第44話 『 鴉の騎士、忘れられない夜 』
――わたしは今も鮮明に覚えている。
……真夜中。
……辺りに飛び散る鮮血。
「……あなたは?」
……わたしは無数の死体の上に立つ一人の男の子に名を問う。
「 〝からす〟 」
少年は鳥の仮面を被っており、衣服上から下まで真っ黒であった。
「……怪我は?」
「いえ、お陰さまで」
「……そうか」
……少年はそれだけ言ってわたしの前から姿を消した。
「……………………あの人は一体」
気づけばわたしの震えは止まっていた。
目の前の死体の山は先程わたしを殺しに来た刺客であった。
彼が助けてくれなければ死んでいたのはわたしの方であった。
〝からす〟はわたしと同じくらいの年齢で、まだ子供であったが、恐ろしく強かった。
……強い。
……恐い。
そう思った。それなのにわたしはとても安心していた。
おかしな話だ。
ほんの少し前まで殺され掛けていた筈なのに。
目の前で沢山の人が殺されたのに。
わたしは少年の背中と声に安らぎを感じていた。
「……また、会えないかな」
わたしは一人呟く。
まだ、わたしは少年にお礼を伝えていない。それはとても遺憾なことであった。
……それからしばらくして、衛兵がわたしの居場所まで駆け付けてくれた。
それから何年間か経ったけど、あの少年とは会ってはいない。
……あの夜の思い出は、今も鮮明に覚えている。
……………………。
…………。
……。
「 準備体操はちゃんとしないと駄目だよ! 」
……すぐに海に飛び込もうとする甲平くんをわたしは制止する。
「……ジュンビタイソー?」
甲平くんは意味がわからないのか首を傾げる。
「もしかして甲平くん、準備体操知らないの?」
「まあな、新手の修行か何かか?」
そう言って甲平くんは小太刀を抜いて、素振りをし始めた。
「物騒な物振り回さないで、甲平くん!」
「あっ、手が滑った」
「えっ?」
甲平くんは手を滑らせ、明後日の方向に小太刀をぶん投げた。
刃はクルクルと回り、放物線を描いて落下する。
わたしと甲平くんはその軌道を目で追う。
「「……あっ」」
二人して小さな声を漏らす。
――ぼすっ……。甲平くんの小太刀がイカしたアフロマンのアフロに突き刺さった。
「あっ」
「あっ」
……わたしと甲平くんが二人揃って間抜けな声を漏らす。
「……」
イカしたアフロマンが無言でわたしと甲平くんの方を見てきた。
「……」
「……」
「……」
……パカッ、アフロが割れて中からハゲたオジサンが出てきた。
「……………………えっ」
ハゲたオジサンは「よっこらセックス」と言いながらアフロマンの頭から飛び降りる。
「……」
オジサンは何も言わずにわたしと甲平くんの前まで歩み寄る。
「……」
「……」
「……」
そして、対面する三人。
「爆発します!」
オジサンはそう言って、突如発光した。
「「……えっ?」」
わたしと甲平くんは戸惑う。
――ドカーーーンッ! オジサンが爆発した。
「……けほっ、けほっ」
「大丈夫か、ペルシャ」
「うん、この爆発、派手なだけで大したことないかも」
どちらかと言うと、爆風で舞い上がった砂埃の方がダメージが大きかった。
やがて風と共に砂埃が流され、視界が開ける。
「……あれ? オジサンは?」
「さあ?」
……気づけばハゲたオジサンもイカしたアフロマンも姿を消していた。
アフロマン
ハゲたオジサン
何処へ行く
足跡も無い
幻なのか
作:ペルシャ=ペルセウス
「糞みたいな短歌だっ!?」
唐突な糞短歌に甲平くんがツッコミを入れる。
……教訓、人が沢山いる場所で素振りをしない。
「……えっ? 最初のプロローグと本編関係無くないですか?」
……糞みたいな短歌を唄うペルシャの横でクロエさんが苦笑いを溢した。
「関係無くないよ」
「その心は?」
「……?」
「ですよねー (笑)」
オ チ 無 し 。




