第247話 『 37564 』
――殺す。
……兵士の頭がメットごと宙を舞う。
――殺す。殺す。コロス。
……メイドの脳味噌を踏み潰す。
――コロス。コロス。コロス。コロス。コロス。コロス。コロス。コロス。コロス。コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス。
脳味噌の欠片が宙を舞う。
壁や床に鮮血がぶちまけられる。
人間だった肉の固まりが床に転がっている。
――コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロ
王宮中に銃声と断末魔が響き渡る。
血と火薬の臭いが充満する。
無数の弾丸が身体に打ち付けられては地面を転がる。
『 ジ ま
ャ ァ 』
――口腔から放たれた光線が目の前にあるもの全てを凪ぎ払う。
数名の兵士は上半身を失い、鮮血を噴水のように撒き散らす。
『 ど ォ こだ ァ 』
――アルベルト!
『 どコだドこダァ……! 』
――アルベルトォ……!
『 ブ っ 殺 死 テ 殺る ! 』
――アルベルトォォォォォォォォォォォォッッッ……!!!
刻む。
潰す。
凪ぎ払う。
何人コロした?
何十人コロした?
ワカラナイ。
……そもそも何で殺している?
殺したいのはアルベルトなのに。
この人達はアルベルトじゃないのに。
『 な ン で? 』
――始まりは一発の銃弾だった。
そこから目に映る全てが敵になった。
それからはメチャクチャになった。
『 ノゥみソがぐちゃ だ
グチャ ァ 』
脳味噌を頭蓋ごと踏み潰す。
『 かぁラぁダぁハン ぶんコぉ 』
逃げるメイドの頭から真っ二つに切り裂く。
『 もゥ ゼンブ ブッこわれロヨォッ……! 』
限界まで伸びた尾が視界にあるもの全てを凪ぎ払った。
王宮は瓦解する。
床も壁も天井も崩れ落ちる。
粉塵が舞い上がり、雷が落ちたような激しい音が響き渡る。
『 タリなイィィィッ! 』
もっと!
『 コわスこワすッ! 』
もっと!
『 殺死タイッ……! 』
もっと!
――ぽっ……。頭に水のようなものが落ちた。
『 あ メ ? 』
天井が無くなって初めて、雨が降っていたことに気がついた。
雨はその勢いを増し、舞い上がった粉塵を地に落とす。
やがて、視界は鮮明になった。
『 あっ 』
そこで初めて気づいた。
前も、
左も、 右も、
後ろも、
……生きている人間は誰もいなくなっていた。
雨は降り続ける。
見上げる者全てを平等に濡らす。
……しかし、罪も事実も洗い流してなどはくれなかった。