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 第57話  『 開戦 』



 ――三日後。


 「今回、皆様に集まっていただいた理由について、察している方も居ると思われます」


 ……ペルセウス王宮に仕える隊長格の面々は会議室に収集されていた。その中にクロエさんやラビの姿は無かった。


 「四日前、我が国はドラコ王国より宣戦布告を受けました。決戦の日は三日後の正午、場はペルセウス王国東部サクラダ地区とのことです」


 最長者であるセシルさんが会議の指揮をしていた。


 「既に三番隊隊長及び副隊長については臨時徴兵していますが、現状、〝七凶ななまがつ血族けつぞく〟の一角を率いるドラコ王国を相手にするのには不足だと思われます」


 ――〝七凶の血族〟


 ……この世界で知らぬ者は居ないとされる最強の戦闘一族。

 その戦力は一族で三ヶ国に匹敵するとされている。

 そして、ドラコ王国には〝暴食〟の血族――ベルゼブブ家が属していた。


 「故に、我々の中から徴兵組と王宮警備組に分配するべきだと私は考えます」


 ――徴兵組


 ……軍属し、戦争に参加する人員。


 ――王宮警備組


 ……こちらは残留し、ペルシャの妹や姫・その他王宮で生活する者を護衛する人員。


 「それらについては私とお嬢様で話し合い、各々の能力によって分配しました」


 そして、振り分けられる人選。


 それがこれであった。



 【徴兵組】

・セシル=アスモデウス

・ファルス=レイヴンハート

・ロイ=キルシュタイン

・クリス=ロイス

・伊墨甲平


 【王宮警備組】

・レイド=ブレイド

・キャンディ=シロップ



 ……………………。

 …………。

 ……。


 「……まっ、こんなもんか」


 ……緊急会合は終わり、気づけば日が暮れていた。


 俺は屋敷の中を巡回という名目で散歩していた。


 「何と言うか、強すぎるのも楽じゃねェな」


 見事、徴兵組に選抜された俺は、三日後に晴れて戦場へ送り出されることになった。


 (……正直、不安はある)


 どんなに準備をしていても、

 どんなに警戒していても、


 ――死は突然訪れる。


 ……それが戦争だ。


 (……それに今回は化け物が敵になる可能性が大きいんだよな)


 ――〝七凶の血族〟


 ……会ったことは無いが、相当の実力者だと聞いていた。


 (はたして、俺の忍術は奴等に通じるのかね)


 俺は己の拳を見つめる。


 「……甲平、こんな所でどうかしたのですか?」


 丁度、部屋から出たばかりの姫と顔を合わせた。


 「そうか、姫の部屋の前だったか」


 考え事をしていたので意識していなかった。


 「……あれ、護衛はいないのか?」

 「今は人手不足で、影武者に護衛を付ける余裕はないので誰もいませんよ」


 ……まあ、屋敷の中なら心配ないか。


 「甲平は何をしていたのですか?」

 「巡回だ」

 「その割には上の空って感じでしたけど?」

 「……」


 ……鋭いな、伊達に付き合いが長くはないようだ。


 「ちょっと、考え事していたんだ」

 「そうでしたか……そう言えば、緊急会合の内容はどうでしたか?」


 今、まさにその内容について考えていた所だ。


 「……三日後にドラコ王国と戦争をするってな、俺も兵士として行くことになったよ」

 「……戦争、それに甲平が兵士ですか?」


 俺の解答に姫が驚いた。


 「大丈夫ですか? 指揮官の言うことはちゃんと聞かないと駄目ですよ」

 「……俺は子供か、お前は母親か」


 まさか、そのレベルの話からとは……まあ、いつもできてないからだけど。


 「勝手にどっか行ったり、寝たりしてはいけませんよ」

 「あー、あー、わかってるよ」


 何故、戦争三日前にこんなことを注意されなければならんのだ。


 「……たく、こちとら命懸かってるのに、何かこう心配ぐらいしてくれないのかよ」


 「……」


 俺はでっかい溜め息を吐いて、やれやれと嘆いた。



 ――ぼすっ……。姫の頭が俺の胸元に当てられた。



 「……姫?」


 突然のことで俺は不意を突かれる。


 「……心配……しているに決まっているじゃないですか」


 姫は俯いたまま言葉を紡ぐ。その声は微かに震えていた。


 「……私には……父上も母上も兄上も居ませんっ」


 足元に滴が落ちては弾ける。


 「……私には……もう甲平しか居ないんですっ」


 ――炎


 ……三週間前、姫は生まれ育った城と共に家族も失った。

 昔からの姫を知る人物は俺しか居なかった。


 ……俺しか居ないのだ。


 「……お願いします、甲平っ」


 その声はとても弱々しくて、まるで迷子の子供のようであった。


 「……死なないでくださいっ……私はもう失うことには耐えられませんっ」


 ――俺は姫を優しく抱き締めた。



 「 当たり前だ 」



 ……姫が泣いていたのだ。


 ……涙を流して、俺に懇願したのだ。



 「その為の忍だ……!」



 ……これに応えなければ忍じゃねェ。


 「約束だ、姫」


 俺は誓う。


 姫に、

 忍の矜持に、



 「俺は死んでも生きて帰ってくる……!」



 ……戦争が恐くない筈がない。


 ……必ず生きて帰ってこれる保障なんてない。


 ――それでも俺は「生きて帰ってくる」と言った。


 主の無茶無謀に応える。

 主を護り、主を支える。



 ……それが忍者だからだ。








 ――ペルセウス暦511年5月17日。



 時は正午。


 場はペルセウス王国東部サクラダ地区。


 天候は快晴。


 「全軍出撃ッッッッッッ……!」


 「ペルセウス王国に栄光あれッッッ……!」


 猛る兵士。

 走る戦車。


 西、ペルセウス王国


 東、ドラコ王国


 「……さて、出番か」



 ――開戦。



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