能的な感触に支配された。

 すべすべな肌に、柔らかな胸や太股の感触が電撃のように脳髄に走る。


 「 早くシましょ♡ 」


 耳元をくすぐる甘い吐息と言葉が俺から考えることを奪う。

 彼女の細く白い手が俺の身体を這う。

 自ずと生理現象が下半身に現れる。

 それは抑えようとも抑えきれるものではなく、寧ろ抑えようと意識すればする程にそれは自己主張をした。

 当然ながら、密着しているセシルさんがその徴候に気づかない筈もなく……。


 「 あらあらー 」


 色情に瞳を潤ませて、妖しげに笑んだ。


 「我慢は駄目、ですよ♡」


 ……そして、セシルさんはおもむろに俺の下着に手を掛けた。



  そ の と き だ 。



 ――甲平っ



 ……姫の声が脳裏を過ったのだ。


 「――」


 ――気づけば


 気づけば俺はセシルさんの手を掴んでいた。


 「すみません、俺、セシルさんを抱けません」

 「……」


 俺はハッキリとセシルさんに対する拒絶の言葉を吐き出した。


 「セシルさんはとても魅力的な人です。だけど、どんなに魅力的でも好きでもない人を抱くことはできません」

 「……」


 過ってしまったのだ。

 悲しそうに俯く姫の姿が……。


 (……姫と俺は主従関係でしかない。だけど)


 これはただの直感だ。

 俺が今、欲望に負けてセシルさんを抱いてしまうと姫が悲しむ気がした。

 俺は姫の忍だ。姫を悲しませるようなことなどあってはならなかった。


 「だから――……」



 ――バンッッッッッ……! 俺の部屋の扉が乱暴に開かれた。



 「甲平くん! 大丈夫っ!」


 扉の先からペルシャの声が響いた。


 「何だ! 何だ! 何だァ!」


 ……もう訳がわからなかった。


 ……………………。

 …………。

 ……。


 「セシルさんが淫魔の家系だってェッ!?」


 ……ペルシャの説明を受けた俺はすっとんきょうな声を漏らした。ちなみに、セシルさんは下着姿で正座していた。


 「そう、セシルさんは淫魔の家系で満月の夜になると性欲が高まって、無意識男の子に襲いだすんだよ!」

 「すみません、本当にすみませんでした」


 ペルシャの説明にセシルさんが俯きながら謝り続けた。


 「……まあ、そういう家系なら仕方ないのかな。本人も反省しているようだし」


 こんなに猛省しているセシルさんを責めるのは気が引けた。


 「ごめんね、わたしもちゃんと鍵を閉めるよう言っておけばよかったね」

 「気にすんな。俺も不用心すぎた」


 部屋への侵入を簡単に許してしまったのは忍として恥ずべきことである。俺自身も今後の生き方について改め直さなければならなかった。


 「それに明日も早い。今夜はもう寝ようぜ」

 「そうだね。ほら、セシルさんも部屋に戻るよ」


 俺は大きな欠伸を溢し、ペルシャはセシルさんに部屋へ戻るよう促した。


 「今晩は本当に申し訳御座いませんでした」


 セシルさんは何度目かの御辞儀をして、先に戻ろうとしているペルシャの背を追う。


 「――あっ」


 しかし、セシルさんは何かを思い出したのか、俺の方に戻った。


 「セシルさん?」


 セシルさんはくいっと耳元へ口を近づけた。



 「 甲平様が格好よくてドキドキしたのは体質とは関係ありませんよ♡ 」



 ――セシルさんがぼそっと呟いた。


 「はえ?」

 「おやすみなさい、良い夜を」


 俺が問い質すよりも早く、セシルさんは俺に背を向けて歩きだしていた。


 「……セシルさん」


 俺は可憐な後ろ姿を見つめ、彼女の名前を不意に呟く。



 こんなんメッチャときめいちゃうやろ~~~~~~~~~~~~~っ!



 ……そんな心の叫びは、胸の中に収めていておいた。








 (……何あの膨らみ!)


 ……わたし、ペルシャ=ペルセウスは部屋に戻った後、一人ベッドの中で先程の光景を反芻した。


 ちなみにその光景とは、セシルさんに夜這いされた甲平くんの下半身である。


 (あれってあれだよね! ズボンの上からだけどあんな大きくなるの!)


 ズボンの中の光景を想像しては戦慄した。


 (はうーーーっ! ドキドキして眠れないよぅ!)


 わたしはベッドの上をジタバタしながら身悶えた。


 ……………………。


 …………。


 ……。


 「……ZZZZzzzzz」


 ……そして、五分後に普通に寝た。今日は色々あって疲れていたからだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ