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 第51話  『 ペルシャの許嫁、現る!? 』



 「 ペルシャの許嫁が屋敷に来るってェッ!? 」


 ……セシルさんに説明を受けた俺は神速のサブタイトル回収をした。


 「そうなんですよ。ですから、甲くんも無礼がないようお気をつけてくださいね」

 「俺がそんな無礼な奴に見えますか?」

 「はい♡」

 「……」


 それもそうか。ここに来てから無礼なことしかしていなかったからなぁ。


 「しっ、仕方無いっ、今日は一日無礼なこと禁止デーにしようっ(血涙」

 「あのー、それは普通、皆様が当たり前に毎日やっていることでは?」

 「毎日は無理です」


 ……性分なもので。


 「何にしても、今日は粗相が無いよう努力してくださいね♡」

 「アイアイサー!」


 俺は元気に敬礼して、庭へと飛び出した。


 「……元気だけは文句なしなんですけどねー」



 ……セシルさんの呆れた笑顔を背に、俺は修行をする為に王宮のすぐ近くにある訓練場へ向かって駆け出した。



 「何っ! ペルシャ様の許嫁が来るだとっ!」


 ……訓練場で居合わせたクリスが驚愕を露にする。驚きすぎな気がしないでもなかった。


 「一体どんな奴なんだ、その許嫁って奴は?」

 「超が付く程の変人だな」

 「変人だと!」


 ほわんほわんほわーん――……。


 「わーい、僕、変人だよー。僕、変人だよーん」


 ……たぶんこんな感じな奴だろう。


 「ママー! 今日もタッちゃんが僕のこと変人じゃないって馬鹿にしたんだよ! うわーん!」


 ……金持ちだから甘ったれたお坊ちゃんだろうな。


 「最近、日焼けし過ぎて味付け玉子になっちゃっちゃ、てへ♡」


 ……父親は大根で、母親ははんぺん。それがペルシャの許嫁であった。



 「 勝手におでんの具にするなっ!? 」



 クリスが人の妄想に突っ込みを入れる。


 「まあまあ、これでも食べて落ち着けって」

 「むがっ……!」


 俺はちくわを無理矢理クリスの口に突っ込んだ。


 引いた。


 入れた。


 引いた。


 入れた。


 引いた。


 挿入れた。


 「何をするっ!?」


 ブチィィィィィッ……! クリスがちくわを噛み千切って激怒した。


 「いや、何か興奮して」


 「するなっ!」


 ……少し脱線したが、また本題に戻ることにした。


 「クリスはペルシャの許嫁のことを良く思っていないようだが、何かあったのか?」

 「……むっ」


 会話からそんな雰囲気を感じ取れた。


 「わかるのか?」

 「まあ、何となく」


 さっきからずっと眉間に皺を寄せて、隙あらば剣を素振りしているのだ。察するなという方が無理があった。


 「まあ、一言で言うなれば宿敵という奴だな」

 「……宿敵?」


 クリスの表情はとても真剣なものであり、どうやら複雑な経緯があることが容易に察することができた。



 「 ペルシャちゃんは私の唯一の幼馴染みだから、誰にも盗られたくない。だから、奴は最大の敵だ 」



 「ただの我儘じゃねェか」


 ……浅すぎて逆にほっこりした。


 「というか、素が出てるぞ」

 「ぐぬっ!」


 クリスは感情が昂るとペルシャちゃん呼びになる。


 「まあ、そうカッカするなよ。ほれ、大根でも食べて落ち着けよ」


 「だから、何で矢鱈におでんを推す――って、熱っ! おでん熱っ!」


 ……おでんは滅茶苦茶熱かった。



 「 セフィリア=レイヴンハート様の御成ーりィー! 」



 「「――っ!?」」


 ……どうやら話題の人物が来られたようである。


 「しまった! まだ、刃をちゃんと研いでいないぞ!」

 「研ぐな」


 ……殺す気満々であった。


 「とにかく、門まで行くぞ」

 「ああ! 貴様も武器を忘れるなよ!」

 「要らねェよ」


 ……殺す気しかなかった。


 ……………………。

 …………。

 ……。


 「遠路遥々ご苦労様です。速やかにお部屋まで案内させて戴きます」


 ……門を抜けた薔薇園でセシルさんが荷物を預かり、客人を案内していた。


 「……あれがペルシャの許嫁か」

 「ああ、間違いない」


 俺とクリスは王宮内で働く使用人や近衛騎士と共に並び、客人を出迎える。


 (……なるほど、これがペルシャの許嫁――セフィリア=レイヴンハート)


 俺は頭を垂れる横目でそのご尊顔を拝む。


 (うん、こりゃあどう見ても)




 女 じ ゃ ね ェ か !




 美しい銀の長髪は一つに束ねられ、睫毛は人形のように長く、体つきに至っては細身でありながらも女性特有の膨らみがしっかりと確認できた。

 唯一男性的なのは服だけで、最早99パーセントは女であった。


 「……おい、クリス。あいつがペルシャの許嫁で間違いないんだな」


 俺は小声でクリスに耳打ちをする。


 「ああ、あの憎たらしい顔は間違いなくセフィリア=レイヴンハートだっ」


 クリスの険しい表情が事の真偽を確かなものにしていた。


 「……でも、あれって女じゃ」


 「女の身でありながらペルシャちゃんに色目を使うとは――サイコレズ野郎めっ」



 ……お前が言うな。



 俺は心中でツッコミを入れた。


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