第42話 『 ビキニってほとんど下着――だが、それがいい! 』
「……海なんて久し振りだな」
――東ペルセウスビーチ。
……俺とキャンディは二人で海水浴をする為に、王宮の近くにある砂浜まで足を運んでいた。
「結構人がいるんだな」
まだ暦上は春らしいが、ペルセウス王国は気温が暖かいようで、既に多くの国民が海水浴を満喫していた。
(……初日から思っていたけど、ここの女は発育がいいなぁ)
俺達の世界の女は姫に限らず、平均的に華奢な女が多かった。
それに、前の世界で女は肌を出すこと自体が珍しく、胸や尻など滅多に見れるものではなかった。
俺はキャンディが着替えているのを待っている間に、海辺のビキニ(後で呼び方をキャンディに教えてもらった)美女を観察していた。
「……お兄ちゃん、お待たせ――って、メッチャ鼻の下伸びてるの!」
着替え終えたキャンディが俺の弛みきった顔を見て思わず後ずさる。
「おっ、キャンディか。遅かったなァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッッッ……!!!」
「何っ!? 何で急に叫びだしたのっ!!?」
キャンディの姿を見た俺は突如叫びだし、キャンディもそんな俺に困惑した。
「ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッッッ……!」
「何か光りだしたのっ!?」
俺は激しく発光する。
――ドッカーーーンッ!
……そして、爆発した。
「何でーーーーーーッ!?」
……………………。
…………。
……。
「可愛い過ぎる! 可愛い過ぎるぞ、キャンディ!」
……そう、俺が突如叫びだし爆発したのはキャンディが可愛い過ぎたからであった。
「普通可愛くても爆発なんてしないの!?」
「普通って何?」
「普通は普通なの!?」
……普通って難しい。
「わかったよ。次から我慢するから」
「我慢できるの!」
「代わりにケツから漏らすかもしれないけど」
「漏らすな!」
……怒濤のツッコミ地獄に、キャンディも話し方がおかしくなっていた。
「でもさ、キャンディが可愛いのは本当だぜ」
「……そっ、そうなの(///」
「ああ、超絶可愛いぞ」
「~~~~~~~っ!」
俺の言葉にキャンディは顔を真っ赤に紅潮させる。
ちなみに、キャンディの姿は淡い水色のビキニで、下はフリルをあしらったスカートタイプであった。
キャンディの凶悪な巨乳をアピールしつつ、少女らしい可愛さも残した良いチョイスだと思う。
「キャンディは可愛い! 可愛い寄りの可愛い!」
「褒めすぎなの!」
誉め殺す俺にキャンディは少し怒り気味に歩き出す。
「……」
しかし、すぐに足を止めて、こちらの方をチラッと見てくる。
「……きょっ、今日は沢山、たーくさん遊ぶの」
そんなことを言ってきた。
(……会った頃に比べたら良い顔するようになったじゃないか)
俺はキャンディの変化に少しだけ嬉しくなった。
「だな、遊びまくろう!」
そして、楽しい海水浴が始まった。
……………………。
…………。
……。
「 水遁――〝大渦水流陣〟 」
俺は巨大な渦巻きを起こし、キャンディはその渦巻きに巻き込まれ、流れに身を任せていた。
「流されるのーっ!」
そんな風にはしゃぐキャンディはすこぶる楽しそうであった。
「よし! 水流加速だ!」
「きゃーっ、水着が流されたのーっ!」
「最大水流ッッッ……!」
「オイ! 待て、コラーなのーーーっ!」
水流は加速し、無情にもキャンディのビキニは海に流されてしまう。
「止めろなのーーーーーっ!」
「……」
「無視すんななのーーーっ!」
俺はキャンディの言葉を無視してぐるぐる回し続ける。
「コラ、やめんかい!」
――ゴスッ、後頭部に肘鉄を叩き込まれる。
「イッ――ごふっ!」
――ゴッッッ、間髪容れずに鉄拳が顔面に叩き込まれる。
「はふんっ♡」
――ぱふっ、倒れ混んだ先に柔らかいクッションに顔を突っ込む。
「――って! 一体何事だ!」
俺は顔を上げて、周りを見渡す。
「……って、ペルシャ!」
「どっ、どうもー」
クッションの正体はペルシャの豊満な谷間だった。
「それに姫とクリスとクロエさん! とラビ!」
どうやら肘打ちはクリスで、顔面パンチは姫にやられたようであった。
「何でこんな所に皆が!」
「ひゃんっ」
「貴様! どさくさに紛れてペルシャ様の胸を揉むな!」
どさくさに紛れてペルシャの胸を揉んでいたが、目敏く発見したクリスによって手を叩き落とされた。
「それよりも水臭いよ、甲平くん!」
ペルシャが眉を吊り上げて俺に詰め寄る。
「キャンディちゃんと二人だけで海水浴だなんて! 何でわたし達も誘ってくれなかったの!」
「あー……皆、海水浴に来たのか」
……確かに皆、揃いも揃って水着を着ていた。
「申し訳ございません、伊墨さんとキャンディ様が二人で海に行かれたのを知って、自分も行くと聞かなかったんですよ」
そう説明するクロエさんは、黒のビキニに白のフリルをあしらった水着を着ており、更には白のカチューシャまで身に付けていた……まさしく水着メイドである。
「凄い可愛い!」
「ふふっ、ありがとうございます」
俺はクロエさんの手を握って有り余る情熱を告白する。
「甲平くん! わたしは! わたしの水着は!」
横からペルシャが両腕で胸を寄せるセクシーポーズで応戦してきた。
ちなみにペルシャの水着はシンプルなデザインの白いビキニで、とても可愛い。
「うーん! すっばらしいィィィィィィィッ!」
俺は全力ガッツポーズで応える。
「揉んでもいいかな?」
「えっ、もっ、揉むの(///」
「ああ、揉みたい」
「えっと、どっ、どうしようかなー(///」
「よし! 三秒数えたら揉むからな! 1! 2! 3!」
「 やめろ 」
――ゴスッ、俺の後頭部にクリスの肘鉄が打ち込まれた。
「イテテテ、ってクリス! お前……!」
「なっ、何だ」
俺の視線にクリスが半歩退く。
「いや、かなり可愛いな」
「何っ!?(///」
クリスが一瞬で顔を紅潮させる。
「健康的な美脚! 引き締まった腰周り! 程よい大きさのバァァァスゥゥゥトォォォ!」
「何で胸を強調する!」
……好きなので。
「何にしても可愛いのは本当だ」
「かっ、可愛いって言うな」
口調は強気だが声に覇気が無い。可愛い。
「こっ、甲平。わっ、私はどうですか!」
姫が胸を張って、水着姿を見せつける。
――板
「 小さいな 」
「――」
――拳
……それは音速を超えて飛来する。
一直線に俺の顔面に迫り来るそれは、俺の知覚を凌駕し、意図も容易く俺の頬骨に叩き込まれる。
「甲平の! 甲平のォ! ばぁぁぁぁかぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ……!」
「ぐぼぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ……!」
気づけば俺の身体はきりもみ回転で吹っ飛び、海面を水切りの石のようにバウンドして、ぽちゃんと海の中に落ちた。
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
―― 一時間。
……それは、次に俺が水面から顔を出すまでの時間であった。




