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 第77話  『 1608 』



 「俺の戦いの邪魔をするんだ、それ相応の説明はあるんだろうなァ、ノエル」


 ……ゼロとオルフェウス従事長の間に割り込んだ男に、ゼロが言及する。


 「ええ、勿論です」


 ノエルは優雅に頷き、ゼロの下まで歩み寄る。


 「先程、ルシアより連絡がありまして――……」


 ノエルはゼロに耳打ちし、そこからはよく聞こえなかった。


 「……了解。これ以上の戦闘は無意味だな」

 「話が早くて助かります」


 意外にもゼロはあっさりと納得した。


 「じゃあな、俺の目的は達したからもう帰るわ」


 戦意を無くしたゼロとノエルは俺達に背を向けて歩き出す。


 「簡単に逃がすとお思いですか?」


 そんな二人の背にオルフェウス従事長が長剣を構える。


 「こちらは大切な戦友を殺されています。この溜飲は簡単には下がりませんよ」

 「……」


 ゼロは脚を止め、こちらを振り返る。


 「悪ィがこちらも少しばかり消耗しているんでな、てめェの挑発には乗れねェよ――ルシア」


 ゼロがそう呼ぶと、奴等の影からナイトドレスを身に纏った女が姿を見せた。


 「城まで連れてけ」

 「yes.sir」


 ルシアと呼ばれた女は足下に黒い空間を展開した。


 「じゃあな、また何処かで殺り合おうぜ」


 ……それだけ言ってゼロとその仲間は闇の中に沈んでいった。


 「……」

 「……」


 残された俺とオルフェウス従事長は沈黙する。


 「……クソッ」


 俺は地面に拳を叩き込んだ。


 「……すみません、オルフェウス従事長。俺、何にも出来ませんでしたっ」

 「……」


 ……ゼロは強すぎた。まるで相手にならなかった。


 「隊長の仇も取れなくて、オルフェウス従事長が助けに来てくださらなかったら俺はあいつに殺されていましたっ」


 悔しかった。

 やるせなかった。


 「……すみません、でした」


 「……」



 ――ぽんっ、彼の手が俺の肩に乗せられた。



 「君が生きていてくれて良かった」


 「――」


 ……情けなくて弱い俺にそう言ってくれた。


 「今回は相手が悪かった。クロエ嬢の死は残念だが、今は君の生存を喜ぼう」

 「……っ」


 俺は俯き、オルフェウス従事長は立ち上がった。


 「直に終戦の報せが来る筈だ、それまで少し休めばいい」

 「…………はい」


 徐々に静まる戦場。


 雲間から日の光が射し込む。



 「 全隊に告ぐ、時1608、敵撤退。残存部隊は速やかに状況を報告せよ。繰り返す――…… 」



 ……そして、短くも壮絶な四時間と八分は終わりを告げたのであった。


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