第62話 『 騎士と侍 』
――サクラダ地区、北西部。
「……お主、まさか剣士でござるか?」
……私の前に立ちはだかる一匹の巨大な蝿が私に質問した。
「貴様の見たままだ、ベルゼブブの戦士」
私は剣を構え、奴の出方を窺う。
「そうか、剣士か……………………くははっ」
「……?」
突然笑いだすベルゼブブの戦士に私は警戒心を高める。
「くははっ、拙者は運がいいでござるよ!」
その途端――ベルゼブブの戦士の躯が形を変えた。
「拙者の名はギル=ベルゼブブ」
その様子はヒトそのもので、腰には一本の脇差しが据えられていた。
「 第六位――〝剣帝〟、ギル=ベルゼブブでござるよ 」
「――」
――第六位。
「ベルゼブブ小隊は二つに大別されるでござる」
……目の前の男は六番目に強い敵。
「人の姿に変えられる上位七名――〝超越者〟と変えられない下位十名」
――ギルの姿が消える。
「 〝超越者〟の実力は下位十名の遥か上にある 」
「――」
……風が吹く。
「 油断禁物でござるよ 」
気づけば、
気づけば、私の背後にギルが回り込んでいた。
「――」
白刃が走る。
私は踵返し際に斬りつける。
――キィンッッッッッッッッ……! 二つの刃が交差した。
「……私も名乗るぞ、〝剣帝〟」
押し合う刃、
「ペルセウス王国、近衛騎士団、団長――……」
交差する眼光、
「 クリス=ロイスだ……! 」
ぶつかり合う殺意と殺意。
「さあ、増分に斬り合おうじゃないか……!」
「臨むところでござるよ……!」
……騎士と侍の戦いが幕を開けた。
――サクラダ地区、西部。
「……どういうことだよ、こりゃあ」
……俺は前に進めずにいた。
「歩いても、走っても前に進めねェじゃねェか」
敵を無視して、直接本部を壊滅しようとしたものの、俺達はある一定の距離から前に進めなくなっていた。
「……敵の能力か? オイ、ノエル、どう思う?」
「そうですね、恐らく敵の中に領域内に閉じ込める能力者がいるものと思われます」
俺は隣に立つタキシードを着た美丈夫に意見を求め、男は冷静に答える。
「要はその術者をぶっ殺しちまえば、このうざってェ領域を突破できるのかよ」
「ええ、最強の我々の中でも最も最強な貴方なら容易だと思います」
「おだててんじゃねェよ、気味が悪ィ」
「事実です♪」
毒づく俺に、ノエルは優雅な笑みで返してくる。
「……だが、そうとわかれば話は早ェ」
俺は敵の本部に背を向けて、今歩いてきた道を戻った。
「お前ら、ここから先はバラバラに行動しろ」
俺は小隊のリーダーとして指揮を執る。
「 敵は鏖殺だ♪ 」
『 yes.sir 』
凶暴に笑う俺。
動き出す僕。
「ひはっ、ひはははははははははははっ……♪」
……さあ、鏖殺の始まりだ。




