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 第225話 『 解き放たれた獣 』



 「はぁ~い♡ 一丁あがりで~す♪」



 ――人の生首が地面を転がった。


 「次はあんたの番ッスよ~♪」

 「……」


 ……それは嘗て、クロウディア隊長だったものであった。


 クロウディア隊長の胴体は廊下の角に転がり、その手にはトレードマークでもある巨大な大鋏が握られていた。


 ……そう、それは間違いなくクロウディア隊長の胴体であった。


 「……」

 「ありゃりゃりゃ~、ショックで何も言えなくなっちゃったのかなぁ?」


 〝ピエロ〟は上機嫌に笑い転げる。


 「そだよねぇ! あんたが敬愛して止まない隊長が傷一つ付けることなく負けちまったんだぁ! 心中穏やかじゃないよネェ!」


 「……」


 「ねえ、悔しいですかぁ! それとも怒ってますかぁ! あひゃひゃひゃひゃっ! これはこれは愉快だぜ☆」



 「 あのー、さっきから何の話をしてるんですかぁ? 」



 ――首を傾げるボクに〝ピエロ〟が笑みを消した。


 「それより隊長も死にましたし、次はボクの番でいいんですよね……あっ、今はボクが隊長ってことになるんですかね?」


 「……お前、つっまんねェーの」


 〝ピエロ〟は口元を歪めて、溜め息を吐く。


 「天然ちゃん相手に遊んでもつまんないッスから、ちょちょいのちょいでぶち死んでもらいましょーかぁ!」


 〝ピエロ〟は片手逆立ちからの開脚という意味不明なポーズをし、〝奇跡スキル〟を発動した。




 イン  ペリ  アル  フォ    




 ――この〝奇跡スキル〟だ。


 「 君から〝呼吸する権利〟を奪っちゃいまーす! 」


 ……この〝奇跡スキル〟がクロウディア隊長を殺したのだ。


 「――んっ」


 「〝強制執行領域インペリアルフォース〟は強制執行の力! だ・か・ら、俺様が禁止したことはずぇーたいに出来ませーん!」


 (……呼吸いきが)


 ――呼吸いきが出来ない?


 吸うことも吐き出すことも出来なかった。

 空気を吐き出せないということは喉を振動させることも出来ず、言葉を発することが出来なかった。


 (……そーいうことですか、だったら)


 魔導具――……。



 ビッ      の  ジッ  パー



 ボクは虚空にジッパーを展開し、その中に手を突っ込んだ。


 (――これだぁ♪)


 そして、ボクは一本の鎖付きの鎌を取り出す。


 (呼吸いきが出来ないなら窒息死する前に殺しちゃえばいいですよねぇ♪)


 ――逝くよ。



  キリ  ング  の  バイ  



 ボクは〝ピエロ〟目掛けて勢いよく鎖鎌をぶん投げる。


 「おっほぉーーーっ! そう来ちゃいましたかぁ~~~♪」


 〝ピエロ〟はスキップで鎖鎌を回避する。


 「……♪」


 追え――……〝猛追キリング大蛇バイト〟。



 ――鎖鎌はまるで意思を持つように不自然に軌道を曲げ、〝ピエロ〟に巻き付き、拘束した。



 「やるじゃないの、バロウちゃん♪」


 しかし、〝ピエロ〟は余裕の笑みを浮かべていた。


 「でーも、そのくらい攻撃じゃ能力解除してあーげない♪」


 依然として、ボクの呼吸は復活していなかった。


 「さてさて、あと何秒持つかにゃ――……」



 ――ぐんっっっ……! ボクは鎖鎌を引き、〝ピエロ〟を目の前まで引き寄せた。



 「――っ」

 「……♪」


 ボクは〝ピエロ〟の顔面に拳骨を叩き込む。


 (もっと♪)


 殴る。


 (もっと♪ もっと♪ もっと♪)


 殴る。殴る。殴る。


 (もっとタコ殴りデス♪)


 殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。


 「その程度の拳、効かないってーのっ」


 〝ピエロ〟は口を大きく開き、こちらに面を向ける。


 「――」



  レー         



 ――閃ッッッッッッッッッ……! 〝ピエロ〟の口から紫電と共に高密度のエネルギー弾が穿たれた。


 (……あっ)


 ぶないですねぇ。


 ……しかし、ボクは咄嗟に距離を取り、エネルギー弾を回避していた。


 (しかし、硬いですね……少なくとも人間の皮膚ではないかもしれませんねぇ)


 それが〝ピエロ〟の顔面を殴った感想であった。


 (……九回ってとこですかね)


 それはボクが〝ピエロ〟を殴った回数である。


 (これだけ殴れば十分 蓄積チャージされた筈ですが)


 ――ボクの右手には黒いグローブがはめられていた。


 (魔導具――〝爆拳ハンドボム〟)


 ……その効果は?


 「……?」


 ( BOM♪ )



 ――爆ッッッッッッッッッ……! 〝ピエロ〟の顔が爆発した。



 ……殴った回数分、威力を上乗せして爆発させる。


 〝ピエロ〟は顔面から煙を上げながら地面に倒れる。


 「……およ? 呼吸戻ってますねぇ」


 〝ピエロ〟の集中力が切れたのか、ボクは呼吸できるようになっていた。


 ――ジャリッ……。


 「……………………ありゃりゃ、まだ生きてたんですかぁ」


 〝ピエロ〟は顔を煤で汚しながらも平然と立ち上がる。


 「オイラは最新鋭の技術で肉体改造を施した半サイボーグなんだぁ」


 そして、顔の煤を手で払い、平常運転な軽薄な笑みを浮かべた。


 「俺っちの強度は〝Σ〟以上! だから、あんたの攻撃は全部効かないんだよーん♪」


 「へえ、それはいいですねぇ♪」


 ボクは〝異次元ビックリ胃袋ジッパー〟から、薙刀の形をした魔導具を取り出す。


 「楽しい時間は長い方がいいですからぁ♪」


 「イカれてるねぇ、お前さん」


 〝ピエロ〟は「ところで」と言葉を続ける。


 「バロウくんはどんだけ魔導具持ってるんだい?」


 次から次へと繰り出させれる魔導具に、〝ピエロ〟は純粋な疑問をぶつける。


 「そうですねぇ――……」


 ……ボクの趣味は魔導具造りであった。



 「 大体、80個ぐらいはありますよ 」



 「……やっぱりイカれてるぜ、あんた」


 ボクの回答に〝ピエロ〟は少しだけ引いていた。


 「魔導具ってのは国によっては製造を法で禁止されてるっていうのに、あんたは80個も持っていると」

 「はい、全部手作り♪ メイド・イン・バロウですよ~♪」


 そう、ボクの魔導具は全て自前の工房で製造したものである。


 「魔導具の製造は普通の武器とは違うんだぜ、何せ魔導具を一つ造るのには人一人分の命がいるんだからよ」

 「何を言っているんですか? 死体はもう人間じゃないんですよ」


 ……魔導具の製造方は普通の武器の製造とは違っていた。



 ☆バロウのワクワク魔導具づくり☆


 まず始めに〝奇跡スキル〟が発現した人間の死体を一つ準備しま~す♪


 その死体を人体を溶かす特殊な液体で液体に変えちゃいます♪


 更にその液体をろ過と煮沸によって水分を飛ばして、残った固形物を天日干しで完全に水分を飛ばしちゃいます♪


 ここまで来たらあと少し♪ 水分のなくなった固形物を粉末機を使って、粉末状にしちゃいます♪


 最後は高温で融かした鉄に粉末を混ぜ、型に流して打ち直したらかんせーい♪


 魔導具の性能は元となった人間の〝奇跡スキル〟がそのまま反映されるので、皆も自分だけのオリジナル魔導具を造っちゃいましょ~♪



 「さぁて、無駄話は要らないんでもっと遊びましょうか♪」


 「……」


 ボクは戦いの続きを催促したが、〝ピエロ〟はすぐには乗ってこなかった。


 「やぁーめた、あんたを倒すのは俺っちでも手こずりそうッスからね~♪」


 「えぇ~、やりましょうよ~。それに素直に逃がす訳ないじゃないですか」


 ボクは薙刀を構え、地面を強く踏み締める。



 「 だーめ♡ 」



 ――しかし、身体は前へは進めなかった。


 「……あり?」


 「残念無念また来年♪ 〝ボクに近づくこと〟を禁止しちゃったので近づけませーん♪」


 ……なるほど、ならばこれ以上の戦いは無駄であった。


 「……戦いは終わりってことですか」


 「そゆこと~♪」


 ボクは諦めて薙刀を〝異次元ビックリ胃袋ジッパー〟に収納する。


 「さいなら、バロウちゃん♪」


 そう言って〝ピエロ〟はホップ・ステップ・ジャンピングで何処かへ行ってしまった。


 「ちぇー、折角面白くなってきましたのに……」


 ボクは〝ピエロ〟のことを諦めて、クロウディア隊長の死体の場所まで移動する。


 「お待たせしました、クロウディア隊長♪」

 「……」


 ボクが満面の笑みで話し掛けるもクロウディア隊長からの返事はなかった。

 当然だ。クロウディア隊長は〝ピエロ〟に殺され、死んだのだ。


 ――死んだ人間は返事をしない。


 ……基本的には。


 「隊長にはスラムで拾ってもらったり、王宮の使用人に推薦してもらったり、沢山お世話になりました♪」


 クロウディア隊長には恩義があった。だから、長年隊長の下に居座り続けてい。


 「もうお喋り出来ないのは淋しいですが、大丈夫です♪」


 ボクはクロウディア隊長の胴体を背負い、生首は腋に抱える。




 「 これからはずぅーと一緒ですからねぇ♪ 」




 さて、


 次はどんな魔導具を造ろうか……。



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