表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/262

 第24話  『 鏖殺 』



 「……よし、捕縛完了」


 ……俺は気絶したアリシアを縄で捕縛して、一息吐いた。


 「てっきり頭に血が登って殺したかと思ってたぜ」

 「そんなアホなことはしないさ。コイツがスパイってなら多くの情報を持っている可能性ある、吐き出させるだけ吐き出させてやるよ」

 「ハッ、抜け目ねェな」


 俺とラビは二人揃ってアリシアを見下ろした。


 「……ラビ、お前が倒した刺客は何人だ?」

 「一人、と言うより一体か」

 「俺は三人だ」

 「何だよ、自慢かよ」

 「そうじゃない」


 ……アリシアの言葉を信じるなら刺客は五人、残る一人がいる筈であった。


 「……後一人は何処に行った?」

 「……っ」


 敵の言葉を鵜呑みするのも如何なものかもしれないが、自身の腕に自信がある奴等が五人と言ったのだ、全くの無意味な数字ではないと思われた。

 この王宮内にまだ一人刺客が残っているとするならば、早急に対処しなければならないであろう。



 「そこの二人、こんな所で何をしている!」



 ……これから動こうとしていた俺とラビに三人の女性が駆け寄った。


 「クリス……それにペルシャ」

 「隊長も一緒か」


 駆け寄ってきたのはクリスとペルシャ、そして、隊長と呼ばれたメイドであった。


 「無事だったか、それで三人は何を?」

 「それはこちらの台詞だ。詳しく話を聞かせてもらおうか」


 ……それから俺とクリスは各々の情報を共有した。


 「……なるほど、つまり伊墨が二人、ラビさんが一人を倒し、一人は捕縛、我々が一人を退けたという訳だな」

 「そういうことになるな」


 俺とクリスの話を統合した結果、何処かに鎧の兵士を操る刺客が隠れている可能性があるということであった。


 「とにかく、王宮の中を探索した方がいいな」

 「まあ、そうだろうな」


 ……ならば、索敵組と護衛組に分かれなければならなかった。敵の索敵も大事だが、ペルシャと姫の護衛も無視できなかった。


 「俺はここで休ませてもらうよ、結構深手だからな」


 ラビが自ら索敵を辞退した。


 「索敵なら私の方が良いでしょう。私の〝糸〟は索敵に向いていますので」


 先程、クロエと名乗ったメイドが控えめに挙手した。


 「ならば決まりだな。伊墨とクロエさんが索敵、私とラビさんが護衛。これが最善であろう」

 「了解」

 「文句なし」

 「同意見でございます」


 賛成派三名、反対派〇名。決まりであった。

 そうと決まれば即実行、俺とクロエさんはすぐに動きだした。


 「待て、伊墨」


 ……何故か俺だけクリスに呼び止められた。


 「何だよ」

 「……いや、索敵するのはいいが」


 クリスが微かに頬を赤く染めた。


 「ふっ、二人っきりなったからって、クロエさんにいっ、いかがわしいこととかするなよっ」

 「しないよ!」


 ……わざわざ引き留めて言うことか、それ?


 「じゃあ、行くからな」

 「うっ、うむ。気を付けてな」


 ……少しばかり調子を狂わされたが俺とクロエさんは、刺客の索敵に前進するのであった。







 ……俺は執事服に身を包み、バラ園を歩いていた。


 (……まさか、俺以外が全滅するとはな。ペルセウス王国の警備を甘く見ていた)


 この執事服は俺の服ではない。先程、殺した執事の服を剥ぎ取ったものである。


 (これなら怪しまれずに王宮内を歩けるというものだ)


 俺は今、この王宮から逃げ出そうとしていた。残る仲間も俺一人、ここで戦うのは無謀というものであろう。


 (……このバラ園を抜ければ王宮の門だ)


 その門を出れば、任務は達成できなかったが生きて帰ることができた。

 暗殺業の評判は落ちるだろうが、死んでは元も子もなかった。


 (さて、次はどの仕事をしようかね)


 貴族の暗殺もいいな。


 隣国の王子の暗殺も悪くない。


 俺は次の仕事について考える。


 (おっと、こういう話は外に出てからだな)


 依然として俺は敵地の中にいる。外に出るまで油断は禁物であった。


 (薔薇の花道、この道を抜ければもう外だな)


 俺は歩く。アーチ状に伸びる薔薇の花道を……。

 そして、遂に薔薇の花道を抜けた。




 「 どちらへ行かれるのでしょうか? トーマス=ポーラさん 」




 ――花道を抜けると同時。俺は一人の侍女に呼び止められた。


 「……おや? そのネクタイの柄はポーラさんの物と記憶しておりましたが、人違いでしょうか?」

 「……」


 俺はこの女を知っていた。


 (――セシル=アスモデウス!)


 ……若くしてペルセウス王国の侍女を束ねる才女であった。


 「でも、おかしいですねー。その、深緑と赤のネクタイはポーラさん以外に持っていなかった筈ですがー?」

 「……」


 ……この女、完全に俺が刺客であると気づいていた。


 (どうする? 殺すか?)


 不意打ちなら?


 一対一なら?


 「……」


 ――無理だ。勝てる筈がない。


 (……俺の目の前に立っている女はただのメイドではない)


 色欲の魔女


 七凶の血族


 ( セシル=アスモデウスなのだぞ……! )


 駄目だ。


 逃げるしかない。


 逃げ切れるかもわからない。


 それでも逃げるしかない。



 ――俺はセシル=アスモデウスの横をかわすように駆け出した。



 「……?」


 ……何故だ?


 ……何故……空が見える?


 ……何故?



 俺 の 頭 は 宙 を 飛 ん で い る ?



 (……切られたのか? 首を?)


 あまりに速すぎる出来事に脳の認識が追い付かなかった。


 ゴロッ……。俺の頭は地面の上を転がった。



 ――ゴリッ……。俺の頭を何者かが踏みつけていた。



 「お嬢様に仇なす者に容赦はしない」


 ……駄目だ……意識が遠退く。


 「悔いろ、泣いて詫びろ、そして――……」



 ――グチャッ……。薄れ行く意識の中、何かが潰れる音がした。



 「 死んでしまえ 」



 ……俺の頭が潰れた音であった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ