第52話 『 レズとレズの争いからは何も生まれない 』
……客間で紅茶を飲みながらペルシャが来るのを待っているセフィリアを、木の上から監視する人影がいた。
「今のところ、ただ紅茶を飲んでいるだけだな」
「すまんが、お前の忍術とやらで奴の紅茶に毒を持ってくれないか?」
「盛らねェよ」
……無論、俺とクリスであった。
「クソッ、どうすれば奴を亡きものにできるのだ……!」
「バレるからちょっと黙っててくれる?」
俺とクリスは偽装しているものの、あまり大きな声を出せば気づかれる恐れがあった。
(……にしても、中々上玉じゃないか)
俺は双眼鏡越しにセフィリアの整った顔を観察していた。
(何故、あんな美少女が同性愛者になってしまったのだろう?)
……大きな疑問であった。
「……許せん、私が同じ立場なら毎日一緒に食事をして、毎日一緒に風呂に入り、毎晩同衾してはあんなことやこんなことを(ブツブツ」
「……」
そう言えば、俺の隣にも負けず劣らずの美少女なレズがいた……世界には意外に沢山いるのかもしれない。
「おっ待ったせーーーッ!」
……そうこうしている内にペルシャが客間にやって来た。
「久し振りだね、セフィちゃん!」
「ペッ、ペルちゃん(///」
ペルシャの顔を見た瞬間、セフィリアが満面の笑みを浮かべた。
「ねぇねぇ! 何飲んでるの!」
「わー、ペルちゃんだー! 本物のペルちゃんだー! 可愛いよー! 可愛い過ぎるよー! しゅきしゅき大好き過ぎるよー!」
「なるほどー、ペロペロティンポティーかぁ」
「ペルちゃんと早く結婚したいよー! 明日には結婚したいよー! てか、今から式を挙げようよー!」
「へえ、この紅茶わざわざ外国から取り寄せたんだぁ。わたしも飲んじゃおー!」
……セフィリアの目がヤバい。てか、何でペルシャも普通に会話できているんだ?
「それで何の用件でわざわざ家まで来たの?」
「ペッ、ペルちゃんは子供は何人欲しいのかな?」
「そっかこの前の襲撃で心配になったから様子を見に来てくれたんだ、セフィちゃんは優しいね♪」
……だから、普通に会話しろよ。てか、産めないだろ、子供。
「……オイ、クリス。あの二人ヤバくないか?」
俺は隣のクリスに耳打ちする。
「ふぐーっ! ふぐーっ! ぐるるるるるぅぅぅっ!」
こっちはこっちで目がヤベェ!
「ペルちゃん! 可愛いよ! ペルちゃん!」
「うん! 今日は一緒にお風呂に入って、夕飯も食べて、一緒に寝ようね!」
「……風呂……食事……同衾……許さぬ、許さぬぞ、セフィリア=レイヴンハートォ……!」
「落ち着けよ、とりま落ち着けよ、落ち着かねェとぶっ殺すぞ」
……何かカオスフィールドが形成されていた。
「甲くーん、一緒に午後のティータイムでもしませんかー」
二人を監視している俺とクリスの下へセシルさんがやって来た。
「行きます……クリスはどうする?」
「殺す殺す殺す殺す殺す、セフィリア殺す、殺す殺す殺す殺す殺す殺
「まっ、程々にな」
……色々と面倒臭くなった俺は、クリスを放置して、セシルさんと一緒に茶を嗜むことにした。
――セシルさんの部屋。
「どうですか、このお茶菓子。王都でも人気のものなんですよ」
「……凄く……美味しいです」
俺は今、セシルさんと一緒に紅茶を飲みながら、茶菓子を摘まんでいた。
「セシルさんは客人の対応は終わったんですか?」
「いいえ、ですが、午後からレイヴンハート執事長にお願いしていますので心配無用ですよ」
「へえー」
「アアアァァァァァアアァァァアァァァァァァァァァァッッッ……!」
「急にどうされたんですか! 落ち着いてください!」
「……ふぅ」
「急に落ち着かないでください! びっくりします!」
どっちだよ。
「それでどうされたんですか、急に取り乱して」
「……いや、俺、気づいたんですよ」
「気づいたって何をですか?」
……そう、俺は気づいてしまったのだ。
――セフィリア=レイヴンハート
それが、ペルシャの許嫁の名前である。
そして、この屋敷には同じ姓の男がいた。
――知っているかい、この世には二種類の人間がいるのさ。それは男と女だ
――しかし、それら二つに大きな違いはない。僕からすれば些細な違いに過ぎないのさ
――だから、僕は君を抱く
「ファルスとセフィリアってもしかして兄妹なんですかっ!?」
……その可能性があった。
「あっ、はい」
セシルさんはあっさりと頷いた。
(……にしてもファルスとセフィリアが兄妹だとはな)
……って、
「どっちも同性愛者じゃねェかっ!?」
……恐ろしきかな、レイヴンハートの血。




