第74話 『 大ハズレ 』
「オイオイオイオイオーーーイッ! 何だ、この弱そうな女はよォッ!」
……私の目の前には一人の男がいた。
「コイツが〝超越者〟か」
……初めて見る強敵であった。
「まったく、大ハズレだよ! こんな雑魚が俺の相手だとはよォ!」
「……五月蝿いですね」
私は周りに糸を張る。
「クロエ=マリオネット、参る」
無数の糸が男に絡み付く。
「私には時間がありません、どうか手短にぶち死んでください」
伸 縮
――糸が伸縮し、男を切断
「……して、いない」
「……あ"あ"っ?」
……そう、男は傷一負っていなかった。
「てめェ何かやったか?」
「硬化能力か?」
一人だけならまだしも二人目とは運が悪い。
硬化能力と私の能力は相性が悪い、今日の私は本当についていない。
「心外だねェ! この俺が! 俺の能力がただの硬化能力扱いとはなァ!」
……違うのか?
「このゼロ=ベルゼブブの能力がその程度な訳がねェだろうがよ」
ゼロは狂笑する。
「……序列は?」
「オイ、せっかちな女はモテねェって言われたことはねェのかよ?」
「黙れ、質問は私がしている」
「ひはっ」
私の敵意にもゼロは笑みを崩さなかった。
「哀れだなァ、お前。大ハズレだよ、最強最悪になァ」
「……」
――嫌な予感がした。
「 悪ィが俺が第一位だ 」
ゼロの姿が消える。
「――」
――トンッ……。ゼロは一瞬にして私の背後にいた。
「ひはっ」
ゼロが拳を振るい、私はそれを腕で受け止める。
「そんなんで止められるとでも思ってんのかァ?」
バ ィ
ッ
キ
――骨折。〝魔装脈〟で強化した私の腕が意図も容易くへし折られた。
「――馬鹿な、がッ……!」
ゼロの拳が私の頬に叩き込まれ、私は地面を転がった。
痛い! 腕が! 顔が!
(――だが!)
私は煙幕を張りゼロの視界から消える。
そして、横転した戦車に糸を張り、収縮し、ゼロから離脱した。
(……何が起こった?)
私は確かに魔力を纏って奴の拳をガードした。
しかし、奴の拳と私の腕が触れた瞬間――魔力の膜が霧散したのだ。
(……考えられる可能性は魔力破壊の〝奇跡〟と言った所ですかね)
私は冷静に分析する。
(右腕は完全に折れてしまったが〝奇跡〟はまだ使える)
……これならまだ戦える!
私は横転した戦車に身を隠しながら、ゼロの様子を窺った。
「――いない?」
……ゼロの姿は何処にも見当たらなかった。
「 ひはっ 」
……奴の笑い声がすぐ近くから聴こえた。




