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 第224話 『 五人目の特記戦力 』



 ――1F、正面玄関。


 「……クソがっ!」


 ……俺は降り注ぐ銃弾の嵐を地面を転がりながら回避し、大きな瓦礫の影に身を潜める。


 「……はあ……はあ、硬すぎんだよ、クソがっ」


 何度蹴ってもビクともしない鋼鉄の戦士に俺は悪態を吐く。


 「しかも、ファルスの野郎、いつの間にかどっかに行きやがって」


 〝Σ〟と戦っていた俺とファルスであったが、戦いの最中に姿を消していたのだ。

 お陰で一人で〝Σ〟と戦うことになったのだが、俺の蹴りは鋼鉄の鎧には通用していなかった。


 (いや、ただの鋼鉄なら俺の蹴りで蹴破られない筈がねェ……つまり)


 ――鋼鉄以上の硬度、ということであろう。


 (……だが、何かしらの弱点はある筈だ)


 それを見つけなければ俺は死



 ――斬ッッッッッッ……。俺の真上を巨大な刃が振り抜けた。



 「――あっ、ぶねェなっ……!」


 巨大な岩が崩れ落ち、土煙が舞い上がる。


 「 〝臨界突破リミットブレイク〟 」


 ――100パーセント。


 俺は土煙に紛れながら〝Σ〟へ向かって駆け出した。


 (がむしゃらに蹴っても意味がねェ! まずは攻撃が通る場所を探し出せ……!)


 全身超合金で覆われている〝Σ〟にも、金属で覆えない場所があった。


 (――見つけた……!)


 俺はサングラス越しにある一点を見つめる。


 (唯一金属で覆うと機能しなくなる場所、それは――……)



 ――目。



 ……そう、〝Σ〟の目に位置するそれは強化ガラスのようなもので造られていた。


 (あそこを破壊すれば奴の〝視力〟を奪えるってか……!)


 そうとわかれば即行動、俺は土煙の影に紛れながら〝Σ〟との間合いを制圧する。

 〝Σ〟はこちらに気づき、両腕に取り付けられたガトリング砲を乱射する。


 「 跳躍回避フェアリーステップ 」


 しかし、俺は軽やかなステップで弾丸の雨を回避し、更に〝Σ〟との距離を縮める。

 一方、〝Σ〟は巨大な刃を抜き、俺目掛けて振り下ろす。


 「当たったら真っ二つどころか骨も残らねェな」


 象すらも両断する巨大な刃は大理石の床を一刀両断しては激しく瓦解させた。

 その衝撃は王宮を揺らし、正面玄関に土煙と礫を撒き散らす。


 「――まっ」



 ――トンッ……。刃をかわした俺は〝Σ〟の顔面近くまで跳躍した。



 「 当たったらの話だがな 」


 『――』



     パラ・     シュート



 ――蹴ッッッッッッッッッ……! 俺の渾身のハイキックが〝Σ〟の目に叩き込まれた。


 強化ガラスは堪らず砕け散り、バランスを崩したのか〝Σ〟はその場で尻餅をついた。

 〝Σ〟が尻餅をつくだけで、床は崩れ落ち、王宮中が揺れる。


 「これで視覚は奪った……後は中にいる操縦士をどう引き摺り出すかだが」


 〝Σ〟は立ち上がるも首を振り、俺を探す。

 しかし、視覚を失っているのか目の前にいる俺にすら気づけていなかった。


 (だが、俺もコイツの装甲を突破する手段がねェ……クソ、折角動きを封じたっていうのにここまでか)


 何とかして倒したかったが、見えなければ〝Σ〟も下手には動けない、不本意ではあるがこの勝負は引き分けであっ




 ――荘厳な玄関を突き破り、〝Σ〟が飛び込んできた。




 ……しかも、二機も。


 「……クッソ、ふざけんなよ」


 一機だけでも苦労したというのに二機も増援に来るとは……最早、殺意すら抱いた。


 『……』


 二機の〝Σ〟は赤く光る眼光をこちらへ向け、片方は巨大な剣を、もう片方はガトリング砲を構えて臨戦態勢に入る。


 「いいぜ、お前ら……コイツと同じようにぶっ壊してやるよっ」


 俺は飛び出そうと地面を強く踏ん



 「――我流剣術、壱の型」



     てん     つい



 ――斬ッッッッッッッッッ……! 大剣を構えていた〝Σ〟が縦一閃に一刀両断された。



 「――なっ!?」


 「弐の型――……」



     らい     こう



 〝何か〟が正面玄関を縦横無尽に駆け抜けるがあまりの速さに目で追うことが出来なかった。

 そして、次の瞬間――……。



 ――ガトリング砲を構えていた〝Σ〟が五体バラバラに切り刻まれた。



 〝Σ〟は崩れ落ち、乱入者が俺の前に着地する。


 「助太刀に参りました! グラスホッパー隊長!」


 「クリスッ……!」


 そう、乱入しては瞬く間に二機の〝Σ〟を破壊したのは、ペルセウス王国近衛騎士団団長――クリス=ロイスであった。


 「お怪我はありませんか?」

 「ああ、怪我はねェが……」


 俺は改めてスクラップとなった二機の〝Σ〟に目線を落とす。


 「……よくこんな堅物をぶった斬れたな」


 俺の全力の蹴りでもひび一つ入れられなかった超合金の装甲を、クリスは意図も容易く切り刻んだのだ。


 「これが魔力と〝氣〟を混ぜた一撃ってか?」

 「そうですね、以前までの私では奴等を斬ることは出来なかったと思います」


 今のクリスは世界で唯一、魔力と〝氣〟を同時に操り、混ぜ合わせることが出来る人間であった。

 その一撃は今や〝王下十二臣〟でも最強の矛と為り得る無双の一閃であろう。


 (……クソ、俺はまた置いていかれてるのかよっ)


 俺は心中に劣等感を渦巻かせるも、今は強敵を退けたことを安堵する。


 「グラスホッパー隊長は次はどちらへ?」


 「俺は国王一行に合流しようと思


 そこで俺は思わず言葉を切った。



 『 掴まえたぞッ! 化け物めがッ……! 』



 ――掴ッッッ……! 視覚を失った〝Σ〟がクリスの体を巨大な手で捕らえた。


 「――クリスッッッ……!」

 『よくも仲間をやってくれたなッ!』


 しまった! 奴は俺達の会話から位置を補足して、クリスを掴まえたのか!


 『このまま握り潰してやるよッ!』


 「――少しだけ遅かったな」


 『…………はあっ?』


 しかし、クリスは怯えも命乞いもしなかった。


 「気づかなかった……お前は既に死んでいるぞ、ウスノロめが」


 我流剣術、参の型――……。


 『何を

    言

     って――あれ?』




   かみ        




 ――斜め一閃、〝Σ〟は操縦士ごと一刀両断されていた。


 (……見えなかった)


 それ程までにクリスの剣ははやかった。


 (確信を持って言えるぜ、クソったれ)


 〝Σ〟は崩れ落ち、クリスはそれを一瞥してこちらへ歩み寄る。



 ――クリス=ロイスこそがペルセウス王国、五人目の〝特記戦力〟だ。



 「 急ぎましょうか、ペルシャ様の下へ 」


 彼女クリスは歩む。

 凡人おれは見上げる。



 怪物の舞台ステージを……。


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