第22話 『 骨も残らねェと思え 』
「助けに来たぜ、姫っ……!」
「甲平っ……!」
……火賀愛紀を食い殺そうとしたハエトリソウが床の上を転がった。
「どうやら間に合ったようですね、貴女の騎士様は♪」
僕は伊墨甲平に抱きかかえられる火賀愛紀に笑いかけた。
「俺は騎士じゃねェ、忍者だ」
「どっちでもいいんだよ、バァーカ」
俺と伊墨甲平の視線と殺意が交差した。
「……なるほど、セシルさんの推測は一つ間違っていたんだな」
伊墨甲平が僕の顔を一瞥して呟いた。
「血の予告文にはこう書いてあった……」
羊が67匹 狼5匹
見えない狼 狙っているよ
可愛い可愛いお姫様
隠れてないで出ておいで
早くしないと さあ大変
真っ赤なお花が咲いちゃうよ
見えない弓矢が飛び出すぞ
赤い舌で呑み込むぞ
羊のお墓が66個立つ前に
お家の外へ出ておいで
「……とな」
……それは俺が書いた血文字であった。
「セシルさんは、既に死んでいたメイリン=カーネーションを除いて67匹は俺達〝羊〟の数を示していると推測していたがそれは間違っていたんだ」
〝羊〟が67匹
〝狼〟が5匹
〝墓〟が66個
……伊墨甲平は真実にたどり着いているようである。
「……〝羊〟はメイリン=カーネーションを含めて67匹しかいなかった。セシルさんが68匹目だと勘違いしていたのはアリシア=レッドアイ、お前だったんだ……!」
どうやらこの男、強ち馬鹿ではないようであった。
そう、67匹の〝羊〟は僕を除いた王宮の住人の数。
5匹の〝狼〟は俺を入れた刺客の数。
66個の〝墓〟は僕とペルシャ=ペルセウスを除いた王宮の住人の数であったのだ。
「……くはっ、お前いい勘してるよ! だが、俺もラッキーだ!」
僕は無数の殺人植物を召喚した。
「てめェを殺せば、〝羊〟の皆殺しがいっきに捗るぜ!」
「……」
しかし、伊墨甲平は臨戦体勢の僕に背中を向け、抱きかかえていた火賀愛紀を降ろしていた。
「……姫、泣かせてごめんな。それに腕、痣ができちまってる」
伊墨甲平は火賀愛紀から俺の方を向いた。
「……てめェか、姫を泣かせたのは?」
「そうですが、それが何か?」
俺は挑発するように微笑した。
「……………………そうか、お前か」
……空気が変わった。
……重く、微かに震えていた。
「主を傷つけられて激怒とは、見上げた忠誠心ですね」
「……」
「だが! そんなのは関係ねェんだよ! てめェはここで死
「……もう喋らなくていいぞ、アリシア=レッドアイ」
殺意が空気を伝播する。
「お前は俺の大切な者を傷つけた」
奴の凶気が俺の心臓に矛先を向ける。
「 容赦はしない――骨も残らねェと思え……! 」
……伊墨甲平は激怒していた。




