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 第210話 『 来る! ペルシャの誕生日!? 』



 「おっ帰りぃ~~~~~~っ!」


 ……王宮に帰ってきた俺とファルスを一番に迎えてくれたのはペルシャであった。


 「おう、二週間振りだな」

 「うん! 二週間振りだね、甲平くん!」


 二週間振りに再会したペルシャは依然と変わらず元気一杯であった。


 「おや、帰ってきたのですね」


 偶然通り掛かった姫も俺の姿を見てクールに出迎えてくれた。


 「ここ二週間、静かで良かったのですが」 

 「悪いな、騒がしくて」


 もう少し可愛いげのあるリアクションを期待していたが、現実はそうは行かなかった。


 「あっれぇ~? 昨日まであんなに寂しそうにしてたのに~、やっと会えたんだからもっと嬉しそうにしたらいいのに~」


 「なっ!!?」


 ペルシャの一言で姫は顔を真っ赤にして、目を見開いた。


 「もうっ、ペルシャさんったらテキトーなことを言わないでくださいっ!」


 「えぇー、ほんとのことなのにぃ~」


 「ほう、これはいい話を聞いたぜ」


 ペルシャの話を聞いた俺はフッフッフッと不敵に笑った。


 「甲平っ! ちなうのです! これはちなうんです!?」


 「いやいや、そんなに照れることないだろ……ほら、抱き締めてやるよ」


 俺は姫を抱き締めるべく、ふんどしとブラジャーだけになって両手を開いて姫が来るのを待った。


 「だから、違うって……いや、それより何で脱いでるんですか!?」


 「……? そりゃあ、姫を抱き締める為に決まってるだろ」


 「因果関係が意味不明です!?」


 ……因果関係とか難しいこと、甲平よくわかんない。


 「……何だか、ファルスくんに似てきてるね」

 「ふふっ」


 ペルシャの呟きにファルスが後方で腕を組み微笑する。


 「仕方ない、ハグはもういいか……じゃあ、他の奴等はどこにいるんだ?」


 折角、久し振りに王宮に帰ったのだ、顔見知りの者に挨拶がしたかった。


 「えーと、たしか……マルコビッチさんはお風呂掃除で、ロードさんはトイレ掃除で、ワキガのピエールさんは三回目のシャワーを浴びてるかな?」


 「いや、どうでもいいよ! そんなモブの所在は!?」


 残念ながらペルシャに人の言葉の意図を汲むことは難しいようであった。


 「クリスさんなら修練場で部下に剣術指南を、キャンディさんならミーヤ様の護衛を、ロキさんは中庭で仕事をサボって、ラビさんはキャンディさんの部屋にいますよ」


 「おお、親切にありがとな」


 姫が知りたかったことを懇切丁寧に教えてくれた……少し気になる情報もあったが。


 「うーむ、皆忙しそうなんだな」

 「何だかんだいって、セシルさんの抜けた穴は大きいんだよねぇ」


 才色兼備のスーパーメイドさんであるセシルさんは、この王宮で欠け代えのない存在であった。


 「セシルさんがいないと執事さん達の仕事の能率が三割ぐらい落ちてるんだよ。それに加えて、ロキくんはサボるし、ラビくんは煙草休憩ですぐいなくなるし、ファルスくんは何かいないし」


 「それは普通に仕事させろ」


 この王宮でのセシルさんの存在感ヤバすぎだろ……てか、ファルス、お前は余裕そうに後方で腕組んでないで働けよ。


 「ちなみに、今日の甲平くんの仕事は庭の草むしりだよ♪」


 「いやー、旅疲れキテるわー、メチャクチャ旅疲れてるわー」


 ……うん、偉そうに言ってたけど俺も働かない派だったわ。


 「まあ、甲平くんには最初から期待してないから大丈夫だよ♪ ゆっくり、その辺でお昼寝でもしててね♪」


 「……」


 言い方ッ!!? まっ、お言葉に甘えて働かないんだけどね! おやすみ!


 それから、ペルシャもピアノのお稽古があるとかで、すぐに何処かへ行ってしまった。


 「……甲平、少しいいですか」


 残された俺も荷物を片付けようと自室へ戻ろうとしたが、姫に呼び止められた。


 「ああ、何かあったのか?」

 「いえ、別に困っているとかそういうことではないのですが、情報を共有した方がいいと思いまして」


 トラブルとかではないようなので俺も安心して姫の話を聞く。


 「単刀直入に言いますが、三日後の夜にペルシャさんの誕生日パーティーが行われます」


 「……誕生日、パーティー?」


 それはめでたいことである。


 「で、俺は何をすればいいんだ?」


 「余興です」


 「……はっ?」


 余興って、あの組織の下っ派が上司を楽しませる為に酒を呑む時間も飯を食う時間も削って、事前にネタ作りや準備やらで頭を悩ませ、最悪盛大に滑り倒しては普段から面白いこと何も出来ない先輩に「面白くねぇー!」とか笑われたり、ネタに困って脱衣系に走ったら写真を撮られ、職場内で回されネタにされる、金を払ってトラウマとストレスを作る最低最悪な行事か?


 「怨念強すぎィ!? しかも、甲平のじゃなくて作者の奴ですよね、それ!」


 ……宴会での余興、滅ぶべし。


 「別に構わないぜ、余興なら得意だしな」

 「あー、確かにそういうの得意そうですね」


 芸の多さと歌とギターだけが取り柄の俺からすれば、余興なんて朝飯前であった。


 「余興の方は大丈夫そうですね……では、これからお時間を戴けますか?」

 「ああ、何かするのか?」

 「……」


 俺の質問返しに姫は一度深呼吸を挟んで、そして口を開く。


 「いっ、いいいっ、一緒にペルシャさんのお誕生日プレゼントを買いに行きませんかっ……!」


 「オーケー、つまりデートってことだろ」


 「話が早すぎる!? でも、まあそれでいいです! すぐに行きましょうか!」



 ……そんな訳で、俺と姫はペルシャの誕生日プレゼントを買うべく、王都でお買い物デートをすることになった。


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